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魔道列車で絡まれる

 時間が経つのは早い。特典とやらを選んでいたら時計の針は十二時を少し回っていた。


「もうこんな時間か、昼食はどうしようか?ギルドでお金を受け取った後にするべきか……。」


 そんな事を考えていると階下から呼び鈴の音が聞こえた。

 午後からブリストルさんとギルドへ行く予定だったからもうやって来たのだろうか?十二時を少し回った時間なのでまだ余裕があると考えていたがこの世界の昼はもう少し早いのか?

 わしは返事をしながら玄関の扉を開けるとおかもちを持った松雪さんが立っていた。


「時井殿、昼食を持って来ました。どこへ置きましょうか?」


 朝のブリストルさんに続いて今度は松雪さんが食事を持ってきてくれたようだ。


「わざわざすみません。松雪さんも食事を取らなくてはならないのに……。」


「ええ、ですから二人分用意しました。食堂で昼食にしましょう。」


 松雪さんはそう言ってニッコリと笑い食堂の方へ進んでいった。

 何の拷問だろうか?

 うら若い、女子高生と言える年代の女性と食事を一緒に取るなんて独身生活の長いおじさんにとって難易度の高いミッションでしか無いのだが……。


 昼食は薄い味付けの京風ランチだった。わしとしては朝食のフル・ブレックファーストと言われる英国風の物よりこちらのほうが好みだった。


「時井殿は午後の予定は?」


 なんとか難易度の高いミッションをこなし一息ついていた所に松雪さんが午後の予定を尋ねてきた。


「ブリストルさんとギルドへゆく予定です。」


「それは丁度良かったです。私もギルドに出向く予定でしたので一緒に参りましょう。」


 どうやら高難易度ミッションは更に難易度を上げて継続になった。


 ------------------------


 その日の午後、わしは両側にブリストルさんと松雪さん二人に挟まれる格好で魔導列車に乗っていた。

 高難易度ミッション継続中だ。


 この世界で魔導列車は一般的な乗り物らしく、元の世界の電車と同じように何分間かごとに必ずやってくる。やはりこの世界でもこの様なところは変わらないようだ。

 わしの世界で信太山から日本橋に行くには区間快速に乗り天王寺駅で地下鉄に乗り換える。しかし、この世界では天王寺を経由し直接二本橋まで行くことが出来る路線が引かれていた。


 二本橋行きの魔導列車は区間快速らしく途中の小さな駅は通過し大きな駅に止まる。

 その停車駅の一つ、”大鳥”駅で真っ赤な胴丸鎧を付けた集団が魔導列車に乗ってきた。彼らは槍や刀などの武器を手に持ちそれぞれが大声でしゃべるので実に口喧しい連中だ。

 そんな連中の内何人かがこちらを見るとニヤニヤと下卑た笑いをしながら声をあげ絡んできた。


「おや?そこに座っているのはダンジョンで行方不明になった第三騎士団の副団長様ではございませんか?お体の方は大丈夫デスカァ?」


「おいおい、ダンジョンから出てきたのだから問題ないダロウ?なにかあるのかぁ?」


「いや何ね。ダンジョンではオルクス共に追いかけ回されたと言うから心配しているんダヨ。」


「オルクス!というとオークよりも精力の強い、”穴があったら何でも”と言われるあの魔物カァ?」


「そうそう、ソイツダヨ。そんな集団に追いかけマワサレタのだからどんな事になったのやらと心配シタンダヨ。」


「マァァ、乙女が穴だらけになって大変ダワァ!」


「オルクスにヤリによってかぁ?」


「「ギャハハハ誰がうまいこと言えといった!」」


 絡んでくるのは数人なのだが他の連中も似たような者で同じように下卑た顔をしていた。


「お気遣い痛み入るが、ここにおられるトキイ殿のおかげでダンジョンでは大きな怪我無く無事に帰還できた。」


 ブリストルさんがそう言うと絡んできた連中の一人が顔を斜めにしながらわしの方を睨みつけた。胴丸鎧を着けているところを見ると一応、探検者なのだろうが何処かのチンピラにしか見えない。


「ああん?こんなおっさんに助けられただぁ?オルクスを倒したってのか?」


「その通りだ。トキイ殿は槍の達人だぞ。オルクス共は瞬く暇もないぐらいの時間で討伐された。」


「へぇ。こんなおっさんがねぇ。でもまぁヤリの達人てことはオルクスの代わりにおっさんに穴を開けられたってことカァ?」


「な!何を失礼なことを言っている!トキイ殿はそなた達のような下品な輩ではない!」


「何だと!このクソアマ!」


 なぜだかあっという間に険悪な雰囲気になる。この列車にいた普通の乗客はそそくさと別の車両に移っていった。

 そんな険悪な雰囲気の中連中のリーダー格らしい男が出てきて周りをたしなめる。


「まぁまぁ、お前たちも落ち着け。すみませんね。うちの連中はケンカ早くて……。俺はこの連中、赤脛巾団を束ねている”合田烈堂”と言う者だ。ダンジョンで出会う事もあるだろうからよろしく頼む。」


 そう言って合田はスーッと手を出す。表情はにこやかに微笑んでいるように見えるが目が笑っていない。さてどうしたものか?


「時井殿、今後のこともあるので挨拶はしたほうがいいでしょう。できればしっかりと力を込めて・・・・・。」


 握手を躊躇するワシに松雪さんは助言をくれた。なるほど、今後のことを考えると握手、それも強くしっかりとしたほうがいいのか。


 わしは合田の手を取りしっかりと握り返した。


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