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寝不足

作者: island

 右手で左手に触れてみる。

 いつもよりも触れている感覚が鈍い気がする。肌を触っているという感覚が電気信号によって脳に理解されるまでの時間がいつもよりも長い感じ。火傷するほどの鉄鍋に素手で触れて熱いと気づくまでの時間がいつもより長い感じ。実際にはそんなことはしないけれど例えるならそんな感じだろうか。きっと今ならマムシに噛まれても死ぬまでの時間はいつもよりも倍くらいはかかるんじゃないかと思ってしまう。

 身体の中の血の流れが心なし遅い気がする。実際にはどうかなんてわかるはずもないのに、そんな感覚。 例えるなら小川を流れる水がいつもなら小石も汚泥もなくさらさらと流れていくのに、雨が降った後の土が流れて一部で溜まって流れが緩くなっているところのような、油分を摂りすぎて身体の中の血液がドロドロになっているようなそんな感覚。こんな時は思考が通常とは違っていつも考えているような計算とか理解とか仕事で使用するような脳の働きは鈍く感じるのに、手から何か出せたりとか身体を浮かせたりとかいつもならありえないようなことができるような万能感がある。身体は正直だから瞼は重く重力に従って閉じようとするし、体の動きだって鈍くなるけれど、えもいえぬ高揚感と根拠のない万能感が身体を包んでいく。私はこの感覚が何故か嫌いではない。あと数分後、もしくは数秒後には視界は闇に閉ざされ、身体は夢の中に微睡むのだろうけれど今はこの感覚を楽しみたい。世の中に幸せなことは他に沢山あるのだし、寝不足であることは大抵不幸せなことのように捉えられがちだけれど、数秒、数分のこの感覚は私にとって幸せな時間だ。幸せとは意外とどこにあるかわからないものだ。

 

寝不足で書きました

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