表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ベルリオールの花嫁  作者:
終章
46/48

ep45 愛しき決闘者①

 

 剣技場にアーウェスが現れた瞬間、ひときわ大きな歓声が波打った。

 それを気にも留めず、アーウェスは中央を目指して足を進める。


 さて、と前方を見据えるが、対戦相手の姿はまだない。


 今年の、ここまで上りつめた挑戦者は、いったいどのような者か。

 多少は楽しませてくれるだろう、と白銀に輝く剣を抜く。


 再びあたりがざわめいたのは、決勝戦にのぼりつめた者が姿を現したからだ。

 脅えるわけでもなく、堂々とこちらに歩いてくる者が見える。


 銀の鎧を纏い、同じく銀の兜を被ったその相手は、まさに完全装備といった出で立ちであった。

 それ以上特に興味も湧かず、ただ相手が近づくのを待つ。


 その間に、観客席にアーウェスはさりげなく目をやった。

 王家の席には、国王と王妃のみ。あの姿はない。


 そんなことを思っていると、鎧を纏った者がすでに位置についていた。

 何の躊躇もなく、摩擦音とともに剣を抜く。


 威勢がずいぶんいいようだと、アーウェスは口の端をつり上げた。

 だが、アーウェスは己の相手にあまり興味がわかなかった。

 さっさと片をつけるか、とゆるりと剣をゆらす。


 開始の合図がなる。


 突然の攻撃を予想して、アーウェスはぎゅっと剣を固く握った。

 しかし、相手はアーウェスと対峙したままだった。


 今までの相手は、ここまで来たという高揚感と興奮にかられ、まっさきにアーウェスに攻撃をしかけてきていた。なので、いささかアーウェスは意外に感じていた。


「どうした。こないのか」


 あまりに動かない相手に、アーウェスは声をかけた。


「殿下に勝ったら、なんでも望みを言ってもいいというのは本当だろうか」


 兜の中から、こもった声が聞こえた。

 その響きにアーウェスは眉をひそめる。


 思いもよらず、返ってきたその声は高いものだったからだ。


 …女…?

 その疑問が頭に浮かんだその時、鎧の挑戦者がみずからの兜に手をかけ、そして、ゆっくりと持ち上げた。


 艶やかな金色の髪がこぼれて、風になびく。

 女だ、と周りから驚きの声があがった。


 女は兜を脱ぎ捨てると、意志の強そうなエメラルドの瞳でアーウェスを捉え、凛とした声で高らかに告げた。


「なら、私は望みをかけてあなたに決闘を申し込む。お相手願おう!」


「……」


 何をやってるんだ、こいつは。

 凄絶にわけがわからない。


 人生でこれほど驚いたことはない気がする、と思いながらも、ちらりと視線を上げる。

 そこにはこちらを見下ろす、微笑む国王がいた。


 なるほど。と、頭を抱えたくなりながら、目の前のよく知る挑戦者に視線を戻した。


「私が勝ったら、まずあなたに口づけする権利を望む。私は殿下の愛情が欲しいとは言わない。勝ったら、私の愛情を文句も言わせず、いつまでも受け取ってもらうから」


 …何を、言っている?

 珍しくひどく困惑しているアーウェスを楽しむように、エルオーシュは薔薇色の唇を歪め、ひどく美しく微笑んだ。


 こんな笑い方のできる女だったかと、その赤い唇に魅入りそうになった途端、素早い攻めが繰り出された。


 いつもならそれを(かわ)し、相手の懐へ入り反撃する。そんなことなどいとも簡単にできるアーウェスだったが、珍しくその攻撃をとっさに受け止め、防ぐことしかできなかった。


「どうしたんだ?本気でくればいい」


 何度もうち鳴る金属音に、ふいに響いた彼女の声。


 うるさい、とアーウェスは心の中だけで呟き、思わず舌打ちをした。


 ――私が勝ったら、まずあなたにくちづけする権利を望む。

 ――私の愛情を文句も言わせずいつまでも受け取ってもらうから



 そんなことを言われて、負けないわけにはいかないだろうが。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ