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過去に戻った王女は歪み笑う。

 国を滅ぼしてから〝時の女神〟とやらの契約で時間逆行を受け、目の前に愛しい人がいたことで抱き着いてしまった私、アリッサ・ブラフムは久しぶりに気持ちいい朝を迎えた。


「……いい、天気」


 雲一つない青空を見ながら、私はベットから体を起こす。


 気持ちのいい朝を迎えた理由は、愛しい彼と再会した以外にない。


 彼に抱き着いてしまったことは、以前に亡くなった人ととても似ているから思わず抱き着いてしまったという理由で誤魔化した。


 とても似ているではなく同一人物だということを、彼に言えるはずがない。


 そこから、以前のようにぶつかってしまったことへのお詫びとして、彼に国を案内してもらった。


 その日のことは鮮明に記憶に残っているから記憶では何度も思い返していたが、やはり思い返すことと実際に案内してもらうのとでは鮮度が違い、二回目なのにとても楽しめた。


 以前は〝美しい景色をただ見ていた〟だけだったが、今回は〝彼と一緒に美しい景色を見ていた〟という出来事になっていた。


 精神年齢だけで言えば、私はもう三十代であるから十五歳の彼とデートするのは年の差がありそうな気もするが、彼と一緒にいられるのならいくらでも精神年齢を若くできる。


「さてと、どうしようかな……?」


 今日の予定はすでに学園に行くことであり、考えていることは別にあった。


 彼とデートしてから、その出来事に生娘のように顔を赤くしながら十分に悦に浸った後、私はこれからのことを考えていた。


 まず彼が危険な目にあうことは論外だ。


 さらに言えば彼の母親が危険な目にあうことも論外だ。


 この二人の身の安全と、幸せは私の第二の人生で絶対条件だと言える。


 そう考えながら、私は何年ぶりの制服に袖を通して、鏡に映る自分を見る。


 私の母親譲りの金髪を腰まで伸ばし、私の父親譲りの紫色の瞳、私の婚約者が私に夢中になるくらいの体が、若々しい状態でそこにあった。


 だが、そのすべては彼のためにあった。


 彼に愛されるために私はこの体で生まれてきた。


 ついぞ、彼に本当の私の姿を見せることは彼の死に際でしかなかったから、今回こそは彼に本当のことを言って、彼に隠し事をせずに彼と愛を育みたい。


「ふふっ……」


 でも、そうしなくてもすべて彼にお見通しだったことは、嬉しかった。


「アリッサさま、起きていらっしゃいますか?」

「えぇ、起きているわよ」


 少し感慨にふけり考え過ぎたことで、メイドに扉越しに声をかけられた。


 とりあえず、前回と同じ動きをしていれば彼がでっち上げで処刑されるのは六年後だ。


 今は学園に向かい、すべてを学び終えている授業を受けながら、これから起こす行動を考えることにした。


 ☆


 つまらない学園を終え、一つ分かったことがあった。


 前回で極めた魔法が、ほぼすべて完璧な状態で今の私でも使えるようになっていることだ。


 授業で魔法を使う場面があったが、その時に前回と同じ感覚だったから、試しに幻覚魔法を使えばこの時の私ではありえないほどの魔法効果範囲があった。


 これは嬉しい誤算だ。


 さすがに魔力までは増えていないが、それでも魔法を研鑽するのには時間をかなり費やしてしまうから、かなりの時間節約になる。


 これで早めに一番の邪魔な相手である、グレートウィザードを殺すことができる。


 この先生を殺して、傀儡にでもすれば利用価値はいくらでもある。


 前回はこの先生がいたおかげで、私は彼を助けられずに彼を死なせてしまったから、この時点で殺せるのは大きい。


 前回、この先生は魔導だけを極めた人だから、苦しませて殺すことができなかった。


 拷問をしようとしても、自殺を選ぶことができる手段を持っているから、ただ殺すしかない人だ。


 彼を助けて、彼を幸せにするには、この国は腐りすぎている。


 この時間軸の人々は、まだ誰も彼に危害を加えていない。


 だけど危害を加える可能性がある人々は、初めから処理しておかなければ私は安心できない。


 腐っている人々と、危害を加えるかもしれない人々、この二種類をこの国から処理しなければ彼の幸せは訪れることはない。


 決して再び復讐できる、なんて考えていない。


 それでも、前回できなかった復讐が一つある。


 〝彼の前で苦しみ悶えながら死ぬこと〟


 前回の復讐は自分よがりの復讐であったことは否定できない。


 だけど今回は前回殺された彼がいる。彼が前回でっち上げられた罪で殺されたのだから、今回は彼らをでっち上げられた罪で殺してあげよう。


「くふっ、ふふふふふふっ!」


 狂ったような笑いをする私は、もう人ではない何かになっているのだろう。


 でもこうしたのはこの国の人々だ。


 しっかりと責任を持ってもらわなければならない。

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