第9話(ルート1)
あの話を耳にしてから二日後、捕まったという人間のことが気になった私は監守の隙をついて地下牢を抜け出した。
場所が場所なだけに、元々がそんなにヒト通りの少ない場所だ。
一応私を見張る為にと付けられた監守も、交代の合間合間に居ない時間があったり寝ていたり……とかく不真面目な者らばかりだったから抜け出すのは簡単であった。
「別に小者程度ならば私一人でも対処はできるし、魔王にさえ見付からなければ抜け出すのは簡単なのよね~。でも別にそれは願望を叶えたい為にここに居る私にとっては必要性が無かったし……なによりも魔王のことが。とりあえずは魔王の自室とやらを探してみましょ。」
来た時は転移魔法でだったし地下牢までもそんなに歩いていない――だからそんなに広いとは思っていなかったが………。
「ハァ……ハァ……。思ったより、けっこう、広いわね……。私の住んでいたお城と同じぐらいかしら? いや、それよりも少し広い――かな?」
攫われた時から着の身着のままだけど、あれが重苦しいドレスを着ていた時じゃなくてシンプルな服装の軽装の時で良かったと心底思った。
まるでスパイの様にして物陰に隠れながら抜き足差し足忍び足で且つ素早く移動し続けなければならず、精神的にも少し疲れてきた。
「ちょっと休憩、ね……。ここなら見付からないでしょ―――。」
私は物置とも思えるような雑多に家具やら物が積みあがった小部屋を、良いタイミングで見付けたので休む為にその中へと入った。
「ふ~ぅ……。足が少し痛いわねぇ。普段はこんなことないんだけど……地下牢に閉じ込められたまま動けなかった所為で浮腫んじゃったのかしら? イタタタタタタタッ――。」
私はドアを開けてもすぐには見つからない場所まで行くと部屋の端にある小さな椅子へ座り、靴を脱いでヒリヒリと痛む足首を擦った。
「やだ、赤いっ! それに匂いも……流石にじっとりと汗をかいて気になるし………抜け出てる間に水場を見つけて少し水浴びでもしようかしら。あと着替えも――ー。」
こうなると勇者様に助けられた時に私を見て嫌な思いをされたらどうしようかと、今の自分の状態が気になってきた。
「あぁ~……お風呂が恋しいわね―――。」
私はコテンと壁に頭を預け、体の力を抜いてもたれ掛かった。
「あっ……あっ……なに、を………。ひぃやっ、やっ………止め………フッ……ウグッ……ググググググ―――。」
隣の部屋からは何やら怪しい声――ーもっと言うと、嬌声のようなものと甘い囁きの混じったものが木霊していた。
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