気になってしまう
高い場所の飾りつけをしてるのは間仲で、そのまわりにいるのは、あいつに気があるのがバレバレな女の子達。私は薫と奈緒美とで、テーブルクロスにする布の端にレースをつけている。心はトイレに行ってしまった。
間仲を囲んでいる子達の声がうるさくて、気が散ってイライラする。
「最近あいつ人気だよなー。間仲。文化祭の準備の期間で、告られてるのすごい見た。」
奈緒美は飽きちゃってるのか、窓の外を見始めてしまった。
私も見た。となりのクラスの子とか、けっこうカワイイ子達から告白されてるらしいけど、断り続けてるみたい。ウワサだと「好きな人がいるから」だって。それを聞いたとき、なぜかドキッとしてしまった。
「ぜいたくだよなー。告ってきた子全員フッってんだもん。あいつの好きなやつって、相当いい女なんだろうなー。ねぇ、薫もそう思わない?」
今度は薫に付きまといはじめた。
「うるさい。あんたがサボってる分、あたしと葵でやってんだからジャマしないで。そんな気になるんなら、本人に聞けば?」
2人のこんなやり取りも慣れた。ケンカしてるみたいに見えるけど、本人達はこれがちょうどいいらしい。はいはいすいません。とか言いながら作業に戻る奈緒美。またどうせ、すぐ飽きちゃうんだろうな。
気になるんなら、本人に聞けば?
薫の言った言葉が気になって、頭の中をグルグルしている。さっきも指に針を刺しちゃったし、最近いつもの自分じゃないって思う。でもそれが、なんのセイなのかが分からない。今までだったら、こんなに男の子を気にしたりしなかった。
「葵、大丈夫?なんか・・こころ、ここにあらずって感じだけど。」
ハッと我にかえる。心と薫と奈緒美の4人で帰ってる途中だった。薫と奈緒美は前を歩いていて、文化祭の夜がナントカって話をしてる。
心のとなり。心のニオイが意識しなくても私に届くぐらい近くにいる。
「ごめん。なんか今日忙しかったから、ちょっと疲れたのかも。」
心のとなりにいたのに、私は今、間仲の事を考えてしまっていた?心の表情が一瞬さみしそうになった。
「明日だもんね。文化祭。」
そう、明日が本番なんだ。間仲の事を考えてる余裕なんかない。私は実行委員なんだし、成功させなきゃいけない。
「そうだ。2人共、文化祭の夜のことで、いいこと教えてあげる。」
薫がふり向いて手招きをしてきた。薫の笑顔がなんか怪しい。
「いいことだってさ。行こう。葵。」
手をぐいっとつかまれた。いいことか・・。心が楽しいならいいか。薫の話をワクワクした目で聞いてる心を見たら、そう思ってしまった。
明日の文化祭も楽しくなればいいな。