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高校生
「お姉ちゃん、心ちゃん待ってるよ。」ドアの向こうで蒼佳(あおか)がせかしてくる。時計に目をやると確かに待ち合わせの時間どうりだ。もう一度鏡の前で全身をチェックし、深呼吸して「大丈夫」とつぶやく。
玄関のドアを開けると、幼なじみの斉藤心(さいとうしん)が鏡を見て髪を整えていた。私を見て慌ててカバンにしまう。
「おはよう葵。」
ニコッと笑う。まるで地上に舞い降りた女神のようだ。私と同じ制服でも心が着ると、心のために作られたかのようにぴったりとにあっている。
腰までのばした栗色の髪。ぱっちりした目。白い肌。シュッとした体のライン。少女漫画のヒロインになれそうだ。夢見心地になってしまう。
「はやく行こう。入学式で遅刻はいやだよ?」
私の女神に手をぐいっと引っぱられてもまだ、夢からさめる事ができない。こんな朝がまた3年つづけられる。「幸せだなぁ。」小さな声で、思わずつぶやいてしまった。