第1話 スペック:ヲタク、陰キャ、童貞(25)
この物語は、25歳の少し変わった青年が、自分の殻を破ろうともがきながら、初めての恋に少しずつ踏み出していくお話です。
「オタク」「陰キャ」「童貞」…そんな肩書きに縛られがちな彼が、戸惑いながらも心を開き、誰かとつながることを願う姿を描いています。
完全なフィクションですが、等身大の気持ちや繊細な感情を感じながら、気軽に読んでもらえたら嬉しいです。
それでは、『君と見上げた夏空の記憶が、今も背中を押してくれる』、通称「君夏」の世界へどうぞ!
25歳童貞が、どうやって人生初の彼女を作れたか。興味ある?
興味ないって言われたらそれまでだけど、
でもきっと、俺みたいなやつ――
いや、かつての“俺”みたいなやつが、どこかには、いると思ってて。
だから、これはそんな“俺”の話。
正確に言えば、「俺でも彼女ができた話」だ。
まずは自己紹介から始めようか。
俺――朝倉悠真は、
25年間の人生で一度も彼女ができたことがない。
いわゆる“彼女いない歴=年齢”、
そして、当たり前だが“童貞”だ。
まあ、誰に言えることでもないし、言いたくもないけど、
こうして物語として語るなら、隠すわけにもいかないしな。
恥ずかしいことだとは思ってる。
でも、俺の人生を振り返ると、
「そりゃ童貞だよな」って、自分でも納得してる部分もある。
――つまり、俺はそういう人間だったってこと。
小学生の頃。
好きな子に話しかけることすらできないほど、超絶奥手だった。
何も起こらないまま6年間終了。
中学生になると状況はさらに悪化。
女子からいじめられて、女の子と話すのが怖くなった。
顔を合わせただけで、心臓がギュッと痛くなる。
そんな時期だった。
高校に上がって、「高校デビューしてやる!」って意気込んだけど、
元々の性格はそう簡単に変わらない。
結局は、女子と目を合わせることすら苦手なままだった。
でも、席が近かった女子が話しかけてくれたとき、
俺は勝手に舞い上がって、勝手に恋をした。
告白もした。
……LINEで。
当然、結果は撃沈。
「好きな人がいるから」って、やんわり断られた。
優しい言葉だったのに、俺は勝手に病んだ。
「そりゃそうだよな」って、何回も自分に言い聞かせながら、
それでも、心のどこかで期待してた自分を責めてた。
そもそも、面と向かって告白もできないチキンだったし。
今思えば、どんな告白の仕方してたって、結果は変わらなかったんだろうけどさ。
高校は進学校で、まわりの男友達も、恋愛とは無縁なタイプばっか。
チャラいヤツなんて一人もいなかった。
放課後に友達と遊ぶって言っても、
だいたい誰かの家でゲーム。
毎週末、何時間もゲーム。
それはそれで楽しかったけど、恋愛からはどんどん遠ざかっていった。
大学に入って、環境は少し変わった。
チャラそうな男友達もできたし、
人生初の合コンに誘われたりもした。
もちろん、気合い入れて行ったさ。
これが最後のチャンスかもしれない、ってくらいの覚悟で。
そしたら、合コンの場にいた一人の女の子が――
なんと、中学時代の同級生だった。
俺はイジメられてた側。
彼女は不登校だったらしい。
話したことはほとんどなかったけど、お互いに、暗い時期を過ごしてたのは間違いない。
でも、そんな彼女と――
合コンという、ちょっと浮かれた場で、なぜか普通に会話ができた。
その日を境に、俺の大学生活が少しずつ、変わっていく。
……ような、気がした。
▶ 序章 ― 第2話につづく。
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