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7/13

感動の再会らしい




 およそ一週間前、白髪の少年のイストは危険度の小さい「ヘルスキノコの採集」の依頼を受けて、既に廃墟とかしたリーベル都の近くに来ていた。


 イスト「ヘルスキノコはたしか緑の蛍光色のキノコだったよね、あったら目立つはずだけどここら辺には無いのかなぁ」


ふと都の城壁に目を配った。

そこには地面と城壁が接している端のところに蛍光色に光るキノコが所々にあった。


 イスト「あんなところに」


キノコを目指して進んでいった。

城壁の前に着いた彼は大きな袋を取り出し、キノコをその中に集めていった。

見える限りのキノコを袋に詰めきり、いざ帰ろうとしたその時、城門の方から声が聞こえた。


 盗賊1「ここだな、リーベル都っていうのは」


 盗賊2「あぁ、どうやらここの城にはまだ荒らされていない場所があるらしい」


 盗賊1「不確かな情報だがな、魔物が住み着いて通れなくなっているところもあるだろうし、かなり可能性はある」

 

今まさに、二人組の盗賊が都に入ろうとしていた。


 イスト(と、盗賊!?………まだ荒らされていない場所がある?………既に金目の物は取り尽くされたんじゃないのか?)


謎の好奇心に駆られ、キノコが入った袋を背負ったまま、彼らの後を追うことにした。

盗賊達が都内に入った後、あちらからは気づかれないように距離を取りつつ尾行していく。


 イスト(・・・)


建物の裏に息を潜めつつ、彼らの動向を伺った。

しばらく尾行していくと、何事もなく城の前にたどり着いた。

盗賊達は城の中に入って、イストから見えなくなってしまった。

彼らを追ってイストも入ることにした。


 イスト(……)


 ギィ 城の入口の扉がきしむ。

恐る恐る開くと、中は暗闇で包まれていた。そしてその奥の方にもう一つ扉がある。きっと盗賊達はあの奥にいるのだろうと考えた。

そのドアにゆっくり、慎重に近づき、物音をたてないようにドアノブに触れた。

すると


  バンッ!(扉が開く音)


いきなり開き、イストを扉の裏に突き飛ばした。


 イスト「イタッ!?」


扉からは先ほどの盗賊の一人が走って出ていこうとしていたのが見えた。


 盗賊1「い、嫌だ!助けて!た、助けてえ!!」


彼の顔には血しぶきがかかっていた。


 イスト(…ッ!!??)


イストは慌てて口を塞ぎ、音を出さないようにした。

盗賊はだんだん城から遠ざかっていた、もう少しで都から出れる。しかし、扉から痩せ細った灰色の腕だけ出てきて、手を走り去る盗賊の方に向けると。


   ブァン!


盗賊の胴体、頭が消し飛ばされてしまった。

そして繋ぎを絶たれた四肢は勢いを保って、そのまま転がった。脚の一つが城門に転がったのは見えた。


 イスト「ッ!?!?」


イストは恐怖を覚えた。この灰色の腕の主に気づかれては絶対死ぬと。震える手で口を塞ぎ、体を固くし、物音をたてないようにした。


 イスト(何なんだよ!!あれ!魔法使い!?いや魔物!?ヤバい!!見つかったら、殺されるッ!?)


額から汗が吹き出る、恐怖と緊張で走り出してしまいそうだ。


すると魔物は扉から少しだけ体を出した。

その姿は頭部が大きな眼球、痩せ細ったヒト型の体、イストにとって初めて見る謎の魔物だった。


 イスト(なんだ?こ、この、魔物……)


その後魔物は向こうにある盗賊の死体を見つめて、扉の奥に消えていった。

イストの緊張が解けて、彼はすぐさま城から出ようとした。


 イスト(に、逃げなきゃ、来るんじゃなかった!)


とっさに立ち上がり、城の入口に走った。

入口の扉は盗賊が逃げる際に開いた状態のままだ。

その扉の前に立ったとき、

さっきまでいなかったはずの大量のコカトリスが城の外に現れていた。


 イスト(ッイ!?)


焦って扉を力強く閉めた。

 

  バンッ!!


彼は扉の前でしゃがみこんで、頭を抱える。


 イスト(コ、コカトリス!?しかもあんなに!?嘘だろ?ここままじゃ出れない、や、やばい………

そ、そうだ助けを待とう。きっとギルドが探してくれるはず………。うん、そうしよう………携帯の水も食料もあるし………キノコだけど………そうしよう……きっと大丈夫……………うん……………)



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 イスト「ということで、今僕はここに残されてる」


 ダダン「なるほど!」


場面が変わり、ダダンとイストが蜘蛛のような目玉の魔物を倒した後、彼らは魔物の死骸の前で話し合っている。


 イスト「で、これからどうするの?」


 ダダン「やっぱ進むしかねぇっしょ、その話がホントならまだ金になるもんは城の中に残ってるってゆうことだしな!」


 イスト「聞いてた?まだこんな化物が城の中にいるんだよ?危ないよ!逃げようよ」


 ダダン「この程度のやつだろ?二人なら余裕だって。その言ってた盗賊?魔法持ってないから負けたんじゃねーか?」


 イスト「そうだとしても~」



  ドォン!!(爆発音)


 ダダン&イスト「!?」


突然爆音が城の中に響いた。

パラパラと天井からチリが落ちてくる。


 ダダン「今の………」


 イスト「ねぇ!やっぱり帰ろう!君は僕を助けに来てくれたんじゃないの!?」


 ダダン(この城に入る前、ザートが屋根伝って城に入るのを見た………。やばくね?)

 「おい!上行くぞ!!」


 イスト「はぁ!?何で!?」


ダダンはところ構わず上に行く階段を見つけ出し、駆け上がっていった。


 イスト「……ッおい!待って!!」


彼はそう叫ぶと、ダダンの後を追う。



 場面が変わり、ザートは城のまさに舞踏会などが行われていただろう豪華で広い部屋で、ヒト型の目玉の魔物と対峙していた。


 ザート(…ッなんでこんなところに……地下墓のあれは催眠ではなかったのか………いや、まだ分からない……これも幻覚かもー


魔物は手をザートに向ける。


 ザート(まずッー!


   ドォン!!


とっさに攻撃を避けた。

それは先ほどザートの体があった場所の壁を大きく破裂させた。

そして飛び散った瓦礫が彼の頬に触れて、そこから少しだけ出血した。

彼は破片で切った頬を押さえてこれが現実だと確信する。


 ザート(頬が痛い………これは幻覚ではない………ここは逃げ…………いや、倒す、ここでこいつをやってやる!……必ず手柄をあげてやる)

 

魔物は再び手をザートに向けた


 ザート(来るッ)

    「アイスウォール!!」


  ガキン  ガキン ガキン!


巨大な氷の塊を自分と魔物の間に連続して作り出した。

そして魔物の攻撃が来る。


  ッドギャギャギャアン!


それはザートに届くことはなかったが、氷の分厚い壁の大半を貫き、氷の塊は自ずと溶けて消えてしまった。


 ザート「ッ……相変わらずなんて威力なんだ……このまま防御してもこっちの魔力が間に合わない…」


またしても魔物は手を構える。


 ザート「…ッ!いつまでも攻撃するんじゃない!"アイススピア"!!」


ザートの背後にいくつものつららが作り出され、魔物めがけてシュっと飛んでいく。

しかし魔物に当たる前に見えない壁のような何かで防がれてしまった。


 ザート「クソっ……ならば!」


すると彼は壁沿いに、魔物を中心に今の自分と逆の位置まで走った。


魔物は相変わらずザートに手を向けている。


 ザート「アイススピア!!」


すると今の彼の背後と、先ほどまでいた場所の壁からつららが現れ、魔物に放たれた。

 

 ザート(背後と正面の二方向からの攻撃!僕はさっきいた場所から攻撃できるように氷を張ってマーキングしておいたのさ)


   シュ シュ


魔物は正面からのつららには先ほどと同じく対処できたが、後ろからの攻撃は防ぎきれずに受けてしまう。

しかしダメージは浅い傷程度だ。


 ザート(なるほど……今のでいくつか分かったことがある。まず一つ目、やつは攻撃をする際必ず向き、対象に手を向けなければならない。二つ目はその攻撃は一度に一回しか出来ない!

つまり!やつを倒すには、二方向から攻撃しなければならない!)


思わずにやけた口を手で隠した。


 ザート(余裕だ……いける!こいつは、僕が倒す!)


再び彼は魔物を中心にして回るように壁沿いに走った。彼が通った壁には薄い氷が張られている。


 ザート(アイススピア!)


魔物を囲む壁からいくつものつららが発射された。


   シュババババババ!!


その影響で魔物の周囲は煙が立って見えなくなる。


 ザート(ははは!いける……僕がこいつをッ


   ドッ


 ザート「………は?」


突然の衝撃、彼の腹部につららが突き刺さっていた。傷口はじんわりと暖かくなり、痛みが遅れてやってくる。

 

 ザート「…グッ……あいつ……」


膝から崩れ落ち、血がつららを伝ってポタポタとこぼれ落ちる。

煙が消えて魔物の姿が見える。

その姿は身体中につららが突き刺さっていた。

 

 ザート「まさかあいつ……防御を捨てて攻撃してきたッ!?」


  ポタポタ


 ザート(出血を抑えなければ……)


ジュワ~と傷口が氷で塞がれる。


 ザート「………ッ」


魔物は腕をブランと落とし、ゆっくりと傷を負って動けないザートのもとに近づく。トドメを刺しに来てるようだ。


 ザート(………僕はこんなところで死ぬのか……クソッ………父さん………)


魔物は十分に近づくと、ザートの顔付近で手をかざした。


 ザート「…ッ」


もう攻撃が来る、ザートが覚悟したその瞬間。



  ドォン!!



ダダン&ゴブ子「グオオオオ!!」

  イスト「ギャアアアァァァァ!!」


なんと、壁を突き破って現れたダダン達が魔物を体当たりで突き飛ばした。

しかもダダンとイストはゴブ子の背中に乗っている。


 ザート「…ッ!!ダダン!」


 ダダン「大丈夫か!?」


 ザート「お前それ!なんでホブゴブリンが!?」


 ダダン「は?テイムだよ」


 ザート「君ネズミとミミズしかテイム出来ないって……まさかあんなしょうもない嘘ついたのか!?」


 ダダン「あーお前には言ってなかったな。覚醒ってやつだよ。まあ詳しくは後でな。まずはあいつだ……」


向こうの壁まで突き飛ばされは魔物は起き上がり、体制を整えた。


 ダダン「よし……行くー……

 

 ザート「えー!!?イ、イスト!?」


 イスト「ザ、ザート!!」


 ダダン「は?」


 ザート「本当にイストか!?」


 イスト「よかったぁ!!ザート!君も助けに来てくれたんだね!」


 ダダン「は?なに?今から戦うつもりだったのに」


 ザート「いや、こいつ実は、前に言った"行方不明のパーティーメンバー"なんだ!」


 ダダン「………え!?」


 イスト「よかったぁぁ~!!」


 ダダン「おいおい後付けか?やめとけよ」


 ザート「違う!まぁとにかく……助けてくれて感謝する。イスト、君との感動の再会はこいつを倒した

後だ」


 ダダン「そうだな……なんか感動の再会らしいからな」


 イスト「逃げないの?」


起き上がった魔物は戦う準備は出来ている。

今まさに、不気味な目玉の魔物はじっと彼らを見つめている。彼らの間に緊張が走った。



イスト・・・ザートのパーティーメンバー。気弱い白髪の少年。前まで行方不明だったらしい。偶然ダダン達がリーベル都に来ていたお陰で発見された。………後付けじゃないよ?


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