第12話 浴衣で、嘘がつけない(編集版)
※本章は【編集版】として、深い描写を大幅にカットして再構成しています。
完全な内容をご希望の方は、NOTE掲載の【完全版】をご覧ください。
どれだけ時計を見ても針は遅く、
心の中ばかりが先に進んでいった。
みーちゃんが浴衣に着替えてくる──
その一言だけで、頭の中はもうずっと花火。
いや、花火より熱くて、もっと甘くて、もっと期待に満ちた何か。
そしてようやく、その時が来た。
待ち合わせ場所は、街外れにある昔ながらの商店の駐車場。
どれだけこの瞬間を待ちわびていたか。
…そして、登場する浴衣姿の彼女。
……。
絶句。
からの。
絶叫。
ギャーーーーー!!!
くぁわぁゆぅいぃぃぃ!!!
夏空みたいに明るくて、澄みきった青をまとった浴衣には、
小さな花たちが風に乗って舞うように、優しく散りばめられていた。
その色合いも、雰囲気も、彼女にぴったりすぎて、
息を呑む…というより、呼吸すら忘れてしまった。
そして髪。
いつもふわっとしてるその髪が、今日はきゅっと結われていて。
うなじが…うなじが、まるっと、見えてる。
白くて、なめらかで、思わず見とれる色気。
しばらく見とれていた俺に、みーちゃんがそっと声をかけてくる。
「ごめんね、おまたせ。……あのぅ、どうかな?」
控えめなトーン。
ちょっとだけはにかんだ顔。
そして、その仕草。
耳に髪をかける、あの、たまらないほど女の子らしい所作。
もう、ダメ。
破壊力がえげつない。
「か、かわいいよ。めちゃくちゃ……すっごく、かわいい。」
言葉がつっかえながらも、どうしても伝えたくて。
溢れてしまうくらい「かわいい」を連呼していた。
「あはは、ありがと。たくさんかわいいって言ってくれて嬉しいです」
みーちゃんは少し照れくさそうに笑った。
でも、その笑顔は少しだけ、前よりも距離が近づいた気がして。
敬語もゆるやかになってきて──まるで、心の距離がそのまま反映されているようで。
花火まではまだ少し時間があった。
「まだ花火まで時間あるけど、することないですね。どうしよっか? 車で雑談でもしてますか?」
「うん。そうだね。おしゃべり……しよっか」
俺たちはふたりで並んで歩きながら、
静かに車へと向かった。
その時間さえも、花火よりずっと、特別な予感がしていた。
◆ずっと見ていたい横顔と…
2人は、そのまま車の前の席に並んで座った。
人の気配もまるでないお店の駐車場。
でも念の為、道からも見えにくい、一番奥のスペースに車を停めてある。
お店の敷地内だし、もちろん“何か”をするにはリスクがある。
だから──何も、起きない。
……はずだった。
「みーちゃん、浴衣……かわいすぎる。……キス、したい。」
車に乗り込んですぐ、欲望が口からこぼれ落ちた。
こんな可愛い浴衣姿のみーちゃんを見たら、自分に嘘なんかつけない。
自制も理性もどこかへ飛んでいた。
あぁ……どうしてこんなにも、可愛いんだろう。
愛おしくてたまらない。
見てるだけで、胸がぎゅっと締めつけられる。
尊い。
好き。
大好き。
ずっと、こうしていたい。
この手を、絶対に離したくない。
……でも。
頭のどこかでは、もうすぐこの時間が終わってしまうことも、わかってる。
だけど、今はまだ考えたくない。
終わりなんて、遠くに追いやってしまいたい。
今だけは。
この一瞬だけは。
ずっと一緒にいられる気がして。
その気持ちを胸いっぱいに詰め込んで。
2人は、キスをした。
▶ 第4章 ― 第13話につづく。
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