あとしまつ
当初の目的の白い繭の発見と回収。これは達成できたと言っても良い。
次に行うのは赤脛巾団の拘束……ではなくて、飛んで行ってしまったパイルバンカーの|杭パイルの部分の回収だ。
この杭は魔法金属との合金でできているので少しお高く再度作るのに時間がかかる。
それに貴重な魔法金属合金なので赤脛巾団の連中には渡したくないのだ。幸いなことに杭は建物の柱を壊し周囲を囲む壁に突き刺さっていた。
わしはアイテムボックスを使い杭を回収する。
回収の最中に杭の破断面を確認すると断面の金属部分が完全に伸び破断しているのが見て取れた。
パイルバンカーもあまり魔力を込めると壊れるので何らかの安全装置が必要なのだろう。次の参考にしよう。
杭を回収した後、装輪装甲車へ戻るとブリストルさんや松雪さん達が額を寄せ合っていた。
「この大きさだとこの車には乗りませんから、このまま運ぶ場合は他の方法を考える必要があります」
「そうだな。オリーの言うとおりだ。それだとボートに載せ車で引っ張りながら帰る?」
「それだと転覆した場合、回収は困難ですしすべて海路をとるわけには行きません」
「この場で繭を解除すれば良いのでしょうけど……周囲の目が……」
「合言葉を知られるわけには行きませんものね……」
どうやら繭をどうやって運ぶか、そして何処で解除するかが問題のようだ。
わしは回収した杭を取り出し装輪装甲車の上に乗せると繭に手を当てた。
「わしが収納できれば話が早いのだがなぁ……収納!なんちゃ……て?」
わしが収納と言うと繭字体が消えて無くなった。
いや、わしのアイテムボックスの中に繭は入っている。それに繭の入ったアイテムボックスを意識すると操作パネルが浮かんできた。
(えーっと……経過時間、時間加速度、内部制御の三つの項目か……経過時間が0で時間加速のスライダーが0と言う事は今このアイテムボックスの中では時間が止まっているという事と時間を簡単に進めることが出来るということか?内部制御?内側から制御?)
アイテムボックスの機能を考察していると大きく体を揺り動かされた。
「時井殿!繭を一体何処へ!」
「消える直前にトキイ殿が収納と叫んだように思えたがアイテムボックスや収納魔法は生物が入らないはず。これは一体?」
「……どうやらわしのアイテムボックスで収納できたようだ」
わしがそう告白するとその場に居合わせた一同が揃って頷く。
「まぁ、そんなことかと思っていた」
「トキイ殿だから当然のことですね。」
「「「「「「うん、うん」」」」」」」
何故か皆納得しているようだ。
ともあれ、繭をどうやって運ぶかという問題は解決されたということだ。あとはこの繭を拠点に戻り解除するだけだ。
……赤脛巾団の拘束?
瓦礫に埋もれているので拘束の必要はないだろう。それに拠点に連れ帰っても後々問題が起きそうだ。
そのまま放置するという事で一同は装輪装甲車に乗り拠点へ帰投した。
……追記
拠点へ戻り繭を解除した時の巴さんの一言が”ずるい”だった。
どうやら繭の中から外の様子をうかがうことが出来るらしく装輪装甲車に乗れるかと思って楽しみにしていたが繭は解除されないまま気がつくと拠点に戻っていた。
その後、数日間、装輪装甲車を乗り回したのは言うまでもない。
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時井達が赤脛巾団の拠点を後にして一時間も立たない内に沖合に少し大きな船が停泊した。その後船から拠点へ小舟が出され、小舟には数人の人影がある。小舟は砂浜に乗り付けると瓦礫となった建物に近づいていった。
小舟に乗っていた人影達は瓦礫を取り除き、列堂たちを助け出すと幾つかの瓦礫とともに沖合に停泊していた船に戻ってゆく。
その後、烈堂の姿を見たものは誰もいない。




