第13話 夜空より、近くに(編集版)
※本章は【編集版】として、深い描写をカットして再構成しています。
完全な内容をご希望の方は、NOTE掲載の【完全版】をご覧ください。
時間を忘れるくらい、
ただただ夢中になっていた。
だが、ふと気付く。
周りが、いつの間にか、やわらかく夜に染まっていた。
「暗くなってきたし……そろそろ、花火大会の会場に行きますか?」
みーちゃんがそう囁く。
正直なところ、花火なんて……どうでもよかった。
こんな甘くとろける時間を、もっと、もっと味わっていたかった。
花火なんて行かずに、ずっとこのままでいいのに――
……なんて、本音は言えない。
だから素直にうなずいて、俺は立ち上がった。
静かに歩き出すふたり。
花火大会の会場へ向かう。
もちろん、手を繋いで。
もちろん……恋人繋ぎで。
みーちゃんの家の近くだし、知ってる人に見られたらどうしよう?――なんて不安がよぎったけど、
でも。
自然に手が重なって。
そして、みーちゃんがその手を、ずっと離そうとしないのだから。
もう、それだけで、十分だった。
――ありがたく、繋いだままでいよう。
◆夜の輪郭をなぞるように
幸いにも――
誰にも会うことなく、無事に会場へとたどり着いた。
レジャーシートを敷いて、二人並んで腰を下ろす。
気づけば自然と、肩が触れ合っていて。
そして、手も……まだずっと繋いだまま。
夜のとばりが降りてきたから、
このくらいの距離感でも、きっと大丈夫だろう。
……と思いたい。
そんなふうに、静かにぬくもりを感じていたとき――
どん……と、夜空に一発。
打ち上がった大輪の花。
「わーっ、キレイ!」
パッと顔を輝かせるみーちゃん。
「そうだね。」
花火の色がみーちゃんの瞳に映って、
それが、こっちの胸を打ってくる。
しばらく並んで花火を眺めていたら、
ふいに肩を――トントン、と叩かれた。
「どうしたの……、んっ…!」
振り向いた、その瞬間。
唇が重なった。
えっ、ちょ、えっ――!?
……なんて子……!
積極的すぎでしょ……!!
あたりには、もちろん人がいる。
心臓は、さっきの花火よりも大きな音で鳴っていた。
「えへへ///」
照れくさそうに笑う、小悪魔なみーちゃん。
……もーーーーーーーーーーーーかわいいーーーーーーーー!!!
花火の音なんて、もう耳に入らない。
俺の視界には、みーちゃんしか映ってなかった。
……そして気づけば。
夜空の花は、すべてその光を落とし終えていた。
◆あと少しだけ、このままで
「昨日も今日も楽しかったですね。」
「そうだね。本当に楽しかった。」
「じゃあ私はこれで帰りますね。」
「うん…。」
つないだ手を――どうしても、離せないでいる俺。
「あっくん、また離れたくないのかな?」
「うん…。」
「でも今日は泣かない?」
「うん…。頑張る…。」
「ふふ、良いんですよ、泣きたい時は泣いたって。」
「でも、みーちゃんを困らせたくないから。」
「あーもう、優しいなぁ。ほんと。」
「優しくなんてないよ。手を離したくないし。困らせてるのは同じだもん。」
「そうやって気遣ってくれる事を優しいって言うんですよ。」
「ありがとう。」
「ふふ。…あの…本音を言うと、私も、離れたくないです…」
「でも門限超えたら怒られちゃうでしょ?」
「怒られますね…。めちゃくちゃ…。」
「じゃあ帰らなきゃ。」
「嫌です。」
「えっ?」
……その瞬間。
みーちゃんが、俺にギュッと抱きついてくる。
「私だって、帰りたくないです。」
「っっっ…!」
心臓が破裂しそうだった。
何も言えない。
めっちゃ動揺する俺。
「もう少しだけ…。もう少しだけでいいので、こうさせてください…。」
「うん…。」
寂しいんだよね。
彼氏くんに会えなくて。
その穴埋めが俺っていうことだもんね。
これで少しでも楽になれるのなら、
俺がここにいる意味も、きっとある。
……しばらくして。
「すいません…。落ち着きました。」
「うん。」
「困らせちゃいましたよね。ごめんなさい。」
「そんなことないよ。」
「ほんとにもう。優しいなぁ。クセになっちゃいますよぉ///」
「なにそれ(笑)」
少し笑い合って、空気が和らいだ。
だからこそ、今は静かに背を向けて。
それぞれの夜へ帰っていく。
これで、3週間が過ぎた。
約束の1か月経過まで、残りあと7日。
長いようで、きっと、あっという間。
そしてその"あと"のことは、
まだ、誰にもわからない——。
▶ 第5章 ― 第14話につづく。
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