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第7話

 まだ頭がボーっとする―――。


「ごめんね~ぇ。ウッカリとあなたに魅了スキルを使ってしまったみたいだわ~。もう解いたから大丈夫よ~。ウフフッ。」


 アルジャンはそう言ってニヤリと笑い、舌舐めずりをした。

 一瞬気を失った様な感じになったし……首がなんだか痛痒い。

 今、意識が飛んでいた間に私、この人に何かされ―――た?

 いや、ハッキリとその瞬間を見たわけでは……。


「じゃっ! 今日はこの辺で帰るけ・どっ……。ご飯、冷めない内に食べてね~ん。」


 自分の身に何が起こったのだろうかと片頬に手の平を添えて俯き考えあぐねていると、目先数センチの所までズイッとアルジャンが顔を近付けて来ていた。 


「あぁ――。うん―――。」


 さっきまでそれなりの距離にまで離れた位置にあったはずの顔が、視界に突如として飛び込んできたことに驚き、何に対してなのか話も分からぬままに返事を返してしまった。

 しかしそんな私にもお構いなしにアルジャンは手を顔の横でヒラヒラとさせ、「じゃあねぇ~ん。」と牢屋から出ていった。

 暗がりの中で見えたその後ろ姿は足取りも軽く、暫くすると鼻歌まで聞こえてきたのだった。


「いやいやいやっ! これ、絶対に何かされたの確定だわ。」


 身を守る為にと幼き頃よりあらゆる護身術を親より習わされていた私でも、特殊な魔物のみが持つとされる『魅了スキル』なんて特殊なものには抵抗ができないらしい。


「危険だわ――。でも、もし私がそれを使えたら………いえ、やっぱりズルはダメね。勇者様には私の実力で好きになってほしいもの。」


 フッと浮かんだ誘惑とも思える考えを振り払う様にして首を左右に振った。


「さ~て、と……今日の夕ご飯は何かしらね~。」


 一先ずは夕ご飯を食べようと、部屋の隅にある夕ご飯が置かれた机のある方へと私はクルリと向いて椅子に座った。


「―――なに? これ………。」


 そこにあったのはなんと、縁が数か所欠けたボロボロの状態の陶器の器に入ったクズ野菜がちょっぴり入った色味の薄いスープに、お盆の上に直に置かれた何日前に焼いたのだろうかと思えるほどにカチカチになったパン―――それだけであった。


「これは……食べれる物なのかしら?」


 私はとりあえずパンを一口サイズに千切ろうと指に力を入れてみた。


「フンッ―――ンギギギギギギ!」


 カチカチのパンはどんなに力を入れてもビクともせず、完全無敵といった状態で無傷であった。

 じゃあせめてスープをと思うが―――。


「うっっすっ!」


 ―――これじゃあ何も食べられないじゃないのよーー!!

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