換金と購入
魔導列車が”三国丘”を出て”境”に到着、魔導列車は区間快速であるので”境”を過ぎると次は”天王寺”までどの駅にも止まらない。
魔道列車は大和川を超えると高架になり高い位置から市街地を見ることが出来る様になる。
(時々、十階建てのビルがある景色は元の世界の大阪の街並みそっくりだ。あれはハルカスか?)
列車から見える景色は元の世界の景色と同じように見える。しかし、決定的に違うところがあった。
(空の色が青い……。)
元の世界の大阪の空の色。言っては何だがドドメ色。黄土色に薄い青が少し混じったような色だ。それが透き通るような青い空になっている。大阪の中心部でこんな空の色は元の世界ではお目にかかったことが無い。
(元の世界の様な重工業がない世界か……。わしは書籍で理解していたつもりだったが実際の姿をよく見ることでここが異世界であると実感する。)
魔道列車はビルの間を通り近くにひときわ高いビルがそびえる天王寺の駅舎に到着、そのあと高速道路と並行して“天王寺公園”の半周する形で横を通る。
公園には動物園や美術館が併設されており列車の窓から動物圏で買われている動物の姿が見える。
……?
気のせいか見覚えのない生き物が見えたような……いったい何だろう?
首を傾げるわしを横目に列車は通天閣を左に見ながら二本橋駅に到着した。
<~二本橋~二本橋~終点です。お降りの際は手荷物など忘れ物が無いか確認してください。>
流石にダンジョンの近くの駅だけあるのか昼間だというのに乗り降りする人が多い。
わしたちは少し混雑する駅を抜けギルド本部へ向かう。
「この後、トキイ殿は道具屋筋で何か購入するのでしょうか?」
日本橋でも道具屋筋があった様にこの世界の二本橋でも道具屋筋がある様だ。たたブリストルさんの口ぶりから推測するとおいている物はかなり異なるだろう。
「そうですね。制作の為の物を作る為の材料が欲しいですね。主に鉄製品なのですが……。」
「材料ですか……珍しい材料ならギルドで購入するより安い場合がありますが、粗悪品が時々あるので問題ですわ。それを考えるとギルドで購入した方が良いのかもしれません。」
まぁ、その手の店では目利きが出来ないと粗悪品を掴まされるのはよくあることだ。
わしが作ろうと考えている物はそこまで珍しい材料を必要としない。一般的な材料で作成可能だ。
でも、どちらで購入するかは、ギルドでお金を受け取った後のことだ。
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「時井様。まず鑑定に出された品物をお返しします。それとこれが鑑定結果と買い取り金額です。ご確認ください。」
ギルドの職員さんが鑑定を依頼した品物と数枚のレポートをわしに渡してくれた。
わしが鑑定を依頼した物はオルクスの魔石二個とオルクス・コマンダーの魔石一個、腕輪一個、ダガー一本だ。その品物がそろっていることを確認する。(と言っても魔石は判らないのだが……)
次にギルドでの買い取り金額が書かれたレポートを確認する。
それによるとオルクスの魔石は一個四十万円、オルクス・コマンダーは二百万円、腕輪は繭の魔法が込められたもので三十八万円、ダガーは魔法の品物で光系の魔法が込められたダガーで十八万だ。
詳しい性能はそれぞれ別のページに書かれている。魔石はそれぞれが持つ魔力の値を腕輪とダガーは込められている魔法について書かれていた。
(繭は緊急時に繭で装備者を包み守る。効果は合言葉を唱えるか繭に包まれた者が死亡するまでか……。緊急用には良いかもしれないがわしに必要だろうか?)
ふと脳裏にブリストルさんや松雪さんが浮かぶ。
(逆にこれを量産して第三騎士団の非常用アイテムとするのも良いかもしれないな。後で調べてみるか……。)
ダガーは光の魔法、“ライト”、“フラッシュ”、“マジックシュート”の魔法が使える物だがその威力は使用者によって左右される。
このダガーでは装備者の魔力は上昇しない。前衛はダガーを使うのは予備の武器としてだし威力は低い。後衛でも魔法を使う系統の者なら装備者の魔力が上昇する杖や指輪を使うのが一般的だ。
斥候の場合は前衛より魔力が高い場合があるが誤差の範囲である。
魔法自体は便利な物である為、便利な魔法の道具としての値段なのだろう。
わしは少し考えてオルクスの魔石二つを売却し他は手元に残しておく。
「ところで尋ねたいのだが、急な温度変化に強い金属は有りますか?熱や冷気に強い物です。」
「温度変化?はよく判りませんが火や氷に強い金属なら精霊銀が一番です。ただこの金属ですとかなりのお値段がします。インゴット一つで百万円は下らないかと思います。」
「それほど高くない手ごろな物ものはないのでしょうか?」
「手頃と言うか、制作で少し良い物を作るのであれば魔黒鉄はどうでしょう。ダンジョンでとれる魔力を帯びた鉄で値段もインゴット一つで五万円とお手ごろです。」
わしはその魔黒鉄のインゴットを五本購入する。
「トキイ殿、そのインゴットは武器制作用のインゴットだったのでは?トキイ殿はそれを使って何を作るつもりですか?」
わしが購入したものを見てブリストルさんは不思議に思ったのだろう。
「そうですね。何を制作するかは出来てからのお楽しみと言うことで……。ところでブリストルさんはギルドに用事があったのでは?」
「あ、いや。私の用事はもう済んだぞ。うん。」
うーん。ブリストルさんはギルドを訪れてからどこへも移動していない。どうやらブリストルさんはギルドに不慣れなわしの為に理由をつけてついてきてくれたのだろう。
「すみませんね。ご心配をかけて。」
「い、い、いったい何のことだ?別に礼を言われるようなことはしてない。うん。していない。」
ブリストルさんは少し顔を赤くしながら両手を大きく振りながら否定した。その後、しばらくの間たわいもない話をしながら松雪さんを待っていた。
 




