共に赤く
僕たちはデパートを出て街道をぶらついていた。
「どこか行きたい場所とかあったりする?」
僕の顔を見上げるようにして彼女はそう尋ねてきた。
「特にはないかな。」
「だったらさ、ここ行こうよ。」
そう言って彼女は立ち止まって右側を指さした。そこにあるのはカラオケだった。
「別にいいけど、なんで?」
少し以外にも思いそう尋ねてみた。
「行きたいからだけど?」
想像していた回答よりもずっとひどくて綺麗な彼女の回答に頭を悩ませていると、
「早くー。おいてっちゃうよー。」
彼女はすでに扉を開けて僕が来るのを待っていた。
仕方なく足早に彼女のもとへ向かい僕たちは中へと入っていった。
「2名様でよろしいでしょうか?」
入るや否や店員さんが声をかけてくれた。僕も、おそらく彼女もイマイチ勝手がわかっていなかったので本当に助かった。
「はい、そうです。」
「カップルの場合定価より1割引かせていただくことが可能なのですがお二人はカップルでしょうか?」
あくまで業務的に店員さんは僕たちに尋ねてきた。
「ちg」
「はい!それはもう付き合い立てイチャイチャカップルです!!」
否定しようとした僕の言葉をさえぎって彼女はそんなことを言って僕の腕にしがみついてきた。
つまりは彼女が僕と密着しているということで僕の腕には何やら柔らかい感触があって、
「ちょっ、む、胸が…。」
「なに?恥ずかしいの?」
そんなことを言う彼女は小悪魔的な笑みを浮かべていた。
この時の僕はあまりにも衝撃的なことが起こっているせいで赤くなっている彼女に気づくことすらなかった。
「では、割引させていただきます。お部屋は333ですのでどうぞごゆっくりお楽しみください。」
「い、行こっか。」
そして僕たちは体を密着させたまま部屋へと向かう。
やがて部屋にたどり着いたのだが…
「なんか、狭くない?」
「あぁ、間違いなく他よりも狭いだろうな。」
明らかに先ほどまで横目で見ていた部屋よりも小さな部屋だった。そうしてやっと冷静に戻った僕はあることに気が付いてしまった。
「おまえ、いい加減に離せよ。」
彼女はまだ僕の腕に抱き着いていたのだ。
「へ?あっ…。」
そんな素っ頓狂な声を上げる彼女はまるでりんごのように赤く羞恥の色に顔を染めて、、
「へんたい!」
そう叫びながら僕を部屋の中へと突き飛ばすのだった…。
読んでいただきありがとうございました。