決意
ジルトは、四年前のあの光景を思い出す。あの、華々しくも不穏な光景を。
たしかに王都は悲劇から立ち直った。だが、それゆえに、新たな暗雲が生まれつつある。
劇場の外に出れば、もうすっかり昼ごはんの時間だった。
伸びをしながら、言う。
「あー、絶対終わってるよなこれ、なあ、まじで式典出ないで大丈夫だったのかリーちゃん」
わりと小心者のジルトは、ちらっちらっとリルウを見るが、リルウは泰然自若としていた。
いや、少し違うかもしれない。数時間といえども過ごしたジルトには、フードの下の瞳に諦めの色が浮かんでいるのが見えた。実際、声は低く、あまりにも落ち着きすぎていた。
「私が出たところで何になるんです? 公爵のお飾り、今となってはこわーい魔女の生まれ変わりが出てきても、民衆は喜びません。喜ぶのは頭おかしい魔女信者だけです」
「そう、その魔女信者」
……たぶん、泥沼だ。ジルトは、膝下までどっぷりと、汚泥に浸かる幻覚をみたような気がした。
だが、たった数時間過ごしただけの少女に、ジルトは面倒くささ以外の感情を覚えたのである。どうにかしてやりたいと。
だから、ジルトは“その話”を続けた。
「たぶん、リーちゃんが追われてた原因はそれだろ? 薔薇の魔女ローズを信奉する団体」
リルウは目を見開く。
「よく知ってますね。彼らは地下組織のはずですが」
「まあな」
ジルトの脳裏には、赤い髪をした少女が浮かんでいた。
『余計なことには首突っ込むなよ』
その少女に、学園に入学する時に口を酸っぱくして、そう言われた。
ーー大丈夫だ、ちょっと仲良くなった普通の少女を救うだけ。
少女がそばにいたら、ジルトはそう答えただろう。
まあ救うなんて大仰だけど。
それに、これは一つの機会でもある。
仄暗い感情が、少しだけもたげてきたのを、ジルトは似合わない笑みを浮かべることで打ち消した。
「とりあえず、ロリコン公爵に会わせてくれないか?」
一方。
ジルトが泥沼に足を踏み入れたのと、同じ頃。
金髪をポニーテールにした少女は、結局主賓が不在というカオスで終わった式典会場で、別のことで拳を握りしめていた。
ーーあのバカ、明日シメる。
ようやく出せた、メインヒロイン




