プロローグ 無能採取士と馬鹿にされたら
「おっ"無能のリュウ"くんじゃん! 久しぶり!」
「はぁ、相変わらずだなお前は」
俺の姿を見つけるなり、若い男がニタニタと笑いながらこちらへやってくる。
こいつは、同じスキル持ちとして城で働いていたかつての仲間だ。
いや、この態度からして仲間だったと言えるのかも怪しいけどな。
「今日は天界から使者様が来るらしいからな。城を解雇された無能が居たら場が暗くなっちまうぜ」
「それは悪かったな」
待ち合わせ場所を城門前にしたのはどうやら失敗だったらしい。
などと考えていたが、どうやらこいつも人を待っているようだ。
はて、天界にそんな予定があっただろうか?
「っと、噂をすれば……あれはヴァルキリー様じゃねーか!?」」
そいつの声に上空を見上げる。
純白の翼をはためかせながら、一人の天界人が地上へ舞い降りた。
黄金の髪に白銀の鎧。
陽光を受けるその姿は、俺たち地上人とは違うまさしく天界の住人と呼ぶに相応しい美女だった。
そこへ先程の男が歩み寄る。
「はじめましてヴァルキリー殿! 俺の名前はイサルガ、天剣のスキルを……」
「すまない、今は人を探していて忙しいのだ……ああ、リュウ殿、遅れて申し訳ありません」
「いや、いいよ時間通りだし」
イサルガがヴァルキリーに声を掛けようとするが、俺を見つけたヴァルキリーにそっけない対応をされてしまった。
ふとイサルガを見ると、俺とヴァルキリーが知り合いなのが信じられないのか、口をパクパクと動かして絶句している。
「な、無能採取士が何で……!?」
それに構うことなく、俺はヴァルキリーに声をかける。
「それじゃあ、採取も終わったし天界までよろしく頼むよヴァリー」
「承知しました、しかしそちらの方は知り合いではないのですか?」
ヴァルキリー、もといヴァリーが俺の元同僚へ目を向ける。
近くにいたので知り合いだと思ったのだろう。
「いや大丈夫。あまりここにいると俺の無能が移ってしまうらしいからな」
「?? リュウ殿が無能でしたら、私などただの兵に過ぎませんが……??」
「いや、良いんだ。それじゃあ行こうか」
「かしこまりました、しっかり掴まって下さい」
俺がヴァリーに差し出された手を握ると、彼女は背中の羽で上空へ飛び上がった。
高度が上がるごとに、ポカンと口を開けたイサルガが遠ざかっていく。
「はあ、しかし無能か」
久しぶりに掛けられた言葉に、ついつい昔を思い出してしまう。
「そういえば、少し前まで大変だったな」
俺が人間界を追い出され、天界でスローライフを送るまでの話。
まずは最初から思い出すことにしようか。
ヴァリー「お読みいただきありがとうございます! 面白い、続きが読みたいと思った方はぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします!」
イサ「明日も2話連続投稿の予定だから、しっかりチェックしてくれよな!」
リュウ「何でお前が宣伝してるんだ?」
イサ「いや、たまには悪役だって面白おかしく説明したいじゃん!」
ヴァリー「はぁ、みんなに明るい口調が似合わないとか言われたらどうしましょう」
リュウ「……カオスだ」