空笑い
謎解き系の短編小説です。
あなたが探偵です。物語の真相を推理してください。
作中の後書きに解説有。
雪のように肌が白く、太陽のように輝く笑顔を持つ彼女が、僕は好きだ。
ほら、またこうして笑顔を僕に向けている。
毎週金曜日の午後8時は、彼女がレギュラーを務める番組の時間だ。
僕は毎回忘れずに、必ず録画している。
そんな彼女が、隣の一軒家に引っ越してきた。
ここだけの話、全身日焼け対策で目立つ彼女は、挨拶も避けるほど恥ずかしがり屋だ。
ある日、庭の向日葵に水をあげていると、彼女の家から言い争う怒鳴り声が聞こえてきた。
ただの口喧嘩かと思っていたが、暗くなると急に心配になり、彼女の家に駆けつけた。
すると、彼女は笑顔を作りながら、2階の窓から外を眺めていた。
なるほど、今日は天の川が綺麗だ。
彼女に「昼は大丈夫でしたか」と声をかけてみる。
だが、当然のように無視された。
それでも、その瞬間、僕は彼女と心が繋がるのを感じた。
まるで、彦星と織姫が巡り会うかのように。
でも、僕が彦星だったら、織姫のことは離さないだろう。
きっと彦星は、僕ほどには相手のことを愛していないのだ。
ほら、彼女も僕と離れたくないのだろう。
夜が明けた今も、彼女は窓から照らされた笑顔を僕に向けている。
解説
向日葵が咲く時期は夏。
そんな日差しの強い時期に、日頃から日焼け対策を心がけている女優が、窓から外を眺めるだろうか。
本当は、彼女は彼を無視したのではなく、既に死んでいたから返事ができなかったのではないか。
怒鳴り声の相手が殺害し、隣人に怪しまれないように彼女の遺体に笑顔を作り、あたかも生きているかのよう見えやすい窓際に置いたのではないか。