表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/1

第0章 惰眠、そして。第1節 眠気

【現代一一深夜1時 一一 アパート】

「なあ、俺って……何がしたかったんだっけ?」

仰向けに寝転んだまま、天井をぼんやりと見つめる。


電気を消し忘れた部屋の青白い光の蛍光灯が、ジジッと微かな音を立てている。


スマホの画面はすでに真っ暗で、さっきまで大学のレポート課題のために見ていた「日本政治史」という動画も、自動再生の連鎖の果てに停止していた。


統帝大学、政治経済学部。一浪して、やっと滑り込んだ第一志望。

高校三年の秋以降、猛勉強を重ね、模試のE判定をひっくり返しての合格だった。


「受かったときはさ、ほんと嬉しかったんだよなぁ」


頭の中に、合格発表の日の記憶が浮かぶ。

喜びに満ちたあの瞬間。けれど、それも今では遠い過去のようだ。


そんな記憶を現在に重ねてみる。


春から始まった大学生活は、想像していたものとは違った。


政治学ねぇ、確かに授業内容は面白いよ。租税の歴史、議会制民主主義の限界、制度設計の理論、政治哲学の基本概念。

けれど、俺は真剣さに欠け、授業内のグループワークも付け焼き刃ばかり。教授たちも慣れ切った授業をこなすだけで、本気で「何かを変えよう」とする熱はないし。怠惰な上にも怠惰に暮らす毎日。

よっ友みたいな友達はいるけど、心の友と呼べる親友なんていないし、、


「もう完成されてるんだよ、この世界は。選挙も、法律も、政治も……何を学んでも、俺にはどうしようもできないって、思っちゃうんだよな」

そうやって、自身の怠慢を合理化するだけ。


気づけば、昼夜逆転の生活になっていた。講義も履修登録だけして、ほとんど出ていない。


時計を一瞥し、もう一度、天井を見上げる。


「はは、こんな人生なんなんだろう笑、、何かさ、変えられる世界に行ってみたいな」


行動力を失った大学生なりに、弱々しい願望をしてみる。


「あぁねむ、、。」

眠気が、ゆっくりと彼の意識を包み始める。

瞼が重くなり、世界が滲んでいく。そして、意識は暗闇へと沈んだ、、、?


突然、何者かが、突如、玄関の扉が激しく叩き割られる音が響いた。


バァンッ!!!


「……っ!?」


隆太は飛び起きた。心臓が跳ね上がる。

このアパートのドアは鍵をかけていたはずだ。それが、今――開いている。


「おい、誰だ……?」


声が震える。廊下の奥から、荒い足音が響いてくる。

次の瞬間、ドアがバンッ!と勢いよく開かれた。


男がいた。

目が血走り、刃物を持っていた。

何も言わない。ただ、無言で、まっすぐにこちらを見ていた。


「は……? 何で……」


ヤバい。


その瞬間、刃が振り下ろされた。


ヤバい。


熱い。喉元に灼けるような痛みが走る。

声が出ない。血が喉を満たし、視界がぐにゃりと歪んだ。


ヤバい。


「っ……か、は……」


倒れた身体の上から、なおも何度も刺される。

世界が、真っ赤に染まっていく。


(……え……俺……なんで……)


(走馬灯って、ないんだなぁ笑笑)


(あぁ、俺、課題やってねぇや、やらないと、、、)



続く。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ