第17話 涙がこぼれた、その理由(わけ)(編集版)
※本章は【編集版】として、深い描写をカットして再構成しています。
完全な内容をご希望の方は、NOTE掲載の【完全版】をご覧ください。
突然、泣き出したみーちゃんを見て、俺はうろたえた。
「……えっ? どうしたの!? 大丈夫!? 嫌だったよね、ごめんね……。」
テンパって、思わず言葉が先に出た。
状況がまったく理解できなくて。
焦って、ただただ謝るしかなかった。
でも。
みーちゃんは、小さく首を振りながら、絞り出すように声を返した。
「……いや、違うんです。ごめんなさい……酷いですよね、私。本当に……ごめんなさい……」
――え?
全然、意味がわからなかった。
何が「酷い」んだ?
何を「謝る」必要があるんだ?
俺には、みーちゃんがしてくれたこと、全部――
嬉しくて、優しくて、ありがたくて。
だから、思わず口をついて出た。
「酷くなんか、ないよ。してほしいこと、なんでもしてくれるし……
すごく……良い子だと思うよ、俺は。」
でも、それが正解の言葉だったかは、分からない。
的はずれなことを言っていたかもしれない。
でも必死で、少しでもみーちゃんを安心させたくて。
何かフォローになるようなことを言わなきゃって、焦って。
けど。
みーちゃんの中にあるもの――
その深い部分までは、俺には見えてなかった。
今にして思えば、この時、みーちゃんの心の中では、
いろんなものが入り混じって、渦を巻いていたんだろう。
自分でも整理しきれない感情が、胸の奥で暴れていたのかもしれない。
たとえば――
遠距離の彼氏くんがいる、ってこと。
上手くいってないわけじゃない。
むしろ、今でもちゃんと、彼氏くんのことを想ってる。
ただ、距離があって、会えない時間が増えて。
彼氏くんのことを想っているからこそ寂しいと感じるわけで。
ふとした寂しさや、誰かに触れていたい気持ちが、
どうしようもなく溢れてしまう夜があって。
そんな中で、こんなふうに、俺と……
こんなことをしてしまって。
――そりゃ、葛藤もあるよな。
自分の中の「正しさ」と「欲望」が、せめぎ合ってたんだと思う。
けれど、そんなこと、この時の俺には、分かるはずもなくて。
ただただ、目の前で涙をこぼすみーちゃんを、オロオロと見つめるしかなかった。
声もかけられずに。
触れることすら、怖くてできなくて。
この時、俺は――ただの無力な、情けない男だった。
◆「好き」と「ごめんね」のあいだで
しばらくして。
沈黙を破ったのは、みーちゃんだった。
「……あっくんは、続き……してほしいんですよね?」
その声は、どこか濡れていて、優しくて。
俺は、ごくんと喉を鳴らして、正直に答えた。
「うん……正直に言うけど……その……してほしい、かな……」
どこか情けない言い方になってしまった気がしたけど、
それでも、気持ちに嘘はつけなかった。
みーちゃんは、ふわっと微笑んで、うなずいた。
「……分かりました。じゃあ……続き、しますね」
「……ありがとう」
それだけで、胸の奥がじんわり熱くなる。
やがて、ふたりはまるで互いの不安や寂しさを少しずつ癒やし合うように、
確かめ合うように、そっと、そっと触れ合った。
鼓動が重なり、呼吸が溶け合い、
声にならない想いが、まるで肌を通じて伝わってくるようで。
言葉よりも、沈黙のほうが意味を持った時間だった。
▶ 第5章 ― 第18話につづく。
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