表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/22

第2話 パーティの実力

 暗闇が晴れると、森の中に居た。


「ん……」


 自分の口から知らない声が出た。

 体が重い。全身を鎖で縛られているような窮屈感がある。肺も苦しい。


 そうか、これがハモンの体か。


 目の前にはあの殺風景な部屋で視た3人がいる。


「どうしましたハモン様ぁ? お疲れですか?」


 緑髪の少女が作った笑顔で聞いてきた。たしか彼女の名前はヘーゼルちゃんだったっけ。


「……冗談でしょ。まだ街を出て10分も()ってないのに」


 と苛立ちを隠さず言ったのは赤毛の少女シエンナちゃんだ。

 うん、この2人の対応ですでにこの男が嫌われているのがわかる。それぞれ別種の壁の作り方だ。


()()()。ちょっと立ち眩みがしてね」


 僕が言うと、3人は目を丸くして驚いた。


「あれ、どうかした?」


 なにか変なこと言ったかな。


「嘘!? ハモン様があ、謝った!?」

「『ごめん』なんて言葉覚えていたんですね……」

「……どうやらハモン殿は相当お疲れらしい。一度休むか?」


 褐色肌の男子ゼイン君が呆れ気味に言った。

 如何(いかん)せんハモンという人物の普段の言動を知らないから、演技のしようがないな。しかしまさか謝罪1つで驚かれるとは。


 さてと、まずやるべきことは、


「みんな、ちょっと足を止めてくれるかな?」


 全員が足を止め、振り返ってくる。


「いきなりで悪いけど、今日はもう帰ろう」

「なに……?」


 ゼイン君は不満を表すように眉をピクリと動かす。


「体調が悪いみたいなんだ。さっきから倦怠感が凄くてね。この体調で盗賊団とやり合うのは難しい」


 ゼイン君の(ひたい)に青筋が走った。


「アンタが俺たちを連れだしたんだろうが! 『父上の期待に応える』とかなんとか言って!」

「ゼインの言う通りです。それに、別にあなたが使い物にならなくても、戦力は変わりません」


 ゼイン君の意見にシエンナちゃんが同調する。


「2人ともやめな~。そんな口の()き方して、報酬を減らされたらどうするの~? ……わかりましたハモン様。今日は帰りましょうね~」


 ヘーゼルちゃんはそう言ってダボダボの裾をパタパタさせる。


「ちっ!」


 ヘーゼルちゃんはハモンに媚びを売っている様子だが、ゼイン君とシエンナちゃんはそこまでかしこまってはいないようだ。


 ……おっと、面倒な来客だ。


「総員、戦闘準備」


 僕は魔導士の()()()である杖を手元に出現させて言った。

 アームはジョブを纏っている特に限り手にできる武器だ。ジョブごとに対応するアームは違う。魔導士の場合は魔弾を発射できる杖である。


「え? 戦闘準備? どうしてですか?」


 遅れてシエンナちゃん、ゼイン君の順番でアームを出す。

 草陰から魔物――赤眼狼(レッドウルフ)が現れる。


「うわ! 赤眼狼(レッドウルフ)君!」


 ようやくそこでヘーゼルちゃんもアームを出した。

 ゼイン君(戦士)のアームは剣、シエンナちゃん(狩人)のアームは弓、ヘーゼルちゃん(錬金術士)のアームは大きなリュックサックだ。


「ハモン様! ボクの後ろへ!」

「おっとと!」


 ヘーゼルちゃんに引っ張られ、一番後方へ押しやられる。

 好都合。後ろからジックリこのパーティの実力を見させてもらおう。

 前衛がゼイン君、そこから距離を取ってシエンナちゃん、ヘーゼルちゃん、僕が縦に並ぶ。

 硝子の陣形だな。ゼイン君が突破されたら守りの手がない。

 赤眼狼(レッドウルフ)の数は4匹。これを1人で全部引き付けるのは難しい。


「ふんっ!」


 しかしゼイン君は4匹全員1人で相手している。1匹たりとも抜かせない。

 その隙にシエンナちゃんが弓を引き、矢を放って1匹倒した。

 ゼイン君が怪我をすると、ヘーゼルちゃんが後方から癒しの鱗粉を投げて回復させる。3人できちんと戦術を練っているね、悪くない動きだ。


 これなら僕が手を出さずとも倒せそうだな。


 そう思った矢先、後ろでガサゴソと音がした。

 振り向くと、赤眼狼(レッドウルフ)が1匹木の影から現れた。


「!? ヘーゼル! 後ろよ!!」


 シエンナちゃんがすぐさま気づき指示を飛ばすが、ヘーゼルちゃんの援護を待つ暇はなさそうだ。

 仕方ない……魔術は(かじ)る程度にしか習ってないのだが、



「【雷砲(ライカ)】!」



 正面に雷の弾を形成し、撃ち出す。

 雷撃の弾は赤眼狼(レッドウルフ)を焼き飛ばした。


「なに!?」

「うそーん!?」

「え……」


 全員が僕の方を見てくる。


「前、注目!」


 僕の号令で全員の意識が正面の赤眼狼(レッドウルフ)に戻る。

 それからは3人の連携攻撃で赤眼狼(レッドウルフ)を掃討した。


……なるほど。まだまだ未熟だけど、才能のある面々だ。


 ゼイン君は身体能力が高く、間合いの管理が上手い。多対1の場面でも問題なく対処できたのはその間合い管理の賜物だろう。恐らく、このパーティの『前衛が突破されたら終わり』というプレッシャーを受け続けた末に身についた感覚。ただ受けに回り過ぎて敵の撃破に時間をかけすぎるのが難点か。


 シエンナちゃんは反応が良い。僕が気づいてすぐ後にこの子も敵の気配に気づいた。五感が鋭いというのは本当だな。弓の腕も悪くない。唯一気になったのは狙いを定めるまでの速度が遅いことぐらいかな。


 ヘーゼルちゃんは援護のタイミングも完璧だったし、使っていた錬成物の出来も良かった。だけど他2人と違って動き・反応の鈍さがやや目立つ。


 うん。鍛えがいのあるパーティだ。

【読者の皆様へ】


この小説を読んで、わずかでも


「面白い!」

「続きが気になる!」

「もっと頑張ってほしい!」


と思われましたらページ下部の【★★★★★】を押して応援してくださるとうれしいです。


よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ