91.
聖女(疑惑)のぽんぽこさんを、発見。
しかしなんか私たちにびっくりして、白目を剥いて仮死状態になってしまった。
仮死状態、っていったけど、要は気絶してるだけらしい。狸寝入りってやつ? 大げさな……。
ほっとくわけにもいかなかったので、私はぽんぽこさんを抱っこして、拠点としてるお城へとやってきたのだった。
ちなみに、抱き心地は最高だった。もっふもふで、温かい。
「それが……聖女様なんですの?」
お世話になっている、ネログーマ王女、シュナウザーさんがテーブルの上のぽんぽこさんを凝視している。
「ひゃうんひゃんっ」
ネログーマの神獣、フェンリルのヨルも、ふんふんと鼻を鳴らし、ぽんぽこさんの匂いを嗅いでる。
「ひゃん!」
『【おんなのにおい!】ですって』
愛美さんが、ヨルの言葉を翻訳する。
いや女の子なのはわかっていたけども。
運んだ時の感触でね。どことは言わないけども、狸にしては豊かな膨らみがあったからね。
「どうしましょうか」
「どうしようか」
『どーします?』
『……ほっとくわけには』
聖女パーティ、みな首をかしげる。
目の前には、腹を出して大の字で寝ている狸が一匹。シュールだ。
「そもそもどういう存在なんですの?」
とシュナウザー王女が尋ねてくる。
「狸に化けた人なのか、狸に転生した人なのか、狸と思わせて実は神獣なのか。いったいどれなのでしょうか?」
シュナウザー王女の言うとおりだ。いったい、どのパターンなんだろう。
できれば、狸に化けた召喚者、だといいんだけど。
「…………」むくっ。
「あ。起きましたね。良かったです」
ぽんぽこさんは上半身を起こすと、つぶらな瞳でじっと私を見つめる。
きゅきゅきゅっ。
シュパッ!
【助けてくれて、蟻×10】
「……フリップ?」
そう、ぽんぽこさん、いつの間にか、どこからか、フリップを取り出したのだ。テレビ番組とかで、ADさんが指示出しに使うアレだ。
どこから出したの? 四次元ポケット的なサムシング?
そこには、リアルな蟻の絵と、×10という文字が描いてある。
「ん? なんて書いてあるんだい、コネコちゃん……?」
異世界人(現地人)である、アメリアさんが首をかしげる。
「もしかして……シュナウザーしゃんも、読めないです?」
「ええ、なんですかこれ……? 蟻が増殖していますわ……」
愛美さんと貞子さんと、顔を見合わせる。
『これ「ありがとー(蟻が10)」って意味ですね! どやぁ……!』
『……いえ、突っ込むべきはそこじゃあないかと』
貞子さんの言ってるとおりだ。
このぽんぽこさんは、フリップに、私たち……つまり日本語で文字を書いてる。
「てゆーことは……やっぱり召喚聖女が、狸の姿をしてるだけ……?」
ぽんぽこさんは、私をじっと見つめる。
スッ……と短く愛らしい両腕をあげる。
そして。
頭の上で、大きな輪っかを作った。
「これ……どういう意味でしょう……」
『○(正解)って意味じゃあないですかぁ……?』
愛美さんがそう言うと、ぽんぽこさんはフリップをめくり、キュッキュとペンを走らせる。
【たぬきじゃない?】
「「「いや、ほんとのたぬきは、自分のことたぬきって言わないから!」」」
私たちの総ツッコミが、城の広間に響き渡った。
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