第8話
「あ~ぁ……。ここまでまともなご飯が出てこないなんて、思ってもみなかったわ~。」
ほぼ味の無いスープを数口だけ飲み、私は深い溜め息を吐いた。
パンは問答無用で食べれる気がしなかったし、スープに至っては……一口二口飲んだだけでギブアップした。
殆ど味の無いただのお湯の様なスープを口にする事が、こんなにも苦行だとは思いもよらなかったわ……。
こうして私は何もない牢屋で食事らしい食事もとれないまま数日を過ごしていた。
「あぁ~、暇。暇だわ~。そしてお腹が空いた………。」
結局、何か本ぐらいでも持ってきてもらおうと思っていたが、ここには私の読める本は一冊も置いていなかった。
目に付くヒト付くヒト全員に声を掛けたが、敵対心から私に向かって暴言を吐くヤツやら、初日に出会ったヴァンパイアみたいに私を食料として見做しているんじゃないかと思われるヤツやら、魔王様の素晴らしさを説いてコンコンと説教しだすヤツから……そんなのばっかりで、まともに話しができたのは一人だけだった。
とはいえ、私の食べれる食料も本もどちらも手に入れることは叶わなかったのであった。
「人間とは生活も食べる物も違うとはいえ、流石にもう少し何かあると思ったんだけどな~ぁ。このままだと勇者様が助けに来る前に私、餓死してしまいそうだわ~。」
もう限界だと言わんばかりに、私のお腹はグゥグゥと叫んでいた。
「もうここから抜け出して自分で食べ物を探しに行こうかしら……。」
と、その時―――!
「オイッ、知ってるか? 昨日、あの姫を助けにか人間の男がやってきたみたいだが……どうやら門番に捕まったそうだぞ。ケケッ! 人間ってもんは弱っちぃな。」
「オォ! それなら魔王様の自室に連れて行かれるのを見たぞ。」
「んっ? どういうことだ? 門番に捕まったなら追い出されたか、殺されでもしてるのだろうと思っていたが……。」
その声の主たちの姿は見えないが、私を助けに来たと思しき誰かが魔王城まで来たという話をする声が小さく聞こえたのだった。
でも、捕まって魔王様の所に連れて行かれたということは……勇者様ではないわね。
「私の待ち焦がれる『勇者様』は、もっと強い方のはずですものねっ。」
そうは言っても聞こえてきた話の続きが気になり、耳をそばだててみた。
「それが血や魔力を食料とするヤツらの為に最初は食料にするはずだったらしいが……地下牢に連れて行くすがらチラっとその人間を見たあの魔王様が何故か気に入っちまってなぁ。ならばと献上することになったんだと。」
「ほ~ぉ。」
「あの人間も今頃は………ケケケッ!」
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