第9話 神の果実と男のプライド(編集版)
※本章は【編集版】として、深い描写を大幅にカットして再構成しています。
完全な内容をご希望の方は、NOTE掲載の【完全版】をご覧ください。
みーちゃんが、ふと黙り込む。
何かを考えているような、迷っているような——そんな表情。
「……どうしたの?」
そっと声をかけると、みーちゃんは少しだけ目を伏せたまま、小さく息を吐いた。
「……ちょっと、いろいろ考えちゃって」
「いろいろ……?」
「……今の彼と……あっくんが、あまりにも違いすぎて……」
思わず息を呑んだ。
みーちゃんは言葉を選ぶように、慎重に続ける。
「ごめんなさい、変なこと言って。
比べるなんて、酷いですよね……最低だ、って、自分でも思ってます」
「そんなことないよ」
「でも……」
そう言ってから、彼女はそっと俺を見つめた。
その瞳に、迷いと、戸惑いと、ほんの少しの希望が混じっている。
「……あっくんって、本当に優しいから」
その言葉に、胸がぎゅっと締めつけられる。
返答に困っていると、みーちゃんはふっと笑って、また少しだけ俯いた。
「でも、よく考えたら……」
ぽつり、ぽつりと落ちるように、言葉が続いていく。
「彼に、あっくんみたいに優しくされたことって……あんまり、なかったかも」
「だから、ちょっと戸惑ってるのかもしれません」
彼女の言葉は、まるで心の奥を手探りするように、静かだった。
俺はただ黙って、うなずくことしかできなかった。
それ以上の言葉が見つからなかった。
でも、その時間が、とても大切なものに思えた。
◆静かな決意
そして、みーちゃんはふっと微笑んだ。
「変ですよね、私。こんな状況なのに……あっくんといると、すごく安心するんです」
「……なんででしょうね」
そんなの、俺のほうこそ聞きたいよ。
どうして、みーちゃんが俺なんかに微笑んでくれるのか。
不思議で、不安で、だけどたまらなくうれしかった。
そして。
「……私も、してほしいことがあるんですけど。言っても、いいですか……?」
みーちゃんのその言葉に、俺は迷いなく答えた。
「もちろん、いいよ。なんでも言って!」
ちょっと張り切りすぎたかもしれないけど、それでも本心だった。
彼女はほんの一瞬だけ黙って、なにかを確かめるように、そっと俺の目を見た。
(……なにを、お願いされるんだろう?)
鼓動が高鳴る。
ドクン、ドクン、と。
▶ 第3章 ― 第10話につづく。
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