36 少女(青年?)、キングオークと遭遇する5
やがてセシリーさんは、話せる程度までには回復した。
ホント、ポーションって言うのは凄いな。
地球で売ったら、いくらくらいの値が付くんだろうな。
いやいや、あまりこういう考え方は良くないな。
「良かった...体は大丈夫そう?」
「いや、中級のポーションだからな...完全には回復しきっちゃいねぇ...」
「そうなんだ...だったら、まずは街に戻って体勢を立て直さないと...!」
今のままではあの巨大なオークを倒すことなんて無理だ...そう思った俺は、そんな提案をするが...
「ダメだ...あのキングオークを逃すわけには行かねぇ...」
「キングオーク...?」
そう言えば、アレクさんがキング種について説明してくれたな。
まさか、本当にキング種がいたという事か...?
「あいつを野放しにしちまうと、スタンピードが始まっちまう!!
今はまだ私が気を引いている事で抑えられてるが、いつ奴が暴走して街に移動し始めるか分かったもんじゃねぇ...
今ここで、あいつを倒せなきゃ、街が魔物に飲み込まれるぞ...」
そうだ、アレクさんも言っていた...キング種はスタンピードを起こすと...
だからこそセシリーさんは、スタンピードを起こさせる前に討伐しなくちゃいけないって言ってるのか...
「でも、そんな体で...!!」
「知った事か!!やるやらねぇじゃねぇんだ...やらなくちゃいけねぇんだよ!!」
セシリーさんは剣を地面に突き刺し、杖代わりに立ち上がろうとする。
だが、やはり万全ではないからか、途中でバランスを崩して倒れてしまう。
(こんな状態のセシリーさんを戦わせるわけには行かない...!)
「...だったら俺が戦うよ。」
「...確かにお前は強いが、一人じゃ無理だ...キングオークのランクはA+...Aランク冒険者が束になってやっと対等に戦える相手だ。
C...いや、Bランク程度の実力があったとしても、歯が立たない...」
「それでも、誰かがここで引き留めるなり、倒すなりしなきゃいけないんでしょ?
今街では急いで高ランクの冒険者を集めてる...倒せなくても、彼らが到着するまで耐えてみせるよ。」
グォォォォォ!!!!!
俺のそんな言葉とともに、近くから力強い雄たけびが響き渡る。
キングオークの咆哮だ。
姿が見えなくなった俺達にしびれを切らしたのだろう。
このまま姿を現さないと、今にでも街に行きかねない...だからこそ今すぐに決断しなければ...
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。




