第4話 4人で歌ったあの日から
毎週土日は、必ずケンさんとカラオケに行く――そんな日常が続いていた。
その週もLINEで雑談していたら、ふいにケンさんからメッセージが届く。
ケンさん:
今度の土曜ヒマ?
SNSで仲良くなった女の子とカラオケ行くんだけど、良かったら一緒にどう?
さすがコミュ力おばけ……。
俺の知らないところで、また誰かと繋がっていたらしい。
断る理由なんてない。即 “行きます!” と返信して当日を迎えた。
――集合場所に現れたのは、女の子が二人。
ひとりは SNSのニックネーム 「唯ちゃん」。
大学1年生、19歳。小柄でとにかく可愛い。リアクション大きめ、聞き上手。
もうひとりは 「らんかちゃん」。
21歳のフリーターで、地元のカフェ「Cafe Soleil」のバイトリーダーらしい。
唯ちゃんとはバイトの先輩後輩とのこと。
ネイルやアクセは派手めだけど、全体的にゆるいギャルって感じの柔らかい印象。
で、見かけによらず重度のヲタク(笑)
アニメ・ゲームの話になると止まらない系の女の子。
そして、結構セクシーだったりするので目のやり場に困る(笑)
童貞には刺激が強すぎるし、ギャルっていうだけでかなり怖い存在だったから、ヲタクっていう情報がなかったらめっちゃ苦手意識すごかったかもしれない(笑)
二人ともアニソンが大好きで、ケンさんとはそれで意気投合したらしい。
「ケンさん、本当にどこで見つけてくるんですか……」
「SNS徘徊してたら話合いそうだったから♪」
◆歌にまぎれて、心がほどけていく
というわけでカラオケに突入。
俺は雑食派でジャンル問わず何でも聴くけど、アニソンは得意だったし、アニソン以外にも流行りの曲とかは網羅してたから、最初からテンション高めでバッチリついていけた。
ちなみに唯ちゃんの SNSのニックネームの由来は、
某有名アニメのキャラからとったらしい。
俺も大好きなアニメだったから話が合った。
そして、アニメのキャラも可愛かったが、
それ以上に現実世界の唯ちゃんは可愛かった。
らんかちゃんは「唯ちゃんホントかわいい!」とデレるし、
俺もそれに激しく同意。
それからケンさんとらんかちゃんは アニメと特撮のディープな話題で二人の世界に没入。
さすがに俺も特撮は詳しくないので、ちょっとついていけず…。
唯ちゃんもついていけなかったようで、
自然と俺も唯ちゃんとペアで話す流れになった。
◆たかがカラオケ、されどカラオケ
唯ちゃん――とにかく歌が上手い。
カッコイイ系の歌はシャウト付きで完璧に歌いこなし、
可愛い系の曲は萌え声全開でキュートに決める。
熱い曲は全身で熱唱。まさに歌姫。
将来の夢は声優らしい。
JDで声優の卵で美少女――俺にとってはまさに女神(笑)。
◆たぶん今日が、はじまりの日
カラオケが終わるころには
「また4人でカラオケ行きたいですね!」
と、ケンさんにお願い。
すぐ2回目が決まり、連絡先も交換した。
──この時はまだ、
あの日の一歩が、あとから自分の世界を面白いほうへ転がしていくなんて、
まるで想像してなかった。
▶ 第1章 ― 第5話につづく。
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