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17.バスティーユ襲撃Ⅷ ~国王万歳~

 7月12日の午後4時、ブルトゥイユがネッケルの後任として財務総監になってヴェルサイユを訪れた。そこで議会はパリの人々よりもずっと遅れてネッケルの辞任を知った。

 日曜日にも拘らず、多くの議員は議場に集まっていた。


 財務総監ブルトゥイユは、国王への1億リーヴル融資計画の立案者だった。この費用はパリとヴェルサイユに向けられた軍隊の軍事費に充てられる予定だった。

 ブルトゥイユ自身はネッケルの解任を早計だとして反対していたという。確かに軍隊は既に多く集まっていたが、まだ招集した部隊の中には到着していない連隊もあった。



 7月13日、モンモラン、リュゼルヌ、ピュイセギュール、サンプリースト──つまり諸々の現職大臣たちも解任された。後任としてラ・ヴォーギュヨンが外務大臣、ド・ブロイが戦争大臣に就任した。

 ド・ブロイによってプロイセン式懲罰法は禁止された。彼はパリの動揺を把握していて、予てよりパリの国王軍に対して慎重な行動をとるよう要請していた。


 一方、議会では、ムーニエが元閣僚の召還に関する動議を出す。続いてブルジョワ民兵設立に関して国王の許可を求めることが決まった。

 またオルレアン公やバイイ、ラリー・トレンダルなどの議員たちは財務総監ブルトゥイユに接触することでパリの鎮静化を確保しようとしたようだ。危険な状況ではあったが、軍事的威圧は議会を国王への妥協に導くかのように見えた。


 国王は、議会から送られてきた代表に対して、冷ややかに返答する。

「朕は諸君に、パリの無秩序への対策という朕の使命を既に知らせている。これらの必要性を判断するのは朕だけであり、そして朕はこの点について何らかの変更をも検討する余地はない」


「幾つかの都市は、自警団を作り自らを防衛している。しかしこの首都の広さでは、そのような種類の監視も不可能であろう」


「朕は、この痛ましい状況において、助力を提供する諸君らの動機の高潔さを疑わない」


「しかし諸君がパリに身を置いたとしても事態は好転せぬであろう。すなわち諸君の職務を円滑に遂行する為にはここに留まることが必要であり、したがって朕は諸君に今後もそうであることを推奨する」

 ブルジョワ民兵の設立許可は降りなかった。国王の認識はこの時点ではまだパリの事件は暴動に過ぎなかったし、そして確かに13日の時点では暴動だった。


 この日、議会は、彼ら自身がネッケル及び元大臣の方針を引き継ぐと宣言し、事態の解決のためにブルジョワ民兵の設置を目指す、以下の布告をした。

「国民の失望を刺激する存在である軍隊を追い払わねばならない。そしてブルジョワ民兵に都市防衛を託すために、パリと王国を脅かす全ての危機を国王に代弁する代表団を結成する」


「もう一つ決定事項として、軍隊の撤退およびブルジョワ衛兵の設立について王の言葉を得たのならば、パリに議員を派遣して人々を慰撫し、平穏を取り戻すことに貢献する連絡係とする」


 その衛兵はパリの治安維持だけでなく国王軍に敵対するという目的も置かれていた。国王がその結成を拒むのも当然だっただろう。

 議員はそれから一日中議場に留まり続けた。パリで何が起ころうとしているのか、彼らもまだ十分には知らなかった。



 7月14日、パリが騒動の最中にあっても議会は通常通り進行した。そして憲法の計画について延々と議論が続いた。新たに8人からなる憲法案作成のための委員会が設置され、そのうちの一人にムーニエが選出された。

 バスティーユで戦闘が始まると、議会は国王に向けて再び使者を送った。今回の使者は議長率いる多数の議員で構成されていた。

 そして深夜2時半、議会は国王の軍隊がセーヴルに撤収したことを知らされた。


 国王はこの日、何もないと書く。つまり狩猟をしていた。そしてコンピエーニュへの移動は準備されていた。しかし6月23日以降のいずれかの時期に計画されただろう軍事蜂起プランは実行されなかった。


 騒動の最中に議会の代表団が訪れると国王は返答を送った。

「パリの平穏を取り戻す全ての清廉な対策のために、朕の心は絶えず憂慮していた。その結果として、パリの役員や商人長官に対し、ここで必要な対策を協議するように命じた」


「またブルジョワ衛兵の結成以来の知識を得て、彼らの経験による支援のために、そして熱心な良き人々を援助するために、私は将官たちに、この衛兵たちの指導者として身を置くよう指示した。同様に、シャンドマルスに駐留する軍隊には、パリから遠ざかるように命じた」


「パリの無秩序に関する諸君の心配は、全ての人の心の内に存在しなければならない。これらの事態は朕の心も深く悲しませている」


 この返答に不満を抱いた議会は再び代表を送った。商人長官フレッセルやパリ市の選挙人たち、また将校たちに出された手紙について、当人たちは誰一人知らなかったとバイイは書く。

 今度の使者はパリ大司教が引率した。


 国王は再び議会の使者に返答を送る。

「パリの災いについて諸君の語った内容は、ますます朕の心を深く引き裂いている。その原因が軍隊に与えられた命令であるとはとても信じられぬのだ。先の代表団への朕の回答は、おそらく存じていよう。朕の言葉をこれ以上付け加えることは困難である」

 使者の一人ラリー・トレンダルは、その様子から国王が真実を語っていると確信する。

 一部の議員はもう一度使者を送るべきだと主張したが、意見が分かれて採用されなかった。



 7月15日の11時頃、議会から議員24人が国王の下に派遣されようとしたちょうどそのとき、式部長官ド・ブレゼ侯が議会に来て、国王の来訪を告げる(※フェリエ―ルによればリアンクール公が国王の来訪を告げた)。

 その30分後、国王はアルトワ伯、プロヴァンス伯の二人だけを連れて立憲議会に現れる。議員たちが「万歳」と言って迎える。

 国王は用意されていた椅子には座らず、静かに演説を始めた。

「諸君」と王は言った。

「朕は国家の最も重大な問題事を相談するために諸君を集めた。

「パリを支配する怖ろしい無秩序ほど、差し迫っていて、朕の心に大きな影響を与えたものはなかった。朕は彼らに心から同情し、そして秩序と安寧を取り戻す方法を見つけるように勧める」


「不当な先入観が存在し、人々が安全では無かったことを敢えて公表したことを朕は認識している。従って、朕のよく知られる気質によって、前もって偽られた原因もまた語り、諸君を安心させる必要があろうか?」


「その通りである! この国と共にあるのは朕一人である。諸君を信頼するのも朕自身である。国家の安寧を確保するために、この現状において朕は諸君らの援助を求める」


「朕は国民議会に期待を寄せている。公共の救済のために集まった熱心な国民の代表者たちは、朕の確固たる保証人である。朕は臣民の愛と忠誠を信じ、軍隊にパリとヴェルサイユから遠ざける命令を与える。そして諸君の行動を認可し、首都に朕の措置を広く知らせることを勧める」

 拍手喝采の中、国王の権威は失われた。


 ムニュ・プレジールから宮殿へと衛兵を連れずに歩く国王に対して、20人ばかりの議員たちが円陣を作り、彼を取り囲んで護衛していた。ヴェルサイユの通りは群衆で埋め尽くされている。樹々や彫像の上に登って国王を見ようとする者、国王に声を掛けようとする者までいる。

 1時間半の散歩の後、国王が宮殿に辿り着くと、群衆は「バルコニーへ!」と叫びだした。


 中庭ではスイスの楽隊が演奏を始めている。群衆は当たり前のようにヴェルサイユの中庭にも溢れていた。

 国王は王妃、王太子、王女を連れて宮殿のバルコニーに姿を現す。


「国王万歳!」

 人々は彼らの友である国王に対して歓声を上げた。

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