第十五話 ともでやから
夏休みが始まる 真貴の現代への適応は新しい段階に入る
結衣の通う小学校の夏休みは七月二十六日から始まる。その前日の夕食後、真貴を含む龍口家全員が座敷に集まっていた。
「結衣、明日から夏休みだね?」
祖父の義弘に聞かれ、結衣はこくんとうなずいた。
「真貴がうちに来て、もうすぐ一か月になるね。真貴がすごくがんばって勉強したから、もう普通の会話には困らなくなった。でも、うちの家族以外とは、ほとんど話したことがないよね?」
今度は真貴がうなずく。義弘が続けた。
「前にも言ったけど、私たちは真貴が今のこの世界で、普通の子として楽しく暮らしていけることを一番大事に思ってる。そのためには、家の外の人たちとも話したり、一緒に過ごしたりできるようになったらいいと思うんだ」
美和子が話を引き継いだ。
「明日から夏休みになるけど、真貴が外の人たちに慣れるにはちょうどいい時期なの。夏休みは人の出入りが多いから、見慣れない子がいてもあまり気にされないしね。それに、夏の間に職場や学校が変わる人も多いから、夏休み明けから学校に行き始めても全然おかしくないの」
義人が口を開いた。
「ただ、新しい人と会うと、必ず『どこから来たの?』って聞かれる。そのとき、ほんとのことを話しても信じてもらえないだろうし、もし信じられたらとんでもない騒ぎになる。そうなると真貴が困ることになると思う」
真貴は大きくうなずいた。家裁の宮地は自分の話を真剣に聞いてくれたが、普通の人に「千年前から来ました」と言っても信じてもらえないだろうとわかっていた。
「それで、大人たちで話し合って、『真貴は龍口家の親戚の子で、しばらく預かることになった』ってことにしようと思ってる。これでいいかな?」
義人の提案に真貴は少し考えてから答えた。
「わかりました。でも『どこから来たの?』って聞かれたら、どうすればいいでしょうか?」
「そのときはね、『海外にいました。事故にあって両親が亡くなりました。あまり覚えていません』って答えるのはどうかな?」
真貴は胸の中で考えた。千年前を「海外」としてもおかしくはないし、両親を亡くしたのは事実だ。その後のことを説明するのは難しいので「覚えていない」とする。これなら嘘ではなく、今の人たちにも伝えやすいと思えた。
「わかりました。それなら話せます」
圭が結衣にたずねた。
「結衣、お友達に真貴のこと、話したりしてない?」
「初めに約束したから話してないよ。これからも話しちゃだめなの?」
義人と圭は顔を見合わせ、義人が答えた。
「約束を守ってくれてありがとう。これからは『少し前から親戚の子が来てる』って言っていいよ。でも、千年前から来たってことは絶対に言っちゃだめだ」
「はーい。じゃあ、これからは…」
結衣は真貴の手を握った。
「私たち、『とも(友:ともだち)』で『やから(族:親戚)』だね」
真貴は大きくうなずいた。
『とも(友:ともだち)』で『やから(族:親戚)』
結衣と真貴は、いっそう強いきずなで結ばれていく




