祭りのあと
体が熱い。すごっく熱い。それに揺れてる。浴衣だし、苦しいし、頭痛いしメチャメチャだ。
なんかきゅうに情けなく悲しくなってきた。私、なんか色々やんなきゃいけない事から逃げてる気がする。心の事とか、間仲の事とか。
心の事、好きだけど・・こんなの絶対むくわれないし、蒼佳にだって軽蔑されるだろうし、ましてや本人になんて言えるわけない。言ったら終わりだ。今まで築きあげてきた信頼も何もかも、崩れてしまうに決まってる。
間仲に自分から友達になってほしいとか言っときながら、それっきり変に意識してしゃべれないし、それどころか目も合わせらんない状況だし、でも他の子達と仲良くしだしてるてるの気になるし、すごく冷たい人間だって思われるだろうし、私はそんなつもりじゃないのに・・。
なんかもうメチャクチャだ。ちゃんと全部、私の気持ち言えたらいいのに。
心に好きだよって、間仲にごめんねって素直に言えたらいいのに、私は・・私は・・・。
遠くから「大丈夫だよ」って聞こえたような気がした。大丈夫、ちゃんと伝わるよ。怖がらずに、こころを込めて言えば、ちゃんと伝わるから、大丈夫。そう言われた気がした。
誰だろう?すごくやさしい温かい声で、安心する。さっきまですごく不安で情けなくて悲しかったのに、体がフワリとやわらかい物に包まれた気分になった。神様かな?なんてね。今はこのフワフワに身をまかせて眠ってしまおう。
どのくらい時間が経ったんだろう?目を開けると自分の部屋のベットにパジャマでいた。部屋が暗いし、今何時なんだろう。よろよろと起き上がって時計を見ると10時半を指していた。いつの10時半だ?外は暗い。夜か・・・。
ええっと確かお祭りに行って急に頭が痛くなって、えーっと・・それで・・・・ダメだ。よう分からん。
リビングから人の声がする。蒼佳かな?
そっと入ってみると、蒼佳と心が出店で買った物を食べていた。ぱっと、心と目が合った。びっくりした目をしている。
「葵!?大丈夫なの?寝てなくて!?」
とっさに買ったものを隠してるけど、大量にありすぎて隠しきれていない。
「う、うん。大丈夫だけど、私どうしちゃったの?全然分かんないんだけど。」
「お姉ちゃん、急に熱だして倒れたんだってさ。同クラの間仲っていう人から心ちゃんに連絡はいって、家まで運んでくれたの。ね?心ちゃん。」
「うん・・」とゴニョゴニョしている。マナカ、マ仲、間仲が!?運んだって、そんな!?なんで!?
「間仲くんが、葵のこと助けてくれたの。私は何もできなかったけど、すごく頼もしかったし助かった。」
間仲だったんだ。あの力強い腕は。「大丈夫?」って言ってきてくれたのも。
また体が熱くなってきた。熱まだ残ってるのかも。
「お姉ちゃん、まだ休んだほうがいいよ。心ちゃんは遅いから今日はウチに泊まって。」
蒼佳に促されて部屋に戻ると、へなへなとドアにもたれかかる。間仲・・なんで助けてくれたんだろう。きっと偶然だよね?同クラで通りかかっただけだよね?
ぎゅっと肩を抱く。力強いけど、優しかった間仲の腕。胸の奥がぎゅっとなって痛い。きっと熱のせいだ。
窓の外を見ると、月明かりを強く感じる。今、間仲は何を感じているんだろう。