26 あいつの... side:龍牙
先ほどの急激なスピードほどではない、疲れでスピードが落ちているのだろうか...
目で追えるほどのスピードだ。
女は俺の近くまで来ると思いっきり踏み込み、大きく左腕をあげる。
「ハッン」
その動作に、俺は失望していた。
最後にそんな隙だらけの攻撃をするだなんて...
そんなの、攻撃してくださいと言っているようなもんじゃねえか。
だから、俺はその攻撃に一番合う攻撃をする。
生前、あいつが使用していた技だ。
あいつほどじゃねえが、俺が使えるあいつの唯一の技だ。
今まで、女への攻撃は体だけしか狙わなかった。
もともと女に手を出さないのが俺の信念だ。
それを曲げてでも戦いたかった。
だからと言って、顔を傷つけることだけはしたくはなかった。
女は顔が命だ。傷でも残ったら...そんな考えがあった。
だが、今は違う。
(これが最後だぁ!一撃で終わらせてやるよ!)
そう思い、女の左手をつかみ、引き寄せ、残った左腕で女の顔を狙う。
この一撃で失神させるつもりだった...
だが、女はここで予想外の行動をしてきやがった!
確実に決まったと思っていた俺のこぶしは、空を切った。
「んっな!?」
その後、女は俺につかまれている左腕を引き寄せるのではなく、逆に押してきた!
そのまま体を回転させながら、女の右腕が俺の頭へと突き刺さるのを、俺はゆったりとした時間の中で感じた...
(こ、この技は...)
まるで、あいつその...もの...
そこで、俺の意識は深く落ちていくのだった。
ーー
「ッは!」
俺が意識を取り戻すと、女は目の前に立っていた。
(俺は...気絶していたのか?)
とはいっても、気絶していたのは一瞬だったらしい。
周りを見渡しても、先ほどの風景から特に何も変わってはいない。
(俺は...負けたのか...)
負けた...それも女にだ...
普段なら悔しいはず...それなのに、今の俺の気分はとってもスッキリとしたものだった。
(あぁ、いい戦いだった...)
女の方を見てみると、窓から光がさしており、それがとても神々しくかっこいいように見えた。
(いい女だ...)
こうして、俺たちの喧嘩は終了したのだった...
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。
とりあえず龍牙sideは終了です~
明日からまた晋也sideに戻ります。




