05 競争率の低いアルバイト先
とりあえず、どんなアルバイトをしているのか気になったので聞いてみる。
「...何のアルバイトをしてるんだ?」
【ああ、ただの販売だよ。】
自分の?
【...なんか変なこと考えてないか?】
「...っ!いえ!全然!!1ミクロンも考えておりません!サー!」
【なんか変な口調になってるし...勘違いするなよ、町のちっさなの本屋で本の販売だからな。】
ああ、本の販売か...
「へぇ~、本屋か...俺も本が好きだから、アルバイト先としてはよさそうかな?
でも、1週間くらい無断で休んじゃったようなもんだけど、大丈夫なの?」
【ああ、その点については心配しなくていい。
その本屋は1日に客が2、3人来るか来ないかくらいだから、基本的に私1人しか働いてないぞ。
というか、店を開けることすら私に任せてるような店だからな!】
えぇ~何その楽そうなアルバイト!!
あと、それは大丈夫とは言えない状況だと思うのですが...
「店長とかはいないのか?」
【ああ、店長は珍しい本を探しに世界中を旅してるんだよ。
だから、基本店長は店にいないし...うちの店には珍しい本がたくさんあるんだが、珍しすぎて逆に知ってる人がほとんどいないようなもんばかりで、客がほとんど来ないんだ。】
へぇ~よくもまあ、それで本屋なんて続けられてるなぁ...
「そんな楽そうなアルバイトなら、競争率も高そうだけど、よく採用してもらえたね。」
【ん...?なんだ、私じゃあ、すぐにでも落とされそうみたいな言い方しやがって?】
「いや、そんなことないよ!?ちょっと男勝りなとこあるから...だから...その...なんというか...」
【...私の性格は私がよく知ってるよ...
まあ、アルバイトに募集したのが私だけだったからな。】
なんでだろう?
ほとんど人の来ない本屋にいるだけでお金が入るなら、学生が喜びそうなもんだが...
【...ちょっと、たまに帰ってくる店長の性格というかキャラクターが独特でな、なかなか付き合うのが大変なんだよ。】
「独特...ってどんな感じなの?」
【...まあ、店長はあんまり帰ってこないから大丈夫だ!】
「いや、だからどんな感じ...」
【問題ない!お前なら何とかできる!】
えっ!?なにそれ、怖すぎじゃない!?
この後、家に帰るまで粘ったけど、詩音さんが教えてくれることはなかった...
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。