第2話 カラオケバカ誕生
中学の同級生と、偶然合コンで再会——ってだけ聞くと、ちょっと青春っぽい。
当時の自分を知る、数少ない存在。
それに、中学の頃はあまり目立つタイプじゃなかったけど──今の彼女は、ひと目で『あ、可愛いな』と思わせるくらい垢抜けていた。
だからこそ、少しだけ特別に感じてしまったのかもしれない。
でも、どうしてだろう。
お互いの“暗黒期”を深掘りされたくなかったのか、
なんとなくそれ以上踏み込めず、いい雰囲気になることもなかった。
グループ内では、他にカップルが1組できていたというのに、俺には何も起きなかった。
……うん、本当に何も。
「え? オチそれだけ?」って声が聞こえてきそうなくらい、何もなかった(笑)。
もっとグイグイ連絡を取って親密になる努力をすれば良かった気もするけど、
正直そこまで真剣になれるほど好きになっていたわけでも無かったので、努力する気にもなれなかった。
結局、大学生時代も色恋とは全くの無関係な生活となった。
家にこもってゲームをする機会こそ減ったが、
その代わり、毎日のようにゲーセンに通っていた。
たまには友達とカラオケにも行った。
昔から音楽──というより、ほとんどアニソンばかり──が大好きで、
四六時中聴いては、自室で熱唱していた。
(ご近所さんには、相当ご迷惑をかけていたと思う)
そんな生活の成果(?)なのか、
音ゲーではちょっとした腕前を見せて褒められたり、
カラオケでは歌唱力が高いとチヤホヤされて、すっかり気分を良くしていた。
大学を卒業して社会人になり、最初に入った会社は接客業だった。
職場には垢抜けた女性が多くて、正直なところ居心地が悪かった。
そんな中でも話しかけてくれる女の子がいて、俺はすぐに好きになった。
グループでカラオケに行ったり、さりげなく好意を伝えてみたり。
その子の好きな曲を覚えて、張り切って歌ってみたりもした。
嬉しそうな反応に手応えを感じかけたそのとき──
実はアルバイトの男子大学生と付き合っている、と告げられ、あえなく撃沈。
それでも、歌のウケは良かった。
女子たちから「上手いね」と褒められることも多くて、調子に乗った。
いや、それ以上に、単純にカラオケが楽しくて仕方なかった。
そうして歌うことは、いつしか俺の日常になっていった。
この頃はまだ、そこまで頻繁に通っていたわけじゃない。
それが気づけば、週に一度が当たり前になり、
やがて毎週末には必ず土日2日ともカラオケに足を運ぶようになっていた。
そしてとうとう、「カラオケバカ」と周囲から軽く引かれるほど、のめり込んでいく。
──そんな俺の人生が、
謎の方向にハモり始めるのは、もう少し先の話(笑)
▶ 序章 ― 第3話につづく。
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