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足りない魔石

 わしは今、制作にあたって困った問題に直面していた。


 ”魔石が足りない”


 最初に魔導工作機を使って作り上げたのが魔導式スターリングエンジンだ。駆動部のシリンダー6つをV型に並べたV6型と言われる物、通称MS06Vだ(某タンクではない)。

 わしがこれを乗せる最適なものとして車を選ぶのは当然のことだろう。

 普通の車にするのなら材料は十分あった。しかし、わしが作ろうとしているのは普通の車ではない。第三騎士団の騎士達を運ぶための車を考えて兵員輸送用の装輪装甲車を選択した。

 そもそもなぜ第三騎士団用の装甲車なのかは簡単である。見栄えが良いからだ。それに女子高生の様な女性を運ぶのに装輪装甲車はどうだろうかと思うかもしれないが安全第一である。装甲車ならどんな場合にでも対応可能だろう。


 わしが元の世界に帰るためにはダンジョンを攻略して最下層に到達しなくてはならない。ダンジョン攻略の為にはより良い装備が必要である。

 より良い装備を揃える為には資金を集める必要があり、資金を集める為には売れるものを作るのが一番だ。

 今判っている内でお金を持っていてダンジョン攻略に協力してくれそうな人達向けにものを売るのが良い。

 その中でも最有力なのが騎士団だ。


 松雪さんからもらい受けた資材は以前まで騎士団で使っていた車だ。強化装甲は無いが騎士団員を運ぶのに使っていた物である。

 この車が動く仕組みは大型の魔石を使い念動の魔法陣で車輪を動かす物だが、念動の魔法自体が中級の魔法らしく使う魔石が大きな物を必要とする。大きな魔石は値段が高い為あまり普及していないのだそうだ。

 騎士団で今使っている車は中ぐらいの魔石を使う物の為少し燃費が良くなっているがそれでも一般には高い為、車はあまり普及していないのだそうだ。

 今のところ骨組みフレームとエンジン部分、足回り、一部内装は取り付けた。しかし、外装部分はまだ取り付けていない。それに武装も付けたほうが騎士団向けとして売るには良いだろう。

 どちらを取り付けるにしても強化のための魔石が必要だ。


 動作試験のために騎士団の訓練用のグランドを借りテストカーを持ってきた(アイテムボックスから取り出した)ら、騎士団の他の団員が集まってきた。


「これはどんな姿になるのですか?」


 ショートカットで金属鎧をつけた少女、確か”巴”と呼ばれていた子だ。車に興味があるのかテストカーの周りを往復しながらわしに完成後の姿を尋ねてきた。

 わしは設計図の中から三面図を取り出すと巴に渡した。


「うーん。なんだか亀みたいですね……。」


「装甲車だからな。」


 全身を硬い殻で覆われた亀のように感じるもの仕方がないかもしれない。移動する者を守るのだから亀の様な姿なのも問題は無いだろう。

 わしはフレームだけのテストカーの運転席に座るとキーを差し込みエンジンのスイッチを入れた。

 少し低いエンジン音が徐々に高くなる。


「結構うるさいですね。」


「剝き出しだからね。」


 流石にシリンダー剥き出しだとエンジン音があまりにも五月蠅くなるので消音カバーをつける予定だ。

 サイドブレーキを外し、シフトレバーをドライブに入れゆっくりとアクセルを踏む。わしがアクセルを踏むと同時にテストカーはゆっくりと動き出した。

 今回は低速でハンドルの切れやブレーキの利きを確かめる走行テストだ。テストで一連の動きを確認した後、車を止めて異常が無いかの確認を行う。


「なぁ、時井のおっちゃん。」


(おっちゃん?)


 わしは微妙な顔をして巴の方へ向いた。巴は子供のように目を輝かせていた。


「この装甲車ってどのくらいの速さで走るのですか?」


「そうだな。予定では時速160kmぐらいだな。」


「160km凄い!すごく早い!いつ?いつ出来上がる?」


 巴は装甲車を楽しみにしているようだがこればかりは資材がそろわない限り約束はできない。


「まだまだ先だな。材料が足りないからね。」


「材料?」


「鋼材はあるのだがそれを強化する魔石が足りなくてね。小型の魔石をいくつか集めようと考えている。まぁダンジョンへ行けば集まるだろう。」


「判った。小型の魔石だな。それは私たちが集めてくる。」


「おいおい、そこまでしなくても。」


「大丈夫。それに時井のおっちゃんにもらった腕輪があるから安全だよ。」


 そう言って翌日から巴さん(ちゃん?)は毎日魔石を届けてくれるようになった。装甲車の完成を心待ちにしている様である。


 しかし、その巴さんがある日突然来なくなった。

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