そして俺は口を開いた
本作はリドルストーリーです!つまり結末は皆さんの想像にお任せします( ̄+ー ̄)ってやつです!
まあ私の作品の中に、こういう遊び心のある作品が1作品でもあっていいのではないかという思いがこもった作品です。
もちろんサボったわけじゃありませんので悪しからず!
一応、結末はご用意してますが、日の目を浴びることがあるかどうかは今のところ考えておりません(๑˃̵ᴗ˂̵)
俺の片想いはあと数分で終わる──
「ねえ、五代くん」
夕陽が差し込み、オレンジ色に染まる放課後の教室は、いつもと変わらない表情なのにどこか寂しさを感じる。
そんな教室の入り口で、同じクラスの女子である風峯日和がこちらに振り返り、にこりと笑った。
「もし私の告白が上手くいかなかったからどうする?」
「上手くいかないことなんてないと思うけど……」
小首を傾げる彼女に俺は取り繕った笑顔を浮かべ、仕方なく口を開いた。
「そのときは、下の自販機でジュースでも奢るよ」
「なにそれー」
こんな風に……こんな風にくつくつとえくぼを浮かばせながら笑う風峯さんが好きだ。
肩より少し下まで伸びて、毛先が内側にカールしたその艶やかな風峯さんの黒髪が好きだ。
丸くて大きくて、教室内に差し込む秋の夕陽で栗色に輝く風峯さんの瞳が好きだ。
そして何よりも、誰からも必要とされることがなかった俺を必要としてくれた風峯さんが好きだ。
「五代くん、ありがとね」
「なにが?」
「今まで真剣に話を聞いてくれて。私、すごく感謝してる」
「そんなに感謝されることじゃないよ。それに俺も風峯さんの恋を……応援したいって気持ちだったし」
正直な気持ちをそのまま口にしたはずなのに寂しさが湧き上がってしまい、乾いた微笑をこぼしながら俯くしかできなくなった。
「風峯さん」
「ん?」
「風峯さんの恋は……絶対成就するから」
今の言葉だって、正直な気持ちから出た言葉のはずなのに、風峯さんとの関係のピリオドのように思えた。
センチメンタルになりつつある中、視界の右端に腕時計が映り、追い討ちのようにあと五分で実際にピリオドが打たれることを知る。
思い返せば、高校一年の三月から始まった八か月ほどの片想いは期間的にも、体感的にも短かったけど、いろんな思い出が詰まった宝箱みたいな時間だった。
だからこそ、その時間をなかったことにはしたくない。
その一心で、センチメンタルな自分を掻き消すように俺は顔を上げた。
「「あのっ!」」
声が重なり、動揺して言おうとした言葉が飛んでいく。風峯さんも驚いたようで、瞳をいつもより大きくしていた。
「五代くん、先に言って」
「あ、えと……あと五分だよ」
後悔した時には後の祭り。あろうことか風峯さんとの関係に自らピリオドを打ってしまった。
「え?……あ、ほんとだ。行かなきゃね」
壁掛け時計を見た風峯さんは入り口の方へ身体を振り向かせようとしたが、一時中断した。
一瞬、告白はやめるのかと期待したが、むしろ彼女は何かを決意したかのような真剣な眼差しを向けきた。
「五代くんっ!」
俺は小首を傾げてみせると、風峯さんは清々しい笑顔で言った。
「私、絶対この教室に戻ってくるから待っててくれない?」
「え、いや、でも──」
「約束だよ!カバン置いていくし!じゃ、行ってくるから!」
「ちょ、ちょっと!」
俺の声を遮るように、風峯さんは踵を返し、そのまま慌ただしく教室を飛び出していく。
遠ざかっていく足音。まるで彼女の気持ちが俺から離れていくみたいに感じた。
やがて足音は完全に消え、静寂だけが残った教室に俺は一人取り残された。
寂しさが膨らんでくる。
それでも俺は彼女との関係を大事にするって決めたんだ。
風峯さんが、俺ではない想い人と結ばれて、幸せそうな顔でここに戻ってきたとしても、そのときはちゃんと祝福する。大丈夫だ。
風峯さんが俺ではない誰かと結ばれるのはわかってたことだし、それに俺だってまた一人だった頃の自分に戻るだけなんだから。
そう言い聞かせながら、俺は窓際の自分の席に向かい、腰を下ろした。
自然と視線の先はカバンが置きっぱなしにされた風峯さんの席へ。
明日からあの席を見る癖も直さないと。
「片想い、終わっちゃったな…」
乾いた独り言をぽつりと風峯さんの席の方へ溢すと、足音もなく、急にガラガラと教室の引き戸が開けられる音が聞こえた。
不意に風峯さんが帰ってきて、しかも本人にとんでもない独り言を聞かれたと思い、慌てて顔を上げた。
「ごめん!今のは──え?」
「え?」
そこに立っていたのは風峯さんではなかった。
風峯さんとよく一緒にいる同じクラスの女子、一条夢だった。
呆気に取られたように大きな丸い瞳をぱちくりと瞬きさせて、こちらを見ている。
忘れ物を取りに来ただけの彼女に、俺は余計なことを言うところだった。
「ごめん。なんでもない」
誤魔化し笑いを浮かべて、視線を窓の外へ逃がす。
校舎内の外壁沿いに植樹されている木々の黄色やオレンジ色に色づいた葉が初冬の風に吹かれ、ひらひらと舞い落ちていく。
そんな風景を見ていると、まるで自分の気持ちまで一緒に落ちていくような妙な感覚になる。
そんな時、足音がこちらへ近づいてくるのに気づいた。
一条さんの席は入り口側のはずなのに。
疑問に感じた頃には、俺のすぐ隣りで彼女の足音が止まった。
その瞬間、柔軟剤かシャンプーかの甘い匂いがふわっと漂い、戸惑いながらも俺は顔だけを一条さんへと向けた。
視界に映った彼女はなぜか頬を赤らめ、目を大きくしていて、まるで告白を目前にした風峯さんのようだ。
「あ、あのね、五代くん」
「ん?」
俺が少し首を傾げてみせると、一条さんの視線が忙しなく左右に揺れ出した。
「好きです」
唐突だった。
脈なんて感じたことはないし、ちゃんと喋ったのも指で数えられるくらいだ。
そんな一条さんの口からこぼれた寝耳に好きと言った状況に、俺の頭の中ではloadingという英単語がぐるぐると回っていた。
そんな俺に彼女は続けて口を開く。
「だから私、五代くんの彼女になりたいです。お願いしますっ!」
そう言って一条さんは自席に座りっぱなしでいる俺に頭を下げてきた。
恐縮のあまり、俺はloadingを中断し、慌てて立ち上がって身振り手振りですぐにやめさせようとした。
「やめて一条さん!頭をあげてよ!」
すると頬を赤らめたまま一条さんはゆっくりと顔を上げるも、目をうるうるとさせながら顔を逸らした。
そんな彼女を目の当たりにした俺はふと本音を口にしていた。
「どうして俺みたいなやつにそんなことを?」
自分でも情けないセリフだと思う。
でも俺は今まで風峯さん以外の関わりを持った人たちから、必要とされていると感じたことがない。
空気か、はたまた定位置に置かれ続けている置き物か。そんな具合に俺は他人から当てにもされず、期待もされず、自分の存在意義を見出せずにいた。
誰かから必要とされる努力は確かにしていた。けどいつからか、それすらも意味のないことだと悟った。
そんな中身のない透かした俺に、一条さんは肩で跳ねる明るいブラウンの髪を揺らしながら頬を赤らめ口を開いた。
「うらやましかったから」
「うらやましい?」
一条さんはこくりと頷くと、続けてゆっくりと言葉を紡ぎ出した。
「ひよりちゃんがね、いつも私に五代くんの話をするの。五代くんに相談したら、自分のことみたいに話を聞いてくれるんだよって」
胸が少しだけ温かくなる。
でもそれは相談相手という関係だからだと気づいてしまう。
「そうなんだ」
そんな俺たちの関係を知らないのだろう一条さんはさらに続ける。
「そんなひよりちゃんがうらやましかった。五代くんの優しさを独り占めしてるひよりちゃんが」
「それは」
「わかってるよ。五代くんはひよりちゃんが好きだから、ひよりちゃんを大切に思って優しくしてるんだって」
それでも一条さんは真剣な眼差しを俺に向けて言った。
「でも、五代くん以外の人に告白しにいくんだって初めて聞いた時、その時から考えてた。それなら、私がひよりちゃんの代わりになりたいって」
本音を呟いた一条さんは机に手をついて、前のめりに顔を近づけてきた。
その彼女の眼差しからは、嘘偽りのない真剣さがにじみ出ていた。
「五代くんがひよりちゃんを好きなままでもいい。それでもいいから!私と付き合ってほしい!私を好きになってもらえるように頑張るから!」
「一条さん…」
一条さんは風峯さんと同じで、クラスの中でもかなり可愛い女子だ。その気になれば彼氏だってできると思う。
そんな彼女からの言葉は正直、心底嬉しかった。もちろん彼女が可愛いからという理由だけではない。
風峯さんが想い人に向けるその表情を自分に向けてくれたこと、そしてこんな自分を必要としてくれることが嬉しかった。
嬉しさが高揚して、俺も幸せになりたい。そう思った。
だけど本心から出た言葉は違っていた。
「ごめんなさい。…………付き合えない」
俺の一言に目をうるうるさせながら俯き、黙り込む一条さん。
罪悪感に浮かされながらも、俺は本心に従って、そのままの想いを伝えることにした。
それがお互いにとって一番いいと思うから。
「風峯さんが俺以外の人を好きでいても、それでも、俺は好きなんだ」
「そっか。それが五代くんの本音か」
小さく呟くと、一条さんは目尻に残った涙を指で拭う。
そして何か決意を固めたようにふっと息を吐いた。
「それなら、私も諦めない」
「え?」
予想外の返事に呆気に取られる俺に、一条さんは笑顔を咲かせる。
「五代くんに対しての片想い!私も絶対捨てない!だって私の方がひよりちゃんよりも五代くんのこと大好きだもん!」
一条さんの笑顔に俺はまたどきりとした。
同時に脳内が火花を散らし、どういう言葉を彼女に口に出すべきかわからなくなった。
動じず、揺るぎないはずの決心が、今の彼女のセリフでぶれ始めた。
そんな時だった。教室の入り口の引き戸がガラガラと引いた。
「待って!!」
びくりと肩を震わせる一条さんの後ろ、教室の入り口には声の主である風峯さんの姿があった。
「ゆめちゃん、なにしてるの?」
名を呼ばれた一条さんはふーっと一呼吸おいて、風峯さんに振り向き、歩いて行く。
「それはこっちのセリフだよ、ひよりちゃん。結局、告白しに行ったんだ」
はっきりとした語気に、風峯さんの目が泳ぐ。
「うん」
「で、付き合うの?五代くんじゃない、その人と」
「付き合わない」
「そうだよね。知ってる」
俺はついに思考回路がショートした。
風峯さんが振られるのを知ってるってどういうことなんだ?
そればかりが頭の中を駆け巡る。
そんな中、顔を上げた風峯さんと目が合った。まるで何か助けを求めるような目だ。
そんな風峯さんの視線の先をたどるように一条さんも俺に振り、俺が混乱しているのを見抜いたのか、安心させるための笑みを一瞬だけ見せて、再び風峯さんに向き直った。
「ひよりちゃんの五代くんに対する気持ちは親友として理解してる。それでもわたし、やっぱり五代くんのことが大好き。付き合いたいって、真剣に考えてる」
「なんで?」
「逆になんで?私は五代くんにひよりちゃんみたいな周りくどいことをして、傷つけたりなんかしないよ?」
「周りくどいって、だから私は──」
「五代くんに向きあいたくて、未練を断ち切るために彼女の持ちの彼に意味のない告白をしに行ったのは、親友として百歩譲って理解できたとしても……」
一条さんの声が震えていく。
「どうして正直に五代くんに最初から言ってあげなかったの?サプライズで驚かせたかったとでも言う?ひよりちゃんが彼の話をしている間、五代くんはずっと──」
「嫌だったの!」
一条さんの言葉を遮るように風峯さんは叫んだ。
「最初は確かに五代くんを良い相談相手だなってくらいにしか見てなかった。それが私たちの関係の始まりだった。好きな人に彼女がいるって途中でわかったけど──」
風峯さんは一条さんを透かすように嘘偽りのなく、真っ直ぐな眼差しをこちらに向けた。
「それよりも前から私は五代くんを好きだった!真剣に話を聞いて、励ましてくれる五代くんが。だからこそ、相談相手って関係でも大切な時間だったから、壊したくなかったの!」
「風峯さん」
「虫がいいってのはわかってる。それでも、私だって五代くんのこと大好きで…だからこそ私は、今までの五代くんとの関係も大事にしたかった。だから私も"片想いしてる女子"を最後まで演じ切るしかないって思ったの」
そう言って、再び風峯さんは一条さんに向き直る。
「ゆめちゃん。わかって?これが私なりの、五代くんに対してのけじめのつけ方なの」
「だとしても五代くんの気持ちはどうなるの?五代くんはずっとずっと、ひよりちゃんが大好きで、誰よりもひよりちゃんを見てくれてたんじゃないの?」
「だから今度は私が五代くんだけを見るの!精一杯努力して、五代くんを幸せにするの!」
「勝手なことばかり言わないで!五代くんは私が幸せにする!絶対絶対、私なら五代くんを苦しませたりしない!」
二人の親友としての関係が崩れていくのに、俺は十分なくらい嬉しかった。
だから、今から気持ちに伝えようと思う。
必要としてくれた、彼女のために。
そう決心して、そして──
俺は口を開いた。
まだまだ未熟者で勉強中ですので、おかしい点や不明な点、また誤植、誤字、脱字があればぜひ教えてください!
あ、友達のように気軽に教えてくださいね!
もし仮に、上記に当てはまらず、純粋に良かったと思っていただいた場合はお星様★★★★★をお願いします。
めっちゃ喜びます(๑˃̵ᴗ˂̵)
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ただ返信はできませんのでご了承下さい(>人<;)
一方的に書き込んでいただく感じでよろしくお願いします!




