103.
ましろたんによる制裁が終わり、マスコットの絶対的ヒエラルキーが確立された。
ぽんぽこは土下座の姿勢のまま、涙声でこちらを見上げてくる。
「で、でもさぁ。君たちはなんで旅をしてるのかね? 何かデカい旅の目的でもあるのかね?」
「まあ、特にないでしゅ。強いて言えば、ゲータ・ニィガから逃げたいと思ってこっちに来てるくらいで」
「えっ。あの国、まだ滅びてなかったのん?」
ぽんぽこの口から出た予想外の言葉に、私は思わず首を傾げた。
「どういうことでしゅか?」
「あの国って、歴史上何度も崩壊と再生を繰り返してる、いわばゴキブリ国なんすわ」
ぽんぽこが短い腕を組み、さも当然といった顔で頷く。
ゴキブリ国という身も蓋もない表現に、私は頬を引きつらせた。
「神聖なる存在を傷つければ、滅びは必定。あそこは昔からそういう呪われた土地なんだよ」
「そういうもんなんでしゅか」
神聖なる存在、という言葉に少しだけ心当たりがないでもない。
今頃あの国がどうなっているのか、ほんの少しだけ気にはなる。
だが、わざわざ戻って確かめるつもりなど毛頭なかった。
「なるほど、旅の目的もないと。不遇職鑑定士のように、精霊の姉妹を探す壮大な使命があるわけではないと」
「なんでしゅかそれ」
「なにぃっ。不遇職【鑑定士】が実は最強だった、略して『ふぐ鑑』をご存じないっ!?」
ぽんぽこが急に立ち上がり、画面の向こうの読者にアピールするかのようにビシッとポーズを決める。
「それはいかんねきみぃ。今は各種アニメ配信サイトで絶賛配信中だぞっ! みんな要チェケラっ!」
なんだこいつ、急に露骨な宣伝を始めやがった。
私が呆気にとられていると、肩の上から不機嫌そうな声が降ってきた。
「……ふにゃう」
「あっ、ましろたん。怒っちゃだめでしゅよ、こんな狸の戯言に」
ましろが再び爪を立てようとするのを、私は慌てて撫でてなだめる。
すると、後ろから呆れ果てたようなため息が聞こえてきた。
「『めんどくせっ』いや、まあ、わかりますけどぉ」
同行者の愛美が、乾いた笑いを浮かべながら呟いた。
宣伝狸に気まぐれな猫神、そして目的のない旅。
私たちの道中は、まだまだ前途多難な予感しかしないのだった。
【おしらせ】
※2/20(金)
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