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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
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鳥居の向こう側へ

作者: シカバネ
掲載日:2021/05/22

私は今でも理解ができない。あの日の夏休みの日の出来事を。私が死んでも理解できないものではあるのかも知れないが…

あの日は物凄く長い日だった。1日が24時間から3倍ぐらいになったんじゃないか?レベルに長くなった…


えっ?前置きはいいから早く話してくれって?まぁまぁ…いいじゃない…少し前置きが長くなってしまっても…悪いことはないと思うよ?


んっ?日が暮れる?あはは。そうだね。じゃあ、話そうじゃないか…あの日の出来事を…あの鳥居の向こうのことを


◆◇


それはとある夏休みの日だった。私は友達と居た。本当は塾の夏季講習が入っている日だった。けど物凄く塾の先生が怖くて行きたくなかった。だからすっぽかして2人で遊びに行った。もう中学3年生。勉強。勉強。受験。受験。と言われる時期だ。何が〝最後の夏〟だ。勉強ばっかじゃないか


私の住んでいた村にはとても大きな神社があった。その神社は山の上にあって行く為には石段を何段も登らなくちゃ行けなかった。だから正直あの神社に参拝しに行く日は物凄く面倒だったし、夏に行くと汗だく。冬に行くと石段が凍っていていつ転ぶのか分からなくて少し怖かった。ついでに神社の神主さんも少し変な人だった。何と言うか不気味な人だった。しかし神社の山はその街に住む子供達にとっては絶好の遊び場所だった。ド田舎で子供的には物凄くつまらない村だった。だからみんなこぞってあの山で遊んだ。色々な場所に落ちている小枝や葉。自分で持って来た段ボールで秘密基地があった。あからさま過ぎて秘密と言えるのかどうかは怪しかったが…

そして私達はその夏休みの日に2人で作った絶好の景色の見える秘密基地に向かった。


神社の境内に入って1回参拝してから自分達の秘密基地に向かう。今日もちゃんとある。他の子の話だが動物達に荒らされてしまって悲しい事になってしまった秘密基地があったらしい。だからこうしてほぼ毎日見に来る。


私達の秘密基地は木の上に巧妙に作ってある。所謂ツリーハウスと言うやつだ。股木に段ボールを置いてその上に落ちてた葉っぱや何やらを載せて上にも小枝を組み合わせて作った屋根がある。そしてこの秘密基地からは街全体を見渡すことが出来る。何度見てもこの風景は素晴らしいものだ。と言いたくなる景色だ。


そして先程コンビニで買って来たお菓子やら缶ジュースやらを広げる。これからミニ宴の時間だ。これを楽しみにあの石段を登って来たものだ


「「かんぱ〜い!!」」

私はリンゴジュース。そして我が親友はぶどうジュース片手に乾杯をする。そしてすぐにお菓子の袋を開けて貪り食う。やっぱりこの時間が最高だ!!


「あはは食べ過ぎだよ〜」「汐音だって人のこと言えないでしょう?」


そう言って談笑する。この体験は塾の夏季講習では絶対に得られない体験だ。


「そう言えば…汐音は夏休みの宿題…どの辺りまで進んだ?」


ウッ…


「全く…進んでません。と言うか日記も書いてません…」

「え〜?もうお盆も終わっちゃうよ?お盆終わるまでには終わらせないとやばいよ?特に読書感想文とか自由研究とか」


今日は8月12日…明日から塾はお盆休みになる…そしてお盆が終わるのは8月15日…


「我が親友よ!!助けてよ〜」

「私は某猫型ロボットじゃないんだから…まぁ、手伝える事は手伝ってあげるよ」

「やった!!因みに夏休みの宿題は終わったの?」


すると一息置いて

「終わってると思った?」

「やっぱり流石は我が親友だ。一緒に頑張ろ〜!!いっそのこと自由研究は共同研究って事にしない?」

「おっ!それはいいね!」


結局その日は日が暮れるまで秘密基地に居た


「じゃあ明日9時に街の図書館ね!」

「うん!じゃ〜ね!」


楽しかったな〜



【家】

「ま〜た!!何回やれば気が済むの!?」

家に入って1発目に母親の怒号だ。もしかして…

「ナッ…ナンノコトデショウカ?」


母親のため息が聞こえて来た

「し!お!ん!また塾すっぱかしたでしょ!?今、塾の先生から連絡があったの!!これで何度目!?軽く10回はやってるわよ!?またすっぽかしたら今度の今度は許しませんからね!!今年受験生なのよ⁉︎」

これは何度言われた事やら…

「へ〜い」

「その生意気な返事はやめなさい!!」

そう言って母親は私の頬をつまんだ


「うぅ…痛いよ〜」

「はぁ…今日はどこ行って来たの?また秘密基地?」


これはもう秘密でもなんでもない

「そうだよ〜」


そう受け流すように返事をする。そして階段を登って自室で向かう

「全く…また1人で…」


ガチャ

「しょうがない…夏休みの宿題…少しは進めるか…」


課題一覧表を鞄から取り出す

え〜と…『数学のワーク…70ページ分』何を言ってるんだ…あの爺さん数学教師め…恨むぞ?前林…

この理科の城田先生を見習ってほしいわ。『家のお手伝いをする事。その他は無し』神か?神なのか?優し過ぎて逆に怖いぞ?怖い。


取り敢えず…数学のワークから始めるか…

夏休み終了までに終わってることを願うんだぜ…


《次の日》

〜9時〜

ピピピピピピピピピ

「やっばぁ!?」


もう9時だ。遅れる!遅れる!

急いで顔洗って〜の。寝癖直して〜の。服着替えて〜の。鞄に取り敢えず夏休みの宿題入れて〜の。


「行って来ま〜す!!」

「ちょっ!!どこ行くの!?」

母親が現れた。なんか瞬間移動能力とか持ってるのか?


「図書館!!自由研究やるの!!」


そして、私は外を飛び出す。


自分の自転車の鍵を解除していざ図書館へ!!



【図書館】

「遅すぎるよ…」

「ごめん。ごめん。これでもなるべく急いで来たんだよ」

「汐音は一体何時に起きた?」


「クジデス…」

ため息が聞こえた

「何で約束の時間に起きるのよ!?」

「えっと…その〜…目覚まし設定するの…忘れてて…ごめん!!マジでごめん!!」


「そんなに潔く謝られると怒り辛い…あ〜。もういいよ。さっ、図書館入ろ」

「うん!!」


図書館はとっても涼しかった。やっぱり夏は図書館しか勝たん!!


「お〜い。手続きして〜」

「あっ、うん」

入館者名簿のところに名前を書く


「じゃあ…まず何調べるかを決めよっか!」

「そだね〜」


確か私は去年の自由研究にて塩の結晶を作った気がするな…あれ、妹が結晶の入ったコップを倒して大変な事になったんだよね…城田先生許してくれて良かった


「まず、社会系にするか理科系にするかだよね…どっちがいいと思う?」

「やっぱり理科系でしょ!!王道だよ!!」

「ちょっ、ここは図書館なのっ!もっとそこら辺自覚してよ…」


へ〜い…

それから私達は天体の観測をする事にした。結構おもしろそうだし私の家の蔵にお父さんの望遠鏡があった気がするし。


「じゃあ、それは夜にしか出来ないから明日の夜にやろう。さ〜て…ここからが本番だよ〜。間瀬汐音ちゃん?数学のワーク70ページ!!どっちが早く正確に出来るか勝負だよ!!」

ふっふっふっ…

「この私に勝負を挑んでくるとはいい度胸だ。かかってこい!!」

「余裕みたいねいい事教えてあげる!汐音!さっきの言葉は圧倒的に『フラグ』よ!…さて汐音!覚悟は決めなさいよ!!…よ〜い。ドン!!」



結果は圧倒的に私の方が遅かった。加えて私の正答率はバカ低かった


「ウッ…この私が勝負に負けるなんて…」

「汐音は頭使う系は本当に弱いね…」

こいつしれっと失礼なことを!!

「私を脳筋と言うのかね!?まぁ、実際そうだけど…」

「自覚してるじゃん…んで?汐音はどこが分からないの?」


これはご丁寧に直々に教えてくれるパターン?

「えっとね…連立方程式全部と…比例と反比例と…一次関数と…平面図形と…空間図形と…あと平方根と2次方程式……あとは……」

「いや!!殆ど全部じゃん!!」


結局私は手伝ってもらって何とか最後まで終わらす事が出来た。今日は人生の中で一番集中できたと思う。多分もうこれ以上集中することは出来ない


『19時になりました。図書館の閉館時間です。本を借りたい人は速やかに借りてそれ以外の人はみんな帰りましょう』


もう19時!?

「時の流れは早いね…明日は9時に秘密基地ね。絶対に遅れてくるんじゃないよ?」

「分かったよ〜。じゃあね〜」


そう言って別れる。あれ?そういえばあいつってどこら辺に住んでいたっけ?

まぁ、いっか!きっと街の外れの4丁目ら辺に住んでるんだろう!きっと!!知らないけども!


【家】

「汐音。遅かったわね…」

「すみません…けど!!数学のワーク70ページ全部終わったのです!!」


すると「あら本当?」と言ってキッチンに戻って行った。許してもらえたようだ

「おねーちゃん!!おかえりー!!ままがしんぱいしてたよ!!これからはもっとはやくかえってこないとままがしんぱいしすぎてたおれちゃうよ!!」


「ウッ…分かったよ…これからは気を付けるよ…」

妹。その名は琴音。は我が家の癒し担当だ。ロリコンでもシスコンでも無いが本当に可愛い。


私は自分の部屋に戻り宿題の続きをする。社会のワークだ。私は英語と数学以外は出来る自信がある。だから社会は大丈夫なのだ〜。それに答え《永遠の友》が居るし!!


「汐音〜!!夕食出来たよ〜!!」

「あっ!今行く〜」



夕食が食べ終わりまた自分の部屋に戻り宿題を進めいていた


「おねーちゃん!おねーちゃんはなにかとってたいせつなことをわすれてない?」

「えっ?」

私が忘れているとっても大切な事?


「ん〜…多分無いと思うけど…どうして?」

すると琴音は少し悲しい顔をした

「そっか……おもいだしてないんだね…」


え?何を思い出してない?

「ねぇ?私は何を忘れているの?」



「ふぁ〜ことねむいぃ〜おねえちゃーん。ことのへやにおんぶして?」

「えっ?いいけど?」


琴音を持ち上げると直ぐに琴音は寝てしまった


私が忘れてしまっている事って何だろう…

琴音の部屋につき布団を敷く


「ん?」

机の上に見開きに開かれたノートが無造作に置かれていた

「琴音もちゃんと勉強しているんだな…感心感心。今時の幼稚園児は何勉強しているんだろう?」

琴音を寝かせてから机の上のノートを見てみる


〝おねえちゃんはまだきずいてないみたいだ。いつになったらきずくのかな?おかあさんもがっこうのせんせいもまちのひとたちみんなしんぱいしてるのに…。びょういんのせんせいはいずれこころのせいちょうといっしょにきずくっていってたけど…それっていつなんだろう…〟


私は何に気がついてないの?お母さんも学校の先生も街の人達もみんな心配している?


「なんで誰もはっきりと教えてくれないんだろう…」


「何を?」


疲れてるみたいだね。私。

「明日は天体観測する日だし早く寝よう…また怒られちゃう…」

友達に。



バタン


「おねえちゃん…そろそろ…ほんとうのことに気づいて…ともだちのこと…おねがい…」


《8月15日》

……17時に起きたぞ…これは……やばい………?まぁ、いっか

まず、蔵に行って望遠鏡探さなきゃ。最後に使ったの結構前だから…壊れてなきゃいいなぁ…


「汐音?今日は起きるの早いわね…どうしたの?」

「今日も友達と秘密基地に行くの!!」


寝ぼけた母親は「また?」と言って呆れているようだ

「蔵の鍵どこ?」

「蔵の鍵ィ!?玄関の鍵とかが纏めてあるところにあると思うけど…と言うか何で?」


あ〜、あの鍵束にあったのね

「友達と自由研究で天体観測するの!!じゃあ行って来ま〜す!!」

「ちょっ!?今日は!!」


蔵の鍵を取りさっさと退散した


ガチャガラガラガラ

「ゴホッゴホッ」

埃臭っ!?やば…


「望遠きょ〜。望遠きょ〜」

どこだぁ?


ガタン


えっ?私の聞き間違いじゃなかったらこの私しか居ないはずの蔵に物音がしたよ?


一気に夏の暑さが吹き飛んだ。さっきまでは暑さによる汗だったのが冷や汗に変わる

この場合人でも動物でも虫でも怖い…


「汐音?来たのかい?」

また夏の暑さが私を支配する。良かった…

「なんだ…お父さんか…ビビらせないでよ…」

するとお父さんは嬉しそうに笑う


「いや、少し汐音を驚かそうと思ってね。琴音とかお母さんは元気かい?」

「元気だけど?なんで?いつも会ってるじゃん」


蔵に無言が漂う

「そうだね…それで!!望遠鏡を探しているのかい?望遠鏡だったらそこの奥にあるよ」

「おっ!ありがとう!!壊れてはなさそう!!良かった!!じゃあねお父さん!!私ね今から友達と秘密基地に行くの!」

「おぉ!それは良かったな…秘密基地か…お父さんもよく作ってたな…じゃあな。」


お父さんは少し寂しそうだった。


【秘密基地】

「ほ〜らちゃんとこの間瀬汐音ちゃんが来たよ〜」

「それが普通だから…」


いつも通りの会話を繰り返す

「んで家の蔵にあった望遠鏡。一応確認したけど多分壊れては無いと思うよ」

「じゃあ、まず秘密基地行くか…そういえば今日は何日?」

「?8月15日だけど?家にカレンダー無いの?」


さっきの蔵と同じような沈黙が支配した


「いや…別に…なんでも無い。さっ、行こう!!暑いしさっさと行こう」

「うん!!」


自転車を押しながら歩く


「ねぇねぇ?幽霊とか見た事ある?」

「いきなり何?けど私何回かあるよ?学校でね。どこだったかな?体育館だったかな?バスケットボールの音がして誰かな?って思って見に行ったら1人でボールが跳ねていたんだよ…その時はあまりにもびっくりしすぎて直ぐに逃げたけど多分あれは幽霊だよ…」

「ヒィ…怖っ…私は無いかな…多分霊感とか無いんだろうね…1回ぐらいは見て見たいなぁ…」

まぁ、あまりにも異形の幽霊を見たら泣くかもだけど…


「その時幽霊見た時物凄く怖かったから見れないならそのままでいいと思うよ?あっ、そろそろだ」


そして秘密基地に着く

2人で頑張って望遠鏡を引っ張り上まで持ってくる。ここから星空を見るなんてなんてロマンチックな事であろうか。流石にまだ星は見えないが夕焼けはいつもより綺麗に見える。


「ねぇ?日が暮れるまで久しぶりにこの山を探検しない?」

「おぉ‼︎それはいいねっ‼︎」


この山は物凄く大きい。だからまだ踏み込んだことのない場所も多い

「じゃあレッツゴー‼︎」


にしてもどこから探索するつもりなのかな?

「確かね?この山の奥の方に沢山の鳥居がある場所があるらしいよ?なんかすごいらしいよ?」

えっ‼︎行ってみたい‼︎

「行こ行こ‼︎」


早速その沢山の鳥居がある場所へ向かった。

その場所は心配になるくらい山の奥で私もこんな奥まで来たことはない。


「ここだよ」

無言の空気がその言葉によって打ち破られる


「⁉︎」


私の目の前に広がっていた景色は幻想的なものだった。

「ねぇ‼︎ここ潜ってみようよ‼︎先に何かあるかもしれないし‼︎」

私が提案をする。少し悲しげな表情を作る私の友達


「そうだね。何かあるかも知れないね……行ってみよう」


そして私達は鳥居を潜っていく

一体この鳥居は何個あるのか……軽く100は超えているであろう。物凄く多い。途轍もなく多い。なぜこれほどまで鳥居を作ったのか……


「結構続くね。この先何があるんだろう?」


鳥居の道は何回もぐにゃぐにゃと曲がっており先まで見えない。それも階段状になっていて余計だ。そして何故か夏のこの時期だと言うのに視界良好とは言えない。


「はぁ……はぁ……やっと……着いた……」


そこに見えたのは樹齢何千年と言われても納得の出来る程太い木だった。太い紙垂が回されている。御神木なのか



「汐音?幽霊を見る事が出来るよ」

「えっ?」


足元はいつの間にか浅い川に変わっていた。さっきまでは地面を歩いてはずなのに?


「汐音……着いて来て」

「えっ?そりゃあ勿論」


何かおかしい?まぁ、気のせいか?


私達は川の真ん中を川に沿って歩く。川の水は冷たいような暖かいようなな水温だった。そしてなんだか夏のあの暑さを忘れて涼しさを感じる。


「ねぇ?どこまで行くの?」



「川の上流まで。大丈夫。それほど時間はかからない。ねぇ?汐音?手……繋いでくれない?」

「いいよ?」


それを最後に私達は一切喋らなかった。


唯一の失敗点は腕時計を家に忘れてしまった事だ。時間感覚が全く掴めない。今はどのくらい経ったのか。どのくらい歩いたのか。全く分からない。ある意味の怖さを感じる。けど手は暖かい


歩いて行くとどんどんと霧が濃くなって来た。なんだか寒くなって来た。なに?怖い………



「汐音には知らなくちゃいけない事があるんだよ……」

「知らなきゃいけない事?」


いきなり言い始めた。そしてその言葉は私の心に嫌に刺さった





「───私……もう、死んでるの」






意味が分からない。私はいつも通り過ごしてるしいつも遊んでる。




「汐音が見ている私は……幽霊よ」




幽霊?私は霊感なんて一切持って居ないのに……?


「だからみんな心配した。汐音は居ない筈の人間と話ているから。……私は、3年前に交通事故で死んだの。」


何を言っているんだ?じゃあ、私はずっと幽霊と遊んでいることになるじゃないか?まさか、そんな非科学的な……



「私は……さっさと成仏すればよかった。けど……怖かった……。だから……私の存在を汐音にだけ見えるようにした。もし1人でも私の姿を見れる人がいれば私は今世に居続けられる。」


本当に何を言ってるの?


「私のエゴだった。私のエゴによって汐音は苦しめることになった。………だから、私は覚悟を決めたの……もう……成仏するって…今世からは離れるって……ありがとう。汐音。私と……遊んでくれて……」



状況は全く理解出来なかった。けど、……けど、絶対に居なくなって欲しく無いと思った。私の唯一無二の友達を……喪いたく無い。嫌だ


「お願いだから、居なくなん無いでよ!!」


「もう……遅いのよ?私の名前……覚えて居ないでしょ?名前っていうものにはどの言葉よりも大きな言霊の力を持ってるの……」


あぁ、なんでこんな大切な時に…思い出せないんだろうか



「ありがとう。本当に……楽しかった。汐音と過ごしている日々は……感謝しても仕切れない……本当に……本当に……ありがとう。汐音。間瀬汐音。」


「嫌だ!居なくなんないでよ!一緒に星を見ようよ!」


視界が涙によって歪んで見える

その叫びは虚しく彼女の体は光に包まれて行く。必死に手を伸ばして彼女の手を掴む。残念だが掴みきれない



「嫌だ、嫌だ!お願い、待ってよ!私を置いて行かないでよ!───菅原志帆!そうだ!志帆!!!!」






『最後に……私の名前を思い出してくれて……ありがとう』






私の手には彼女の手は無かった。あったのは菅原志帆。彼女の透明な涙が虚しく掴まれているのみだった。そして先程まで川だった場所はいつの間にか草原の上だった。あの秘密基地の近くだった。

もう、あの鳥居は無いであろう。見ては無い。だから証拠はない。しかし、大体分かる。もう、遅い。無駄、


もうすっかりあたりは闇に覆われて居た。


あぁ……天体……観測しなくちゃ……


秘密基地に向かう。


まるで私を嘲笑うかのように自転車は一台しか置いて居なかった。あの子の痕跡はない。あの子がついさっきまでこの世界に居たという痕跡はない。

あの2人で見た景色も偽物だったのか……



ドーン


遠くで花火の音がする。あぁ、そっか……そういえば、今日は夏祭りの日だっけ?天体観測に1番合わない日だな……。けど。今年は騒がしい屋台の方には行きたくないな……


私は1人秘密基地で缶ジュースを2缶飲んだ。1つはリンゴジュース。もう1つはぶどうジュースだ。


◆◇


それから私は都会の高校を受験しその村を出た。また戻って来た頃には廃村になって居た。そろそろダムの奥に沈むらしい。あの日過ごした家。あの図書館。あの神社。そして……秘密基地。全てがダムの湖の底に沈む。何も残らない。あの村の形跡はどこにもなくなるのであろう。

それが今の時代の流れだ。だから理解はしている。しかし、感情はついこみ上げて来てしまう。もしかしたらあの村に行けばまた……親友と会えるのではないか?と思ってしまう。そんなこと……もうないって知ってるのに……


これまでがあの時の話だ。菅原志帆。私の親友よ。私もそろそろ同じ世界へと行く。また……秘密基地を作って遊ぼうな。





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