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地上へ送還

 わしから探索者カードを受け取ったフォルテさんは訝しげな顔をした。


「……随分と古い規格のカードですね。これはカードに“汎用共通規格”を追加するべきね……」


 古い?そんなはずはない。

 わしがダンジョンへ入る前に交付されたもので真新しい物。第一ダンジョンは今回が初めてだ。探索者協会が古い規格のカードを間違えて渡すことは考えられない。

 どういうことだ?


 疑問符を浮かべるわしからカードを受け取るとフォルテさんは読み取り機にカードを差し込む。

 片方の手に飲み物を持ち操作するその姿はかなり手慣れているように思えた。


 と思っていたら、フォルテさんは口から飲み物を霧吹きの様に吹き出した。


「ブホッ!な、な、な、な……」


 フォルテさんは吹き出した飲み物を拭いもせず猛烈な勢いで端末を触り始めた。その姿は何か鬼気迫るものがあった。


 そんなフォルテさんを見ているとわしの後ろの扉が開く。

 振り向くと短く切りそろえられた黒髪の美女が立っていた。体のラインを強調するような黒いラバースーツに身を包みどこかで食事をしてきた後なのか楊枝を咥えている。


「やはり松々屋のドラゴンステーキ丼は食べ応えがあるな……。ん?お客さんか?」


 こちらを見た美女の頭には捻じれた角が二本生えている。この人もフォルテさんと同じように探索者協会の人の様だろう。

 彼女やフォルテさんの姿を見る限りここの出張所はコスプレ必須の様に思える。

 受付のテーブルに左手を置くと黒髪の美女は2m近くある受付の窓口をひょいと飛び越えフォルテさんに近づく。


「どうしたフォルテ、騒がしいぞ?」


 黒髪の美女はフォルテさんがいじる端末を後ろから覗き込んだ。


「ほほう、誰かの冒険者カードか……え?」


 そしてしばらくの沈黙の後、素っ頓狂な声を上げた。


「かえ、え、え、え、え、え、え、え、え、え!!!!!」


 驚いた声と共に大きく開かれた口から楊枝が床に転がり落ちる。落ちた楊枝は金属製だったのか甲高い音を立てる。

 その音と声に気が付いたのかフォルテさんはゆっくりと黒髪の美女の方へ顔を向けた。


「しょ、所長ぉ。ど、ど、どうしましょう??」


 黒髪の美女は所長だったようだ。この人が所長なら看板の在籍中は看板に偽りありだな……。などとくだらないことを考える。


「どうすると言ってもこれはなぁ……。戻すしかあるまい」


「そうですねぇ……。はぁ。選りにも選って……」


 よく聞こえないが戻すとか言っているのは判った。どうやら送ってくれるらしい。わしとしては地上に戻れるなら願ったりかなったりだ。

 所長はフォルテさんと二言三言口を利いたかと思うとわしの所までやってきていきなり頭和下げ謝りだした。


「私はここ異世界交差点事務所の所長をしている”アンダンテ”というものだ。申し訳ないトキイ殿。どうやら貴殿は手違いでこの事務所まで来てしまったようだ」


 どうやらわしは手違いでこの場所に来たらしい。

 でもわしは道に仕掛けられた転移テレポーターの罠に引っかかったはずだ。探索者協会に転移テレポーターの行き先を決めることができたのかな?

 とのんびり考えているとアンダンテ所長さんが短い棒のようなものを取り出した。


「本来なら手順を踏んでこの場所に来るはずが転移罠の初期設定の間違いでトキイ殿はやってきてしまった。手順を踏んでいない以上、トキイ殿の体に良からぬ影響があるかもしれない。手早く私が地上に送り返しましょう。よろしいでしょうか?」


「地上へ送り返すって……でしたら”はい”ですが?」


「送還の同意を得られました。トキイ殿の前に魔法陣を出しますのでその上にお乗りください」


 アンダンテ所長さんは複雑な動きて短い棒を動かした。アンダンテ所長さんが持つ短い棒、どうやらこれが魔法の杖というものらしい。


「!”#$%&’」


 よくわからない音がアンダンテ長さんの口から発せられるとわしの目の前の床に魔法陣が浮かび上がった。

 わしは言われたとおりに魔法陣の上に乗ると一瞬にして見える風景が変わった。

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