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ダンジョン脱出と特典

 戦闘が終わって気が付けば部屋での生存者はわしと女騎士の二人だけになっていた。

 女騎士は鎧で全体は判らないが手足が長くスタイルの良いみたいだ。彼女の兜の隙間から金色の髪が見え、切れ長の目にすっと通った鼻筋の言わば超美人な女騎士がそこにいた。

 その女騎士は青い瞳でこちらを見て驚愕の表情を浮かべていた。


「あ、危ないところのありがとうございます。私はコーデリア・ブリストル、皇国騎士団所属、第三騎士団副隊長を務めるものです。騎士団撤退の殿を私が務めていていたがオルクスに割り込まれて地上へ逃げることが出来なくなっていたのです。何とかここまで逃げてきたのですが追いつかれてしまって……」


「お気になさらずに。私は転移で飛ばされて偶然通りかかっただけの者です。あ、申し遅れました。私は“時井山之助兵衛”」


 女騎士は皇国騎士団所属と言った。探索者の中にはギルド名に“○○騎士団“と付けている人たちがいるのは知っている。よもやダンジョンで出会うとは思ってもみなかった。

 それに外国籍の人か……名前から判断すると英国イギリス米国アメリカか?


「転移ですか……トキイ殿の様な腕前ならこのような場所で一人なのも納得してしまう。さぞ修練を積み上げたことなのでしょう……」


 気のせいかブリストルさんの目に羨望の様なものが浮かんでいるように思えた。

 わしの事を全身タイツのスーパーな人だとか思っているのだろうか?それとも侍マスターの様な超人と思っているのだろうか?だとしたらハッキリと訂正しなくては。


「いえいえ、このような場所と言ってもそう深い階ではないので一人でもなんとかなります」


「なるほど。それであの強さですか。だから一人でも迷宮へ入ることが出来るのですね……」


「私の強さなんてまだまだなのですけどね。先ほどの攻撃もブリストルさんがある程度ダメージを負わせていたからうまく倒せたと思いますよ」


「またそんな謙遜を……あっ、そうだ。先ほどトキイ殿が倒された“オルクス”共の魔石を回収しないと迷宮ではすぐに消えてしまう」


 わしはブリストルさんの言葉に思わず膝を打った。オークの魔石の事はすっかり忘れていたからだ。

 わしが倒したオークの方へ目を向けるとオークの体は塵と消え、魔石の他にはドロップ品と言われる品物、腕輪と短剣ダガーを残していた。

 ダンジョンの魔物は倒すとすぐに塵となるが、魔石やドロップ品はしばらくその場に存在しているが一時間もしないうちに消える。

 これらの現象はダンジョンがそれらの物を吸収していると推測されていた。


「魔石の他に……。でも魔石は思ったより大きいな」


「そうですね。通常のオルクスより一回りは大きいですね。輝きも違います」


 魔石の輝きが大きいと含有する魔力が大きいとされている。これだけの大きさでこの輝きの場合はどのぐらいの魔力になるのか想像がつかない。


「腕輪と短剣ダガーも何かしらの力がある様ですね。トキイ殿は鑑定スキルを?」


 ブリストルさんは魔力を感じることが出来るようだ。


「残念ながら持っていないのですよ。これらはあとで鑑定してもいましょう」


 ちょっと残念そうに言うが、わしの心は踊っていた。

 魔法の武器や防具はダンジョンで極稀に発見される品物だ。その価値は物によって大きく変わるがわしの年収・・を大幅に上回っているのは間違いない。

 それに腕輪と短剣ダガーなら今後探索者を続ける上でも役に立つだろう。

 魔法の物品の中には呪いの品マイナスアイテムと言うものも存在するが魔法陣を書き換えることで効果を反転させることが出来る。

 今まで見つかった呪いの品マイナスアイテムで反転させて一番効果の高かったのは死の指輪リングオブデスと言う毎分一定のダメージを与える指輪だ。

 この指輪は魔法陣を書き換えることで効果を反転させ命の指輪リングオブライフに生まれ変わったのだ。(余談だがこの指輪は二十五億円で取引された。)


「それなら仕方がありませんね」


 わしは魔法の品物にうっかり触らない様に袋に収めてゆく。


「あ、そうだ!肝心なことを忘れていた。魔石やこれらの品物の売却の取り分は五分五分でいいですか?」


 お金に関することははっきりと決めておかないと後々問題になることが多い。五分五分ならまず問題はないだろう。


「何を言う!トキイ殿!私はトキイ殿に命を救われた身。言わばトキイ殿は私にとって命の恩人。その恩人から売却の取り分なんてとんでもない!」


 ブリストルさんは声を上げて辞退した。

 恩人とも言われるが偶然うまくいってわし一人で倒せただけで、ブリストルさんにも頑張ってもらう予定だったのだが……。わしは断られて少し考えた。


「……そうだ!ブリストルさん、わしを出口まで案内してくれませんか?どうも転移で飛ばされたので出口の方向が判らないのですよ。で、その案内料と言うのが先ほどの取り分と言うことで?」


「出口までは問題ありませんが、それで取り分が五分五分なのは私が貰いすぎだ。どんなに多くても一分(1%)ですよ」


「一分(1%)ですか……仕方ありませんね」


 ブリストルさんを見ていると一分(1%)以上はどうも受け取ってもらいそうにない。後々何かの形で返すしか無い様だ。


「では、魔石を回収したことですし、脱出の巻物スクロールですぐにでも脱出しましょう」


 そう言うとブリストルさんは鎧の間から一枚羊皮紙を取り出し広げた。


命令コマンド脱出エスケープ!」


 ブリストルさんが脱出エスケープと唱えると足元に魔法陣が広がった。


「え?巻物?いや、そこまでしなくても……それほど深くないのだし」


「ふふふふふ。トキイ殿にとって地下五十階程度は浅いのでしょうが私どもにとっては一苦労なので……」


「へ?五十階?」


 わしがそう聞き返した瞬間、わしの体は地上に転移し目の前にはいつもの日本橋の街並みが広がっていた。

 その瞬間、わしの頭の中に声が響き少し動揺して立ち止まる。


<人類初の異世界来訪を確認しました。異世界来訪特典1STとして以下の特典を与えます。>


<能力値の上昇:現在の能力値を元に倍加させます。……終了しました。>


<スキルの付与:スキルを3つ付与します。任意のスキルを選びましょう。これは後でも選ぶことが出来ます>


<アイテムの付与:特典アイテム1STを与えます。……アイテムボックスが確認できません。スキルポイントを使用しユニークスキル:アイテムボックスEXを付与します。……付与しました。続いてボックス内にアイテムを与えます。……終了しました。>


 異世界来訪?特典?いったい何のことだ?ここは元いた世界ではないのか?


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