01.社畜OL、猫と転生する
↓短編版の連載版となります。
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短編の続きは、4話からになります!
私の名前は、黒姫 寧子。
寧子、と書いて【やすこ】と読む。
でも小さい頃から【ねこ】と読まれ、それをからかわれるのが凄く嫌だった。
年齢は、今年で28歳。地方国立大学を22で卒業する。
片親だったので、学費の安い国立大にしかいけなかった。また、母は在学中に他界してしまい、学費を稼ぐために、私は毎日のようにアルバイトをしていた。
カレシなんてできたためしは一度も無い。
また、就活も失敗してしまった。勉強と、アルバイトしかしてこなかったのだ。
見てくれも特に良いわけではない私を、雇ってくれる企業はどこもなかった。
生活のため、奨学金を借りることになっていた私は、卒業後直ぐに金を稼ぐ必要があった。
だから……私は仕方なく、ブラック企業に就職する羽目となった。
毎日残業。働いても働いても、金は貯まらない。
周りは、どんどん結婚する。家庭を築きあげ、子供を産み、幸せに暮らしてるなか、私はあくせくブラック企業で働いていた。
……私の唯一の癒やしは、地域猫として飼ってる、白猫の【ましろ】ちゃんだ。
ましろちゃんを見つけたのは去年。
ゴミ捨て場に、ミカン箱が放置してあった。
1匹だけ取り残された子猫。どうやら他の猫は拾われていったらしい。
不憫に思ったものの、私は……猫アレルギーだった。
家に猫を置くことができないので、地域の人と、餌やりボランティアさんと協力し、ましろちゃんを地域猫として世話することにした。
猫アレルギーがあるせいで、ましろちゃんとは長く接することができなかった。
でも、毎日のご飯やトイレのお世話をちゃんとした。
くしゃみと鼻水がでても、それでもなお……私はましろちゃんを可愛がった。
両親がおらず、彼氏もいない。
奨学金を返すためだけに働いてる私にとって、ましろちゃんとの交流は唯一の心の癒やしだったのだ……。
そして、ある日。
私はましろちゃんがいつもの公園にいないことに気づく。
「ましろちゃん……?」
私は周囲を探し回り、ましろちゃんをついに発見。
「!? 危ない……! トラックが……!」
ましろちゃんは道路に飛び出たのだ。
私は……とっさに体が動いた。
ましろちゃんを抱きしめて、そして……。
ぐしゃりっ。
……。
…………。
………………。
『こんにちはー!』
私が目を覚ますと、そこは……冷たく硬い床の上だった。
体を起こす。あれ……ここは……?
「! ましろちゃんっ!」
私の目の前に、白猫が一匹居た。
直ぐに、この子がましろちゃんだとわかった。
彼女をぎゅっと抱きしめる、私。
……温かい。生きてる。良かった。
『あのー、もしもーし?』
……頭上に誰かがいる。
翼を生やした、小柄な女性だ。それが……う、浮いてる……?
「これは……夢……?」
そうだ。夢にちがいない。だって、私、ましろちゃんを助けようとして、トラックにひかれて……それで……死んだはず。
『残念ですが現実でーす。受け入れてくださーい』
「……そんな」
とつぶやいたものの、別に……現世に未練なんてなかった。
両親も死んじゃったし、ブラック企業勤めだし。将来の展望も、明るくなかったし……。
ああ、心残りといえば、奨学金を払い終えてなかったな。
借りたもの返せなかったのは、心残りと言えば心残り……。
『死んで気にすることが奨学金返済なんて、変わったひとですねーあなた』
ぷかぷか浮きながら、翼の生やした女性は、どこからか取り出したポテチを食べ出す。
「あの……そもそも貴女は一体?」
『わたしは……神……! と言っても、下級神。最高神のぱしりだけどねー』
神……。
神……なんて存在するんだ。
まあ、浮いてるし、人間じゃあないかなって思ったけど。
でも神が、どうして私の前に。
『さる、おえらーい御方から、あなたが不憫だから、転生させておくれって頼まれたのです』
「転生……?」
『そ。転生。異世界にいってチートで無双! みたいな。そういうやつ』
「……はぁ」
『あれ? テンション低いな? オタクならここでキター! とか。チート能力を所望します! とか。そういうリアクションがあってしかるべきじゃあない?』
「……それ、フィクションでは、ですよね」
私も無料で読める、漫画アプリで、異世界系のお話をいくつか読んだことある。
最近はそういう無料で読める系の漫画が増えてるので助かる。
異世界にいって、魔法で無双。
チートスキルで無双。
偉い男の人に溺愛される……等。
「ああいうのって、作り話じゃないですか」
『そーね。でも! これは現実! 君はこれから異世界にいってもらいます!』
「……なんで? 転生させてくれるんじゃあなかったの?」
元の世界に。
『元の世界の、黒姫 寧子さんの体は、トラックにひかれて、ぐっちゃぐちゃにされてしまったんで。生き返すことは不可能なんですわ』
「そんな……。ま、ましろちゃんも?」
『んえ? あー……そうね。たぶん』
たぶんって……。
適当だな、この神……。
うちの部署にも、こういう顔とノリだけいい、仕事を適当にしかこなさない女いたっけ。
『しっけーな! このわたしは正真正銘の女神! 最高神さまから力を与えられ、異世界に人間を送り込む仕事を任されたね!』
「はあ……。じゃあ、私は、異世界にこれから送り込まれるってことなんですね」
『そーそー。で、さるおえらい方からの依頼で、なにか欲しいものがあれば、与えてあげてって言われてるんだっ。ねえねえ、何が欲しい?』
「急に言われても……」
『異世界でしたいこととか、やりたいこととかない? そこから逆算して、欲しい能力とか、武器とかをあげるよ!』
……したいこと、やりたいこと……か。
……何も思いつかないや。
幼い頃から勉強。
大学生になったらバイト。
社会人になったら仕事……と。
遊びらしいこと、何一つしてこなかったし。
したいことも、やりたいことも……。
「みー……」
ましろちゃんが、私の足に頬ずりしてきた。 ……ああ、したいこと、やりたいこと……あったな。
私はましろちゃんを抱き上げる。
「この子と、一緒に居たい」
『うぇ!? その御方と!?』
御方……?
「別に、能力とか武器とかは、いい。私は……この子と一緒に過ごしたい」
今まで、仕事があって、ましろちゃんとは限られた時間でしか過ごせなかった。
ここに、ましろちゃんがいるってことは、この子もまた、私と同じく死んでしまったということ。
「私、この猫と、一緒に異世界に行きたい」
『えー……まじっかー……。やっべ、完全に予想外……。ええー……どうしたらいいっすか~?』
誰に聞いてるんだろう。
みぃ、とましろちゃんが鳴いた。
『んー、おっけー! じゃあ、黒姫 寧子さんには、その御猫さまをプレゼント!』
良かった。ましろちゃんも、死なずにすんだね。良かったね。
『ついでに、健康なお体もセットでつけちゃうね。君、猫アレルギーなんでしょ?』
「!? 健康な体なんて……もらえるの?」
『うん! だって望みは猫ちゃんと過ごすことなんでしょー?』
「……ありがとう」
『いいっていって。他にも基本的に必要なものを全部のっけとくね。異世界言語スキルとか。諸々』
……私は気になった。
なんで、この女神は、私にここまで色々してくれるのだろうか。
『さるお偉いおかたから、頼まれたからね』
「お偉い御方……ね。その人に、お礼を言っておいてもらえる?」
『え? ああ……うん。まあ、人じゃあないけどね』
そっか。神か。だから、人じゃあないと。
『よし! 調整完了! これより、黒姫 寧子を、猫とともに、異世界に転送しまーす!』
私とましろちゃんの体が光り輝く。
本当に、異世界に行けるのかわからない。今私は夢を見ているだけなのかもしれない。
……でも、ましろちゃんの温かい体を、ぎゅっと抱きしめると、不安が少し和らいだ。
この子と一緒に、異世界にいけるのなら……少し、わくわくするかもしれない。
『んじゃ、いってらっしゃい! 黒姫 寧子さん! それと……バステトさま!』
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