表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/7

第4話 モンスター

「さて、のんびりした生活を送るには、貯金が必要だな」


 数日宿で身体を休めたところで、久々の外出を決意する。


 10年単位で働かずに済むとしても、もちろん老後まで貯金がもつわけではない。

 隠居生活を送るには、金が必要なのだ。


 まあ、働かずに生活するためには、頑張って働く必要があるというのが、辛いジレンマではあるのだがな。


「まずは森に行ってみるか」


 軽く荷物をまとめた俺は、近くの森へ向かうことにした。


――


――


「はぁはぁ、疲れた……」


 森へ着いた途端、俺の身体が悲鳴を上げる。

 役所勤めだった身としては、街の外へ出るだけでも既に辛かったが、既に日本で言えば、市町を跨ぐくらいの距離は歩いただろうか。


 この世界の冒険者などは、毎日これ以上の距離を歩いて依頼を受けていると考えると、少し恐ろしくなってくるな。


「少し休憩するか……」


 近くにあった切り株に座って、空を見上げる。


「そういえば、天界は相変わらずのデカさだな」


 俺の視線の先にあったのは、天界……もとい巨大な浮島だった。


 俺が小さな頃から島が空に浮かんでいたので、何も違和感なくそこにあったのだが、日本での前世を思い出した時から謎に思うようになった。


 今俺が暮らしているエルリアという世界は、大まかに四つに分類されている。

 人間が暮らしている人間界、魔族の暮らす魔界、獣人族など様々な種族が暮らす外界、そして天に浮かぶ天界である。


「どうやって浮いてるんだろうか?」


 あの天界では豊かな暮らしが約束されているとされ、地上人達の羨望の的となっている。


 あそこへ引っ越すために人生を費やしている人もいるらしいが、それはなかなか難しい。

 その理由は、天界と人間界の接点があまり無いことと、人間に翼が生えていないことがその主な原因だ。


 天界の住人は人格に優れているらしいので、仲良くなれれば移住の機会もあるだろうが、そもそも会う機会が無ければ話す事もできない。

 そして無理やり天界に行こうにも、天界人のように飛んでいく翼がない。

 だからこそ憧れとなるのだ。


「さて、考えてもしょうがないな。ある程度採取したから帰ろう」


 俺のスキルは一ヶ所で同じ量を採取し続けられるので、薬草の採取などには使い勝手がいい。

 初めてにしてはそこそこの量を取れたので帰るか、と思って一歩を踏み出した時……。


 "キシャァァァ"


 少し遠くでモンスターの鳴き声が聞こえた。

 それだけなら良かったのだが、同時に人の声も混じっていた気がする。


「一応様子を見に行ってみるか……」


 声が聞こえた方へ音を立てないように走り、そっと木の陰から覗く。


 そこには、四方をモンスターに囲まれた女性が立っていた。逃げ場もない。

 それを見た瞬間、状況を確認する間も無く身体が勝手に動く。


「逃げてくれ!!」


 モンスターから庇うように女性の前に立った俺だが、すぐに軽率な行動だったと後悔する。


 何故なら俺は、戦闘能力が低いからだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ