雨の日の月
僕らは今大型デパートの中にいた。
「ねぇ」
ようやく握っていた腕を離して彼女が僕に声をかけた。
「遊ぶってどんなことをしたらいいの?」
「は?」
僕とは違っていつも友人に囲まれている彼女がこんなことを聞いてくるのが意外だったので僕は思わずそんな声を出してしまった。
「いやさ、私最後に遊んだの幼稚園の位の時だったからさいきんの子が何して遊ぶのかわかんなくてさ。」
彼女はどこか懐かしむ様子でそんなことをいう。
でも僕はそんなこと知るはずもなく…
「帰っても、いいか?」
「ダメに決まってるでしょ!?」
なぜダメなのかわからない。一刻も早く帰らねば母さんにまた怒られてまう。
「家で母さんだって待ってるんだ。悪いが帰らしてもらうよ。」
僕がそう言って体を翻そうとした瞬間
「待って!」
彼女が僕の腕をつかんでそう叫んだ。
「お願いだから…。お願いだからまだ一緒にいてよ。」
そう告げる彼女の眼はどこか苦しそうに見えた。
今日の彼女に元気がなかったのには家で何かあったということなのだろうか。
「…。」
「そんな顔をされたら帰れないだろ。」
つい、そんなことを言ってしまった。
「えへっ。それじゃあそろそろ遊べる場所に行こうか!」
ついさっきまでの表情が嘘だったかのようにまぶしく笑った彼女は僕の腕をゆっくりと引いてどこかに行くのだった。
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