図書室で
せっかくキレイに飾りつけした教室も、苦手だけど頑張って縫いつけた布とレースも、かわいく色ぬってくれた看板も、祭りが終われば片付けなきゃいけない。
自分達が作った物を自分達で壊したりするのって、なんとなくこころ苦しい。せっかく皆でやったのにって思う。
薫とゴミ捨てしながら、文化祭の話しで盛りあがる。奈緒美と2人でまわってる時に色々食べさせられて大変だったみたい。だけど楽しそうにしゃべってるから、結果良かったって事なんだろうな。
焼却炉でゴミをつめこんでいると、
「あー!やっといた実行委員!!生徒会が今日中に報告書だせって言ってたぞ。」
担任が何枚か紙を渡してきた。
なになに・・いくら使ったか、何買ったか・・・。これ今日中って・・まぁレシートとか保管してあるからできるけど、今からやると完全に放課後じゃん。担任のヤツめ。
「大変だねー。実行委員様は。教室はあたし等でなんとかなるから、あんたソレやっちゃいなよ。」
すたすた行ってしまった。
教室は片付け中だし、図書室にでも行くか・・・。
ガラリとドアを開けると、本のニオイに包まれる。静かだ。図書の先生も誰もいないから、エアコンとペンの音がいつもより大きく聞こえる。しばらく書いているとガラリと誰かが入ってきた。ちらっと見ると間仲だった。
うわっ・・。
たぶん私の表情ヤバイと思う。だって気まずいんだもん。花火に誘われたのに断ってるし、何か変なこと言われたらイヤじゃん。それに私から言ったんじゃなくて、心が言ったからよけい気まずい。
あやまる?でも心たちと見るって決まってたし、あいつは「よかったら」って言ってたし、別にあやまるような事でもないか?
もんもんとしてる間にも足音はどんどん近づいてくる。おねがい。私に気づかないで!
「やーっと見つけた。」
願い届かず。
ポケットから何枚かレシートを出して机に置く。もしかして、これって文化祭で買った物の?
「渡すの忘れててさ。報告書だすの今日中って聞いたから。これ必要でしょ?」
そうだったんだ。わざわざ届けに来てくれたんだ。なんだ。そういう事か・・「やっと見つけた」って、そんなに探してたんだ。
見ると少し汗ばんでるようで、シャツのボタンが多めにはずしてある。走りまわってたのかな。
「ありがとう。助かる。」
笑顔をかえす。ぎこちないかも。
用事は済んだはずなのに、間仲はイスに座り始めた。書いている用紙をずっと見ている。なんだろう?手に力が入って震えちゃう。やっぱり花火の事ちょっと怒ってんのかな。
「ごめん。」
小さな声でしか言えなかった。でも、私達しかいない部屋だと大きく聞こえたかもしれない。はずかしい。
「なんであやまるのさ。」
私を見てきた。少し笑ってるけど、ちょっとだけ寂しそうに思えた。怒ってないけど、やっぱり気にしてるって事かな。
「花火誘ってもらったのに、行けなくて。」
目をそらす。なんか見てられなかった。罪悪感というか、胸が痛くなってきそうだったから。
「別にあやまる事ないのに。だって斉藤さんたちと行くって決まってたんでしょ?」
ひじをついて、私の手元を見てきた。力がはいって体が熱くなる。最近、間仲に見られたり触れられたりするとこうなる。
「でもごめん。私がもし誘って断られたら、やっぱりちょっとイヤだと思うから。」
だから間仲もイヤだったんじゃないかな?胸がズキズキしてきた。
「許さない。」
・・・・え?
間仲を見る。
「なんつって。そう言ったらどうする?って話。まぁ俺は優しいから言わないけど。」
ニヤッと笑って立ち上がる。ドアに向かって歩き始めた。
なんでそう思ったのか分からないけど、間仲は無理して笑ったんじゃないかなって思った。大丈夫なフリしてるだけで、全然大丈夫じゃないのかもしれない。それで、私は間仲のそういうところに甘えてるんだと思う。
手にギュッと力がはいる。
「間仲!!」
自分でもよくこんな大きな声でたなって思う。立ち上がって呼びとめる。間仲も目を大きくして、こっちを見てきた。
「やっぱりごめん。本当にごめん。許さないっていうの本当にそうだと思う。優しくしてくれるから甘えてるんだと思う。だから・・その・・言ってほしい。思ってること我慢しないで言ってほしい。・・・友達だし。」
少し後悔した。何はずかしい事を言っちゃってんだろう。本当に間仲が我慢してるんだったらいいとして、違かったらただのはずかしい勘違いじゃん。・・どうしよう。バカだ私。
「・・・うん。」
間仲は出て行った。
さっきまでのやり取りがなかったみたいに、部屋は静かになった。
「うん」って、やっぱり我慢してたって事?本当はイヤだったって事?許さないって事?考えるほど分からなくなってきた。ため息がでる。
机の上の用紙に目をやる。今日中に終わればいいなぁ・・・。