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ダンジョンとは

 ダンジョンというものは十年前に突然、世界各国に出現した。

 その総数は不明。あまりにも多い数が出現した為、実際のダンジョン数はわからないのだ。実際日本でも各都道府県に最低一穴は出現した。(ダンジョンは外見の特徴から一穴二穴と数える。)

 ダンジョンの中には汚らしい緑色の人形生物、通称”ゴブリン”と言う魔物が跋扈しており入ってきたものを殺そうと襲いかかってきた。その様子が一部始終動画で配信され世界中にパニックを引き起こさせた。

 幸い死者の数は少なかったのと各国の軍隊や警察が速やかに閉鎖したおかげでパニックはすぐに収まり世界は平穏を取り戻す。


 そして各国のダンジョンに対する調査が始まる。


 ここ日本においても出現した時から二年の歳月をかけかけてダンジョンは調査整備された。

 ダンジョンの調査のために設置されたのが後に国際的な協会になる日本探索者協会である。

 調査開始から約一年は大した成果が挙げられなかった。いや、上げていたのだが誰も気づかなかったと言ったほうが正しいだろう。

 その当時、ダンジョンから産出されるのはゴブリンから産出される”魔石”と言われる小さい石や、ダンジョンの小部屋で時々見つかる木箱(宝箱らしい)に入った青銅の武器ぐらいだった。

 中でも魔石という物は壊すと様々な現象を起こすものであったがその規模や効果が極めて低く時間も短かった。

しかし、無の状態からエネルギーを得られるということが各国のダンジョン開発に拍車をかけた。

少しでも大きな魔石なら規模も大きく出来るとして米国や中国は国を上げてダンジョンの調査に乗り出した。これは次世代のエネルギーになりうると考えた末の行動だ。

 彼らは”世界でも有数の戦力を持つ我々がダンジョンの調査の最前線に立てる”と考えていた。


 だが彼らの考えは脆くも崩れ去る。


 ダンジョンの魔物には銃火器の効果が極めて低いのだ。

 それは一階層ではわずかな物であまり判らなかったが二階層の最奥の部屋へ進んだ時、銃火器の威力が顕著に低下した。

 それまで比較的楽に倒していた(それでも数発の弾丸が必要だった)ゴブリンでさえ倒すことが困難になっていた。

 加えてその部屋のみに出る敵、少し大柄な緑色の人形生物、”ゴブリン・キャプテン”には銃弾は全く効果がなかった。

 どうやらこの部屋は通称”ボス部屋”と言う物らしかった。


 その為、米国は死亡者が出る前に早々と撤退を決め、何とか倒せるボス部屋以外のゴブリンだけを研究対象とした。

 中国はお得意の人海戦術で押し切ろうとしたがボス部屋を超えることはできずに屍の山を築いていた。


 結局どちらの国も大きな魔石を手に入れることはできなかった為、小さい魔石は役に立たないクズ石として判断された。


 ではその時日本はどうだったのか。

 米国と装備がほとんど同じなのでボス部屋の”ゴブリン・キャプテン”において米国軍と同じ様に銃弾を撃ち尽くしてしまう。

 だが、米国と違っていたのは接近戦用の装備である。短銃や銃剣の他に短槍や脇差と呼ばれる小刀、古くからある日本の刀剣類が配備されていた。


 ”腕の良い鍛冶職人が鍛えるものには魂が宿る”


 日本では古来より言われてきたことだ。

 配備された短槍の槍頭や脇差は一つひとつ鍛冶職人が丹精込めて鍛えたものである。


 その武器には正に魂が宿っていた。


 魂が宿った武器は銃弾ではほとんど傷つかなかったゴブリン・キャプテンをいとも簡単に倒してみせる。

 同時にそれは魂の宿った武器を多く持つ日本がダンジョン探索の最前線となった瞬間でもあった。

(刀剣類に関して、近隣国で”それは俺達のところから盗まれたものニダ”とか同じ様に造ったが手を抜いた為、数回ゴブリンに斬りつけると砕けた事例があったが割愛する。)


 日本が一階層、二階層と調査を進めるにつれダンジョンという存在は我々の世界に劇的変化をもたらした。その変化は我々の生活を根本から変えてしまうものだった。


 その一つが魔法。

 何故かダンジョンでの活動している人々の中に術法、いわゆる魔法に目覚める者が出てきた。魔法は発動すると効果が一瞬にして現れるという即効性のある力だ。

 目覚めた中にはあまり上手く使えない者も簡単な魔法(後に生活魔法と分類された)なら使用することができた。

簡単な魔法だけでも我々の生活を根本から変えてしまった。

 

 もう一つがダンジョンの魔物から取れる魔石である。この時まで魔石は役に立たないクズ石とされていた。

 ダンジョンの階層が進むにつれ魔物から出土する魔石も多くなったが、効果は今ひとつのものだった。

 しかし、銀の宝箱から出た”魔石を使った護符アミュレット”が出土した事で魔石の地位が変化する。

 その護符アミュレットは”防寒の護符”と言い冷気を和らげる効果のあるものだった。

 魔法陣と呼ばれる回路に魔石が接続され魔法的な効果を発揮するという単純な構造だったのも幸いした。しかし、問題はそこに使われていた魔石である。

 使われていた魔石はゴブリンの物より少し大きいぐらいの物でその当時は簡単に手に入る大きさだった。

 その後、数々の魔石を使った装備品が解析されその解析データを元に新たな装備品が開発される。

 その結果、世界を変えるエネルギーシステムが開発されることになった。


 ”魔石式スターリングエンジン”


 魔石を用いた外燃機関・・・・である。

 驚くことにこの外燃機関に使用されている魔法陣は”加熱”と”冷却”であり使われている魔石もゴブリンから取れるものだった。

 加熱と冷却だけなら従来の複数のシリンダーを使ったスターリングエンジンと変わらない。

 魔石式スターリングエンジンは一つのシリンダーだけでカルーノサイクルを実現することができた。これは“発動すれば効果は指定の場所に一瞬に現れる”という魔法の特性のおかげである。

 その上、魔石式スターリングエンジンは温暖化ガスを一切排出することなく電気や火を作り出すことができた。


 脱炭素社会を政府が推進していることと相まってわずか一年の間に日本中、そして世界中に広がったのだ。


 ダンジョンが発生してわずか五年、ダンジョンは人間社会にとってなくてはならないものに変わっていた。

魔石式スターリングエンジン


スターリングエンジンを完全に再現したもの。

今までのスターリングエンジンは加熱用のシリンダーと冷却用にシリンダー2つを使っていたが魔石による魔法の効果で一つのシリンダーを加熱と冷却に使うことができるようになった。

これも魔法での効果が”発動すれば効果は指定の場所に一瞬に現れる”と言ったことが有利に運んだからである。

その為、今までのスターリングに比べ小型化、いや通常の燃料エンジンよりも小型化することに成功。

温室効果ガスを発生しない事とゴブリンの魔石で動かせる事が相まって爆発的に世界に広がった。

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