新たなはじまり
村雨丈一郎は、40歳バツイチ。サラリーマンで、中堅企業のコンサルタントだ。頭の回転が早く、コミュニケーション力も高い。幅広い知識をもつのだが、特筆すべき専門スキルはない。ただ、この浅すぎないが深くもない広い知識と、兄貴分な気質とバツイチ、子育て経験からくる多様性と面倒見の良さ、優しさから人には慕われ、マネジメント能力には秀でている。35歳で再婚して妻と娘と3人暮らししており、生活には満足していた。
丈一郎は普段通りの夜、自宅の書斎で仕事を終えた後、疲れた体をベッドに預けた。40歳にして経験豊富なコンサルタントとしての日々は充実していたが、心のどこかで新たな挑戦を求めている自分もいた。そんなある夜、彼は夢ではない現実のような奇妙な体験をする。
突如、彼の意識は別の場所へと引き抜かれる感覚に襲われた。
目の前に現れたのは、美しく威厳ある女神。彼女は優しく、しかし厳かに話し始める。「村雨丈一郎、あなたの知識と経験が必要な世界があります。私はその世界へとあなたを導く者です。」彼女は異世界での新たな人生を提案し、その選択が丈一郎にしかできない大きな影響を及ぼすことを伝えた。
丈一郎は混乱しながらも、女神の提案に興味を惹かれる。彼女はさらに、「あなたがこの任務を遂行するにあたり、"女神の叡知"という特別なスキルを授けます。これは、転生先の世界に関する知識を何でも教えてくれる脳内AIのようなものです。必要な情報をいつでも得られるようになります。」と説明した。
驚きとともに、丈一郎は自分の意志でこの提案を受け入れる。"女神の叡知"のスキルを授かり、村雨は新たな決意を固める。
しかし、彼は一つの疑問を抱えていた。「私の家族はどうなるのですか?」女神は優しく答える。「心配無用です。あなたの物理的な存在は現世に残り、あなたの意識のみが新しい世界へと旅立つのです。あなたが異世界にいる間も、あなたの体は現世で生活を続けます。」と説明し、彼の不安を和らげた。安堵した丈一郎は、女神の手を取り、新たな世界への旅立ちを決意する。
そして彼は、異世界への転送が始まる直前、心の中で家族への愛と、この新たな冒険への期待を感じながら、光の中へと消えていった。
現世の丈一郎は通常通りに生活を続けている。彼の体は深い眠りにつき、彼の意識が異世界に旅立っている間も、彼の日常生活には何の変わりもない。会社では引き続き彼の仕事が評価され、家族との幸せな時間も変わらずに続いている。
この瞬間、彼の人生は二つの世界をまたにかける壮大な冒険へと変わり始めたのだった。
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転生の瞬間、丈一郎はまばゆい光に包まれ、次に意識を取り戻したとき、彼は新しい世界で生まれたばかりの赤子となっていた。
目の前には、暖かな笑顔の女性がいた。彼女は優しく丈一郎を抱きしめ、"ママ"と呼ぶべき人物だと彼は直感した。部屋の隅には、彼を好奇心深く見つめる小さな女の子がいた。彼女は「姉」として彼の心に自然と位置づけられた。彼は新しい家族に迎えられたのだ。
彼は「ジョウ」と名付けられた。
家族は、愛情あふれる平凡な平民の家庭。父は村の木工師で、母は家事と畑仕事をこなす賢妻。そして、彼には姉と妹がいた。姉は彼より5歳年上で、既に村の学校で読み書きを学んでいる。
しかし、ジョウの意識は40歳の大人のまま。目の前に広がる世界の新鮮さと、自分の身体の小ささと無力さに戸惑いはありつつも、ジョウはすぐに状況を受け入れ、「女神の叡知」を使って、この世界について学び始める。
同時に、家族との日々の会話から、社会の構造や文化、そして魔法の存在についても理解を深めていく。
女神から授けられた知識をもとに、ジョウは自身が魔力を持っていることを確信し、魔法の訓練を秘密裏に始めることとした。
幼少期から、ジョウは魔力の基礎訓練をコツコツと積み重ねる。最初は簡単な魔法の光を手の平で作り出すことから始め、徐々にその力をコントロールし、様々な形に変えることができるようになった。家族には秘密にしていたが、ジョウの魔法の才能は日々成長し、15歳になる頃には、村で語られる伝説の魔法使いに匹敵するほどの力を持つようになるがそれはまだ先の話。
ジョウの日常は、家族との暖かな時間、魔法の秘密の訓練、そしてこの新しい世界への探求という三つの柱で成り立っていた。ジョウは、この未知の世界での生活を全うするため、そしていつか訪れるであろう大きな試練に備えて、日々を精一杯生きることを決意するのだった