"元"パーティー
俺は時々夢を見る。
周りが炎のなか、誰かが俺を抱いて歩いている。
その夢では、俺は寝返りを覚えたばかりの赤ん坊で、抱えてるやつはぼやけててはっきり分からない。
まぁなんとなくその人は俺を捨てに行ってるのはわかる。もう死んだけど、育ての親のババアが「実はお前は捨てられていた」って言ってたし。
きっと当時の俺が親に捨てられるときに見た夜の街頭が炎に見えて、それが記憶に残って夢になったんだろうな。
ダダン君……
…おーいダダン君……
「おーい」
「あ、ボーとしてた」
ダダンは賢者ヴァルカンに呼び出されて、ギルドのヴァルカンの部屋まで来ていた。
「って用ってなんだ?」
「実は君に頼みがあってな、これは君にしか務まらない」
「はあ?」
一息ついて話を続けた。
「君に"弟子"になってもらいたい」
「はぁ!?」
「どうじゃ?ならんか弟子に」
「やだよ、そもそもなんで俺なんだよ。もっといるだろそういうやつ」
「寝床と1日三食ついてくるぞ?」
「寝床ってそれ拘束されるってことじゃねーか。てかやだよお前の弟子なんか」
ヴァルカンの隣にいるお手伝いさん的な人が「お前失礼だぞ」とダダンを睨んだ。
「っとにかくッ!俺は弟子になんかならねぇからな!」
「そうか」
「んじゃぁ俺もう行くぞ」
振り返って部屋から出ようとしたとき、
「別件でもう一つ頼みがある」
「なんだ?」
「この依頼に行ってほしいんじゃ」
そう言うと机の引き出しから一枚の書類を取り出し、ダダンに渡した。
「これは?」
「場所は東部にある貴族らのゴルフ場、内容は"発生した大サソリの巣の処理"じゃ。ワシの知人からの依頼でな、承ったパーティーの他に急遽もう一人必要になったとのことじゃ。これは知人として非常に助けてやりたい。だから行ってくれ」
「っだからなんで俺っ
「君の魔法はテイム魔法じゃろ?巣などの多数の魔物相手にはぴったりじゃないか。それに報酬はここに書いてあるものの2倍やろう」
「……2倍?まじで?」
「ワシのポケットマネーじゃ」
「うけます」
お手伝いさんが「現金なやつ」と呟いた。
「それじゃすぐ行くから、準備が終わったらギルド前にある馬車で待っといてくれ」
「はいはーい」
そう言って部屋を出た。ダダンの足音が聞こえなくなっとき、お手伝いさんがヴァルカンに言った。
「なぜまた弟子を?」
「お前には言ってなかったが、あの情報は秘匿での。賢者でも誰かに教えると処罰される。だが、跡継ぎとしてなら教えることができるんじゃ。まあそれが弟子ということなんじゃがの」
「そうなんですね。彼が覚醒者だからですか?」
「そうじゃな。それと万が一に備えて彼を育てておきたい」
「でも彼、ならないとおっしゃっていましたけど」
「そこでさっきの依頼じゃよ、そこで彼は既に依頼を受けた"Sランクのパーティー"と協力することになる。実は知人の依頼主に頼んで枠を一つ増やしてもらったんじゃ。きっとSランクの強さに刺激されて『強くなりたいっ!弟子にしてくれ!』って言ってくるじゃろう!」
「………そうですね……」
その後ダダンとヴァルカン(お手伝いさん付き)は約束通りギルド前の馬車に集合し、依頼の場所へと向かった。
馬車の中でヴァルカンは「同行するパーティーはSランクのようじゃ」と言っていたが、彼はいかに素早く終らせて報酬を受けとることしか頭になかった。
小一時間走らせた後、馬車が止まった。
「到着じゃ」
馬車を降りるとそこは噴水付きの白くて豪華な宮殿の隣にある広すぎるほどのゴルフ場だった。
「なんだここ!」
しましま模様の庭と大きな池、そしてその隣には、なんと、ダダンを"追放したパーティー"がいた。
「え、うそだろ。まさか一緒にやるって言うSランクパーティーって、」
続いて降りたヴァルカンが話した。
「そうじゃ、あれはかの有名な"鎖の魔術師バーイン"率いるパーティーじゃ」
「まじかよ……」
頭を抱えて考えた。「できればアイツらが気づく前にここからは離れたい」、一緒に依頼をやるとなったらとても面倒なことになるのは、彼にとって明らかだった。
「なぁ、おれやっぱ帰っていい?」
「は?」とお手伝いさんが反応した。
「なぜじゃ?」
「いや、これにはいろいろ
「おいおい!!まさか同行する"ヤツ"ってアイツじゃねぇだろうな!?」
ビクッ
気づかれてしまった。この声はあのリーダーだ、かつて一緒のパーティーだったバーインのものだ。
「クッソ、だる」
「おいおい!久しぶりだなぁ!ダダン!」
彼は誰よりも先にダダンに近づいて肩を組んだ。
「なんじゃ、知り合いなのか」
「あぁ賢者様、俺とこいつは"元パーティー"っていうやつですよ」
「そうか、ならよろしく頼んだぞ」
「おおい!なんで俺がこんなやつらと一緒にやらなくちゃいけねーんだ!」
抵抗するダダンを頭一つ背丈が高いバーインが肩を組んだ腕で抑えた。
「さ、行こうかダダン」
「やめろっ!」
彼はそのままパーティーの方に戻っていった。
「じゃぁワシらはあっちの方で待っとくか」
「館の方ですか」
お手伝いさんが尋ねた。
「ああ、あやつと会うのは久しぶりじゃ」
バーインがダダンをパーティーの元へ引っ張って連れてきた。
バーインのパーティーは全員で5人、自分がいたところには知らない若い男がいた。
「ちょっとー追加のメンバーってまさかそいつじゃないでしょーねー」
パーティーメンバーの女性が言い放った。
それを見かけた新しく入った若い男が
「あ、は、じめまして、僕はモニス……よろしく?」
バーインはダダンの背中を叩いて
「まぁいいじゃねぇか、こいつも少しは成長しているかも知れないだろ?」
女性はダダンとは目を合わせようとしない。
バーイン「ほらさっさと依頼終らせるぞ」
六人は「大サソリの巣」があると言われたゴルフ場の横の森へと入っていった。
その一部始終をヴァルカンたちは屋敷の側から見ていた。
ベランダのようなところでお手伝いさんを側においたヴァルカンとはげた老人がそれぞれ白い椅子に座ってお茶を飲んでいた。
はげた老人が話し出した。
「いきなりお前が"枠を一つ増やしてくれ"なんて言うから何かと思ったが……ありゃ弟子か?」
「そうなってほしーなーって感じじゃ」
「……?そうか。ところであやつら仲悪い感じだが大丈夫なのか?」
「まぁ……若さ特有のやつじゃよ……ほら、ワシらがまだ勇者してた頃の」
「本当に大丈夫なのか?」
森に進んだダダンたちの姿はもう既に見えなくなっていた。
バーイン・・・一話にてダダンを無能という理由で追放したパーティーのリーダー。
ダダンを追放した本人のはずだが、気さくに話しかけている。何か……ある?




