94.
ぽんぽこさんは、仲間に入るか迷っている様子だ。
まとまって動いていたほうがいいとは思う。
けれど、それはあくまで私たちの意見だ。
ぽんぽこさんには、何か思うところがあるのかもしれない。
「ぽんぽこしゃんって……そういえば、本名はなんていうんでしゅ?」
そういえば、ぽんぽこさんは冒険者ネームであって、本名ではないのだ。
彼女は懐から新しいフリップを取り出し、キュキュキュッとペンを走らせた。
【みさやま ぽんぽこぅ】
「みさやま……ぽんぽこぅ?」
明らかな偽名だった。
仲間にならないことといい、結構警戒心が強いのかな。
ぽんぽこさんは無表情のまま、次のフリップをめくる。
【上松 ぽんぽこぅ】
「えっと……どっちが本名なんでしゅ?」
フリップに、ぽんぽこさんが文字をかきかき。
【どっちもありえる。それだけだ】
は、はぁ。
それにしても、ぽんぽこさん、やっぱり私たちに対して心を開いていない。
それはそうだ。
昨日今日会ったばかりなんだから。
『つまり上松さんってことですかぁ? ぽんぽこさんは』
愛美さんが尋ねる。
【神絵師と神作家の娘】
うーん、意味は不明だ。
何かの設定だろうか。
【ぽんぽこ的には、このまま気ままな一人旅をしたいかなって】
「そーでしゅか……無理強いはしましぇん」
うん、そうだよね。
一人で居たいっていうなら、その意思は尊重するべきだと思う。
それに、私たちと行動したほうがいいっていうのは、やっぱり私たちの都合の話でしかないからね。
【え!?】
ぽんぽこさんが、ガタッと音を立てて硬直した。
え? ってなに、えって。
シュババババババババッ!
ものすごい速度で、ぽんぽこさんがペンを走らせる。
あまりの勢いに、ペン先から煙が出そうだ。
ダンッ! とフリップが突きつけられる。
【もっと駆け引きしようよっ。なんでそこで引き下がっちゃうのさー!】
「えー……だって自分で言ったんじゃあないでしゅか。一人で居たいって」
【それはあれだよ、あるでしょ? マンガで、仲間が新しく加入するときに、一度は断るでしょ? 事情があって、ドラマがあって、それらを突破して、仲間になるもんでしょ? おきまりでしょう!?】
わー。
フリップに、米粒のような文字がびっしりと書かれている。
えっと、つまりどういうことなんだろう。
めんどくさい手順を踏みたいってこと?
「仲間になる気はあるってことなんでしゅ?」
【どっちもありえる、それだけだ】
さっき書いたフリップを、また出してきたぽんぽこさん。
ドヤ顔(無表情だけど雰囲気でわかる)だ。
もう何ナノこの人……タヌキだけど。
【お知らせ】
※1/12(月)
好評につき、連載版、投稿しました!
『【連載版】辺境の【魔法杖職人】が、自分の作る杖は世界最高だと気付くまで ~「魔力ゼロ、愛想もない」と婚約破棄された私が、帝都でひっそり店を開いたら、いつの間にか国中の英雄が並ぶ行列店になっていました~』
https://ncode.syosetu.com/n9623lp/
広告下↓のリンクから飛べます。




