【初めてお読みになる方へ】この物語の楽しみ方
この作品の読み方について
~※隣にいるのは“主人公”ではなく、乙女ゲーム原作で破滅した方のヴェルシアナです~
初めまして。
この作品を見つけてくださり、ありがとうございます。
物語を始める前に、まずはこの作品の読み方について少しだけご案内させてください。
そして最初に、一つだけ大事なことを。
これから作者の説明に横から口を挟んでくるヴェルシアナは――
本編主人公のヴェルシアナではありません。
この物語の主人公は、現代日本で生きていた男性が転生したあとのヴェルシアナ。
一方、ここにいるのは――
乙女ゲーム『リュミエールの天秤』の原作で、悪役令嬢として破滅するはずだった“原作ヴェルシアナ・アルセリード”です。
「……随分と念入りに説明なさるのね」
ここを間違えると、かなりややこしいので。
「わたくしを、あちらの男入りヴェルシアナと一緒にされる方が困りますわ」
男入りって言い方やめません?
「事実でしょう?」
そうですけど。
「でしたら問題なくてよ。わたくしは原作のヴェルシアナ・アルセリード。あなた方の言う乙女ゲームで、嫉妬に狂い、婚約者へ執着し、最後には破滅させられる役を押しつけられていた方ですわ」
自己紹介が強い。
「“悪役令嬢”なのでしょう? それくらいで怯まないでくださる?」
ということで。
銀髪に赤紫の瞳。
美貌も家柄も魔力も持ちながら、原作では傲慢で苛烈、感情的で、周囲との関係を壊しながら破滅へ向かっていった――本来のヴェルシアナ本人にも、ときどき解説を手伝ってもらいます。
「“本来の”という言い方は気に入りましたわ」
そこなんだ。
「当然でしょう。あちらは、わたくしの身体で未来を書き換えているのでしょう?」
本人としては必死に破滅を避けているだけです。
「結果として書き換えているのではなくて?」
……話を進めましょう。
「逃げましたわね」
ネタバレ回避です。
◇
まず、この作品には「0章」と「1章」があります。
「0章?」
はい。
主人公が五歳でヴェルシアナとして目を覚まし、この世界で生き始めるところから描いた幼少期編が、0章です。
「つまり、わたくしの幼少期を随分長く掘り下げるところですわね」
言い方。
「違いますの?」
違わないです。
0章は、かなりゆっくり進みます。
「随分あっさり認めましたわね」
ここは正直に言った方がいいと思うので。
大きな事件が次々に起きるというよりも、主人公がこの世界で生活しながら、
自分が何者なのか。
ヴェルシアナ・アルセリードという立場がどんなものなのか。
周囲にはどんな人がいるのか。
そして、なぜ原作のヴェルシアナは“悪役令嬢”と呼ばれるような人間になっていったのか。
そうしたものを、一つずつ知っていく時間になっています。
「“性格の悪い令嬢だったから”だけでは終わらせないわけね」
そこはかなり大事です。
もちろん、原作ヴェルシアナがしたことを何でも正当化する話ではありません。
ただ、一人の人間がどんな環境で育ち、どんな言葉を受け取り、何を当然だと思うようになったのか。
主人公自身がそれを少しずつ知っていくことで、「悪役令嬢」という一言だけでは片づけられない部分も見えてきます。
「……まあ、その点については悪くありませんわ」
褒められた。
「褒めてはいません。ただ、わたくしの人生を雑に処理されるよりましだと言っているだけです」
これです。
こういう人です。
「何か?」
何でもありません。
◇
0章は、“ヴェルシアナを知るための物語”です。
転生した主人公が最初に考えたことは、とても単純でした。
死にたくない。
破滅したくない。
そのために、人を怒鳴らない。使用人を見下さない。感情任せに誰かを傷つけない。未来の危険に繋がりそうな行動を避ける。
最初は、それだけです。
「随分と消極的ですこと」
命がかかっているので。
「それはそうですわね」
けれど、この世界で暮らしていくうちに、それだけでは済まなくなっていきます。
家族と過ごし、使用人と話し、友人ができる。
以前のヴェルシアナから良い感情を持たれていなかった人たちとも、少しずつ関わっていく。
屋敷の外へ出れば、自分が「公爵令嬢」であることの重さを知る機会も増えていきます。
領地へ行けば、紙の上では分からなかった人々の暮らしが見える。
帳簿を開けば、ただの数字だと思っていたものの向こう側に、家や道や食事、誰かの日々の生活があることにも気づいていきます。
「つまり、派手な冒険より先に生活をした、と」
そういうことです。
「牛歩ですわね」
否定できない。
「そこで否定なさいな」
でも、その牛歩で積み上げたものが、あとからかなり効いてくるので。
「便利な言葉ですこと」
今回は本当にそうなんです。
◇
なので、0章はかなり好みが分かれると思います。
ファンタジー世界での日々をじっくり読みたい。
ヴェルシアナがこの世界を知っていく過程を追いたい。
家族や使用人との小さな関係の変化が好き。
主人公が今の考え方に至るまでを、最初から見届けたい。
そういう方には、ぜひ0章から読んでいただきたいです。
「では、全員0章から読めばよろしくて?」
そう言いたいところですが。
「ですが?」
Web小説ですし、読み方は自由です。
「……嫌な予感がしますわね」
もう少し早く物語が動いてほしい方。
山場や大きな変化を、早めに楽しみたい方。
まずは成長したヴェルシアナが、この世界で動いていくところから読みたい方。
そういう方は――
1章から読み始めていただいて大丈夫です。
「……本当に?」
本当に。
「0章を四十八話も書いて?」
そこを強調しないで。
「事実でしょう?」
事実ですけど。
◇
ただし、1章から読む方へ。
ここだけは、一つおすすめがあります。
9月21日に、0章をヴェルシアナ本人が振り返る間話を投稿します。
タイトルは、
『間話 生き残るために始めたこと』
です。
「総集編ですの?」
少し違います。
出来事を順番に並べただけの総集編ではなく、0章を経たヴェルシアナが、自分がどこから始まり、何を知り、どう変わってきたのかを振り返る一話です。
もちろん、0章四十八話すべての情報を一話に詰め込むことはできません。
細かな出来事や、人との関係が変わっていく過程はかなり省略されています。
それでも、
主人公がどこから始まったのか。
どんな考え方をしているのか。
なぜ今のヴェルシアナになっているのか。
1章へ進む前に知っておいてほしい部分は、その一話で分かるようにしています。
「つまり、1章から読む方は?」
9月21日以降であれば、まず『間話 生き残るために始めたこと』を読んでから、1章へ進んでいただくのがおすすめです。
「その一話を読めば、0章は読まなくてもよろしくて?」
1章を読むために必須ではありません。
「随分はっきり言いましたわね」
でも、気になったらぜひ0章も読んでください。
「そこは言うのね」
もちろん。
1章を読んで、
「この人とは以前に何があったんだろう」
「どうしてヴェルシアナは、こういう考え方をするんだろう」
「この関係になるまでに、どんな時間があったんだろう」
そんなことが気になった時に0章へ戻っていただくと、1章で何気なく見ていた言葉や関係が、少し違って見えると思います。
「先に現在を見てから、過程を知る読み方もできるというわけね」
そうです。
「でしたら、まあ悪くはありませんわね」
理解がある。
「“意外と”を付けたら怒りますわよ」
言ってません。
◇
逆に、0章から読む場合は。
かなりゆったりです。
「二度目の念押しですの?」
大事なので。
0章は、1章以降と比べると山場の盛り上がりもかなり控えめです。
主人公の幼少期や、ファンタジー世界での日常、家族や使用人との関係、少しずつ世界を知っていく過程を楽しむ部分が大きくなっています。
そのため、
「ファンタジー世界での生活をじっくり読みたい!」
という方には、とても合うと思います。
一方で、
「ヴェルシアナが令嬢として活躍するところを早く見たい!」
「もう少しテンポよく物語が動くところから読みたい!」
という方には、1章から先に読んでいただく方が合うかもしれません。
「作者が自分から飛ばしてよいと言っておりますわよ」
人には好みがありますから。
「四十八話を書いたあとで随分達観しましたのね」
そこは触れないでください。
ただ。
0章を読んでいただくことで、1章以降のヴェルシアナの言葉や選択、人との距離感に、より深みを感じていただけるとは思っています。
主人公が何を怖がっているのか。
どうしてそんな判断をするのか。
何を大切にするようになったのか。
それを知ったうえで先へ進むと、何気ない場面にも別の意味が見えてくることがあります。
「つまり、急ぐなら1章。深く知りたいなら0章から?」
かなり簡単に言えば、そうです。
「最初からそう言えばよろしいのでは?」
それだと原作ヴェルシアナの出番がなくなるので。
「……今、何と?」
何でもありません。
◇
9月21日から、1章の投稿を開始します。
同日に、
『間話 生き残るために始めたこと』
も投稿します。
ですので、9月21日以降に初めて読んでくださる方は、
じっくり読みたい方
0章
↓
『間話 生き残るために始めたこと』
↓
1章
でも。
まず1章へ進みたい方
『間話 生き残るために始めたこと』
↓
1章
でも大丈夫です。
「選べるわけね」
はい。
0章を読んだ方にとって『生き残るために始めたこと』は、主人公自身によるこれまでの振り返り。
1章から読む方にとっては、主人公を知るための入口になります。
「では、わたくしの四十八話が気になったら?」
ぜひ戻って読んでくださいませ。
「そこだけ随分上品ですわね」
公爵令嬢に影響されました。
「わたくしの功績ですわね」
そこは違う。
◇
最後に。
この作品は、主人公が悪役令嬢へ転生した瞬間から、すべてが劇的に変わる物語ではありません。
最初は本当に、小さなところから始まります。
一言の「ありがとう」。
誰かの話を聞くこと。
知らなかったことを知ること。
自分が間違っているかもしれないと考えること。
そうした小さな積み重ねが、少しずつ人との関係や主人公自身を変えていきます。
「随分地味ですこと」
そこから始まる話なので。
「ですが、あちらのヴェルシアナは破滅したくないのでしょう?」
ものすごく。
「でしたら、せいぜい足掻けばよろしくてよ」
応援してる?
「まさか」
即答。
「ただ、わたくしの身体を使っている以上、中途半端な結末だけは許しませんわ」
怖いな。
「当然でしょう?」
原作ヴェルシアナは、そう言って小さく顎を上げた。
「0章から読む方は、ゆっくり付き合えばよろしくてよ」
はい。
「1章から読む方は、先に振り返りの一話を読んでおきなさいな」
はい。
「それで気になったら?」
0章へ。
「結構」
ということで。
じっくり主人公と歩くなら0章から。
まず物語を進めたいなら『生き残るために始めたこと』を読んで1章から。
お好きな入口から、“もう一人のヴェルシアナ”の物語を楽しんでいただけましたら嬉しいです。




