既視感っ
ダダン達が「ヘルスキノコの採集」に行く前の話
、ザートというインテリ眼鏡の少年はリーベル都の金貨をじっくりと観察しながら、なにやらそれについて考えていた。
(質屋の話によると、この金貨は"リーベル都"という場所で作られたものらしい………。しかもその都市は既に滅びている………。ならば地下墓のあの金貨の山は?あの山の中には王冠らしき物もあった………。
完全な憶測だが、あれらは滅んだ都に盗みに入った者が、地下墓に隠したものではないか?そうなるとそこに隠したものが、もし幻覚や催眠に関連する魔法を持ってた場合、僕とダダンが見たあの眼球の魔物の正体は幻覚だと合点がいく。
魔法持ちの盗賊…………もし正体を暴き、捕らえたとしたら………その手柄で僕はSランクにいけるかもしれない……!SランクになるにはAランクに到達するかつ何かしら特別な手柄を立てなければならないッ! ………ついに僕にもチャンスが来たのではないか?
ここはもうリーベル都に行くしかない!!そこには何かある気がする。
ダダン、あいつも連れていこう、彼のネズミ偵察は役に立つ。彼は僕のケツにミミズを入れる最低なブラフをしたんだ。これくらい巻き込んでもいいだろう)
現在に戻るー
城内の舞踏会とか行われてそうな広く豪華なホールで、ダダン、ザート、イスト、ゴブ子の四人はいくつものつららが突き刺さった目玉の魔物と相対している。
ダダン「俺に考えがある、四人全員バラバラに走って違うところから攻撃するんだ。あいつは一方向一回ずつしか攻撃出来ないからこれで完璧だ!」
ザート「いや、それだけでは不十分だ」
ダダン「は?」
ザート「あの刺さっているつららを見ろ。既にその方法を試した跡だ」
ダダンは何が言いたいんだと言わんばかりの顔をしている。
ザート「あれだけ刺さっても全く怯んでいないし、出血らしきものも見れない。恐らくだが、あいつを倒すには頭、首、あるか分からないが心臓といった弱点を潰さなければならない」
ダダン「目だな目」
ザート「目?」
ダダン「さっき同じ感じの敵いたんだけどよ、目玉潰したら倒せたんだ。しかもほら、見るからに弱点だろあれ」
イスト「いやでもさっきのは体が違かったし決めつけるのはー……
イストの話を遮ってザートが言った。
ザート「目玉か……なら僕に魔物に突き刺さったつららを触れさせてくれ。直接触れれば僕の魔法で目玉を内側から破壊できる」
ダダン「じゃあ俺ら三人で気ぃ引くから、隙狙って魔物に近づけ」
「すまないがそれは無理だ」
「は?なんで」
ザート「怪我であまり移動できない。腹に穴が空いたからな」
イスト「僕も走り回るのは無理かな。ほら、脚の震えが止まらないぃ」
ダダン「・・・・・・ゴブ子、コイツらしょって魔物の周り走り回れ」
ゴブ子「ゴォ」
返事と同時にゴブ子はイストとザートの二人を背負った。
ザート「ホブゴブリンに乗って攻撃か、いい考えだ。これなら魔物の攻撃を避けながら僕たちは攻撃に専念できる」
イスト「やだ!怖い!」
ダダン(俺が頑張ってあいつの気を引くしかないか)
彼は「はあ」と大きくため息をついた。
ダダン「はあ……よし、行くぞ!!」
ゴブ子とダダンは魔物の周囲を逆向きに走り出した。
イスト「速!やば!こわ!」
ザート「イスト!辺りの物を魔物に飛ばせ!」
イスト「う、うん!」
近くにあった置物や机といった家具を浮かせて、魔物に放った。
ビュン ビュン
ザート「いいぞ!そのまま続けろ!」
一方ザートの方は、先ほど壁に張ってあった氷を再利用して、そこからつららを飛ばした。
しかし、それらは魔物にことごとく防がれてしまう。
ダダン(さっきのコカトリスの戦いで、小さいゴブリンの方はもう5人しか残ってねえ。コイツらでうまいことやるしかねぇな)
「ゴブリンども!!出てこい!あいつを矢で狙え!!」
すると五体のゴブリン達がどこからか現れ、吹き矢で応戦した。
飛ばされた矢は魔物に突き刺さるが、しかし小さい矢はたいしたダメージになっていないことが分かる。魔物はザート達に集中したきり、それには見向きもしない。
ダダン「つっかえねぇなあ!!ゴブ美!ゴブ男!お前らはどうだ!?」
二体のホブゴブリン達が突然その場に現れ、こん棒片手に魔物に突っ込んでいった。
ゴブ美&ゴブ男「グオオオオ!!」
ザート「あいついったいどこからか出してるんだ!?」
ホブゴブリン達に気づいた魔物は、謎の衝撃波を放って、二体を向こうの壁へと吹き飛ばした。
ドゴォン[壁に吹き飛ばされた音]
ザート「チャンスだ!狙いがあっちに向いた!」
ザート達は攻撃の勢いを増した。そしてついに魔物に攻撃が当たり、怯んだ。
ドォン!!
ザート「ホブゴブリン!魔物に近づけ!!」
ゴブ子はザートの発した命令に従い、魔物の懐まで近づいた。
イスト「まってまって!?やだ!魔物が近くに!」
ゴブ子の背中に乗っているザートは、タンッと魔物に向かって飛び下りた。
ザート(刺さった氷に触れて、こいつの目の頭を内側から潰す!)「いける!!」
ついに魔物を倒すことができる、一矢報いることができる。そう思ったとき、
「は?」
魔物の周囲に見えない力が張ってあり、ザートの手が突き刺さった氷に触れることはできなかった。
そして、その場で固まっているザートに突風のように謎の力が働き、向こう側の壁まで吹き飛ばされた。
ブォン!!
「クッ!」
ドガ![壁にぶつかった音]
ダダン「おい!大丈夫か!?」
魔物の眼球の頭が震えた。それはだんだんと激しさを増していった。
何か来る、まずい、そう思ったとき、魔物の眼球から、見えない力がまっすぐ飛び出した。
ダダン「やばい!ふせろ!!」
魔物は首を回し、ぐるりと直線上に攻撃した。
ダダン達はなんとかしゃがみ、それをよけたが、壁は全方位消し飛ばされまるで、だるま落としのようになってしまった。
ダダン「やばい、やばい!建物落ちてくるって!」
ザート「…ッ!」
イスト「イヤア"ア"ア"アア!!」
削り取られた壁から上が落ちてくる。
ゴドォン!!
衝撃で床がまるごと抜け落ち、一階まできれいに落下してしまった。
ドォン!!
ダダン「ガァ!!」
魔物はすかさず怯んだ彼らに攻撃を放とうとしている。
イスト「助けてぇ!!」
ザート「……ッ、腹の傷が……動けない」
ダダン「おい!よけろ!」
魔物は彼らの方を向き、眼球を震わせている。
すると、その時、ゴブ美が瓦礫の中から飛び出して魔物に突っ込んでいった。
ゴブ美「グオオオオ!!」
ダダン「ゴブ美!?」
ゴブ美は魔物の攻撃を受けながらも掴みかかり、渾身の力でねじ伏せようとしている。すると、
ドゴォン!
誰かが崩れた壁に穴を空けて入ってきた。
その衝撃で吹き飛んだ壁の破片がゴブ美に綺麗に直撃して向こう側まで飛ばされた。
ダダン「ゴブ美~~!!!よくも!誰だお前!」
砂ぼこりが落ち着いて、壁に穴を開けた本人のシルエットが見えてきた。
それは人間の女性で、砂ぼこりが消えてはっきり見えた。その正体はまさかのミリーであった。
ミリー「ザートさあぁん!!」
ザート「ミリー……?助けに来てくれたのか!」
ピンチの彼らを助けに来たミリー、この状況どこかで見た気がする。
ザート(いや、まて、なんだこの既視感ッ)