表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。

甜蜜

掲載日:2025/10/06

「ご主人様!」


天使の従者は屋根裏部屋の窓から帰宅すると、窓枠から飛び跳ねて私の胸に飛び込んで来た

天界で何かしらの素敵な願いを叶えた事は、その明るい表情を視れば明白だった


天使族はこの世に生を受けてから十年が経過するごとに、『天界で小さな願いを一つ叶えて貰う権利』を獲得する

今回の彼の帰郷は、その祝いの為のものだった



「ご主人様」


「どんな願いを叶えて貰ったか、当ててみて下さい」


私の両腕の中に抱かれている小さな躰が、いたづらな上眼遣いで視上げてくる


従者たちの中でも飛行の為か華奢な躰付きの彼が、少し重くなって居る気がする

甘い匂いもするし……



「なにか、お菓子でも沢山貰ったのか?」


私が答えると天使の従者は、むくれた表情で羽ばたいて近くに在った革張りの椅子へ着地し、座った



「不正解です」


「天界で、躰の部位一つを総て飴に置き換えて貰いました」


なるほど、と私は思った

重さも甘さも飴が原因だったのか



「いや……」


「なんで?」


せっかくの願いを何故そんな事に、と私は思った

答えは直ぐに、彼自身の口から端的に語られた



「ご主人様と遊びたいのです」


華奢な躰が甘い香りを撒きながら、脚を組む



「ご主人様、僕の何処が飴になったと思いますか?」



「その場所を嘗めてみて下さい」


天使がくすくすと笑う

僕は無遠慮に彼に近寄ると、首筋に噛み付いた


ハズレだったらしく、柔らかい感触と血の味が口腔に静かに広がり始めた



「ちょっと!!」


四肢をばたつかせて暴れながら、従者は当惑を視せた



「ここじゃない事くらい、視れば解りませんか?」


「それに噛まないで下さい!飴を噛むタイプなんですか!?」


私はそうだと答え、「首で無いならば、私は指か腹だと思っている」と彼に伝えた

彼は恐怖で少し後ずさったが、背もたれより後ろに逃げる事はそもそも出来ず、単に座り方が深くなっただけだった



「違いますよ、ここです………」


天使の少年は恥ずかしげに視線を伏せると、右脚を包むソックスをゆっくりとめくった


膝から下は飴へと置き換わって居る

紅くけばけばしい輝きが、部屋の薄暗い灯りの下で妖しく僕の瞳に映る


一流の職人でもここまでは作れないというくらいに、細い爪先、柔らかな踵の膨らみ、骨張った足首、滑らかな足の甲の優美な曲線が、彼の足の形そのままだった



「噛まないで、大切に味わって下さいね」



私は自分の吐く息が、いつの間にか熱いものになっている事に気付いた


天使の顔すら視ず、一歩ずつ彼の突き出した爪先へと近付いていく



口付けると、造り物のイチゴの味がした

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ