おわび
生徒会室を出る前にもう一度頭を下げる。
「失礼しました。」
そっとドアを閉めて教室へ向かう。すっかり遅くなって、外はもう暗くなり始めている。早く帰っておフロ入って寝よう。
図書室での事を思い出すと、すごくはずかしくなる。
「思ってる事我慢しないで言ってほしい」か・・。本当に何を言ってるんだろう。友達っていってもあんなはずかしいこと言わないよ。変なヤツって思われただろうな。明日だって顔合わせるのに、何で自分から気まずい状況を作っちゃうんだろう。
ため息をつきながら教室の前まで来ると、まだ電気が点いていた。誰かまだ残ってたんだ・・・。
開けると、間仲が窓際に座って外を見ていた。
なんでいるんだよ・・。
とりあえず自分のカバンを取りに入ると、気配に気づいたのかこっちを見てきた。ぼーっとした目だった。
「・・終わったんだ。」
カバンを抱えて立ち上がった。
「うん。」
あくびをしながらこっちに来た。寝てたのかな?
早く出ようと思って慌てながらペンケースを閉まってたら、消しゴムが落ちた。コロコロ転がって、間仲の足元で止まる。
「はい。」
拾ってくれた。ただそれだけなのに、ドキッとしてしまう。
「ありがとう。・・じゃあまた明日!」
カバンにつっこんでドアを見る。
「あのさ!」
私達しかいない教室で、間仲の声がいつもより大きく聞こえる。
何だろう。あいつの顔を見るのちょっと怖い。でも向かないの失礼だよね。おそるおそる見る。
「あの、正直なこと言うと、やっぱりちょっとショックだった。」
花火のこと言ってるんだろうか。頭の中で言われた言葉がグルグルと回っている。
「断ったことを謝られるのはかっこ悪いからやめてほしい。」
たしかに言われてみればそう思う。
はぁ。とため息をついて、こっちを見てくる。
「という訳で俺は傷ついてます。さぁどうする?」
えっ・・?どうするって言われても・・どうしよう?私が悪いのかもしれないけれど、きゅうにそんな事を言われても何をすればいいんだろう?あやまる?いや、今やめてほしいって言われたし、どうしよう・・・。
変な汗がダラダラ出てきた。頭の中がグルグルして、目が回ってきたような気分になった。
「何かおわびします・・。」
それしか思いつかなかった。
おわびと言っても何をやればいいのか全然わからないけれど、色々迷惑かけてるから、もしかしたら借りが返せるかもしれない。
「わかった。じゃぁデートして。」
そっか。おわびのデートね。うんうん分かりました。・・・・ってなんだって!?今なんて言った!?聞き間違い?
「あの、今なんて言った?」
おそるおそる聞きかえす。間違いであってほしい。
「あ、デート?おわびしてくれるならデートがいいかなーって。」
いいかなーって・・・なにそれ!?私が言ったことって、そういうのもアリなの?たしかに「何かおわびします」とは言ったけど、そういうつもりではなかったんだけど・・。
「それじゃぁ今日はもう遅いから、帰りながらどうするか決めようか?」
スタスタとドアに向かって歩き出す間仲。
帰りながら決めるって、まさか一緒に帰るって事?ウソでしょ!?
「なにしてるの?早くしなよ。」
電気を消しながら急かしてくる。
ちょっと待ってよ・・。
話しについていけない。どうしよう。とりあえず本当に外が暗くなってきたから、この際帰りは一緒でもいいとして・・。
「早くしないと校門閉まっちゃうよ?」
間仲の声が廊下に響く。
だから、ちょっと待ってよ・・。
バタバタと後を追いかける。
胸の奥がザワザワしてきた。